★作品発表★ 著者:音禰
*************************
新卒で入社して研修を受け、配属の発表を受けたのはつい昨日のこと。
ユタカの職場はここ、社長室。社長秘書室に所属することになったのだ。
「……失礼します」
緊張しながら社長室のドアを開ける。若くして世界でも有数の大きなグループを一手に引き受ける、辣腕で有名な社長が、そこにいた。
「本日より秘書室に配属されましたイケグチと申します。サワダ社長、よろしくお願い致します」
ユタカはやっとのことでそう言って、深く頭を下げた。そして研修で教えられた通り、数秒待って顔を上げる。
社長と目が合った。意志の強そうな目に射抜かれ、緊張と昂揚に身体が強張る。
「……イケグチくんか。こちらへ来て」
「はい」
震える足で社長のデスクの傍まで歩み寄ると、社長も立ち上がった。すらりとした長身に圧倒されていると、社長はデスクに腰掛け、ユタカと視線を絡めた。
「うちの秘書には、やってもらわなければならない大事な仕事がある。今からそれを教えよう」
「……はい」
呑まれるように頷くと、社長の手がユタカの胸元に伸びてきた。
「それにしても、身だしなみには気を配るよう言われなかったのか? 私の秘書なのだから、もう少しきちんとしたものを身に着けなさい」
社長はユタカのネクタイを器用に外すと、忌々しげにゴミ箱へと投げ捨てた。
持っている中で一番高価なネクタイ。ユタカは呆然と見送るしかなかった。
「さて、イケグチくん。早速だが、通常の秘書業務と平行して、君にしてもらいたい仕事がある。とても大切な任務だ。まずはこれを見てほしい」
そう言って、社長はデスク上のノートパソコンをこちらに向けた。
画面上には社長のものと思しき今月のスケジュールが表示されている。見た感じ、ほぼ隙間なく予定で埋め尽くされているようだ。
「どうだ、凄いだろ? これじゃあ息つく暇もありゃしない」
凄いなんてもんじゃない。いくつものグループを支配するワンマンぶりが有名だとは言え、まさかここまで多忙だとは。ユタカは戦慄した。
ぱっと見ただけでも、会議打ち合わせ出張会食会合云々云々……嗚呼、目が回りそうだ。
「正直、食事はおろか、下手すりゃトイレに行く時間さえも厳しい」
「そんな……」
ユタカは唖然として社長を見る。すると社長は困ったような表情で肩をすくめた。
「まあ、幸いなことに私は独身だからな。身体を壊さない程度にスケジューリングしてあれば、仕事人間の私としては特に文句は無いんだ。……だた、問題が一つある」
「問題、ですか」
「うん」
ふいに社長はユタカの片手を取ると、さりげないしぐさで、自身の股間へと導いた。
「あ……」
二人の視線がぶつかる。社長はぎらぎらとした目でユタカを見つめた。
「あいにく、私もまだそれほど年寄りじゃあないんでね。それなりに性欲もあるというわけだ。だが、そこで問題が一つ。 ……処理する時間がなかなか取れず、困っている」
そこでようやくユタカはある一つの考えに到達した。
――――まさか、まさか自分に託された大事な仕事というのは――――
ユタカは顔を赤らめて、拒否の意思を示すように首を振る。
「い、いけません、社長……!」
必死に抵抗してみせるが、しかし社長は想像以上に力が強く、手を離すことができない。
性欲を処理する時間すら取れないという社長の言葉は真実なのだろう、ユタカの手に数回こすりつけただけで、社長の中心部がはち切れそうに膨らんでいた。
「こんな事、君にしか頼めない。分かるだろう、イケグチくん……」
「!」
そこで急に、最終面接で社長から発せられた一つの質問が、ユタカの脳裏に浮かんだ。
『君は全寮制の男子校へ通っていたそうだが、こういう異性不在の環境で、いわゆる性処理的なモノはどうしていたのかね?』
あの時は単なる世間話か時間潰しの与太話だろうと思い、ウケ狙い半分で『それはまあ、各自で……時には互いに処理し合ったりも。あの頃は性欲も探究心も旺盛だったもので』と切り返してみたのだが、まさか、あの質問は本気だったのか。
ふと社長の顔に視線を向けると、頬に赤みが差し、微かに恥じらいの色が浮かんでいた。
「社長……」
突如、自分の中に湧き上がる嗜虐的な感情を、ユタカは自覚した。
ユタカは少し指先に力を込め、つう、と、くびれに沿ってさすってみる。
するとその動きに敏感に察知し、社長はびくんと跳ねた。
「……は……ぁっ」
その、あまりに純な反応に、ユタカは思わず目を瞠る。
ごくり。
ひとつ唾を飲み込むと、すばやく社長のベルトに手を掛けた。
「あ……」
驚く社長をよそに、ユタカは急いで爆発寸前の中心を開放してやる。するとソレは待ってましたとばかりに勢いよく外へ顔を出した。
ユタカは焦らず、ゆっくりと自分の手先に力を込め、硬くなった社長の中心を優しく上下に擦る。
たったそれだけの愛撫で、社長は身体を逸らせ、かわいらしいほど素直にびくびくと反応を見せた。
「く……、ふ、ぅん……っ!」
よほど溜まっていたのだろう。社長はすぐさま達してしまった。
苦しげに肩で息をし、そして、ユタカの身体へと視線を巡らせる。
「はあ、はあ、はあ、あ……す、すまない、服を汚してしまった」
社長の放った液体は、無残にもユタカのスーツいっぱいに飛び散っていた。
ネクタイと同様、手持ちの中で一番高いスーツ。
だが、ユタカはにっこりと微笑んだ。
「問題ありません、社長」
そう言って上着を脱ぐと、ユタカはそれを丸めてゴミ箱へと投げ入れた。
そして指についた社長の名残りをぺろりと舐め、また軽やかに笑う。
「ネクタイと同じく、あれも安物です。今後、社長秘書としてふさわしい服装にいたしますので、どうぞお気になさらず」
「……」
社長は放心した表情でデスクに腰掛けたまま、不敵に笑うユタカを見た。
そして、瞬時に社長の顔に戻ると、にやりと笑った。
「……気に入ったよ、イケグチくん。君とはうまくやっていけそうだ」
「今後ともよろしくお願いいたします、社長……」
*************************
そう言って、ユタカはゆっくりと社長の股間へと顔を近づけていった。
おわり