2011年10月にリリースのデビュー小説『指先にジェラシー』が、ちるちるでも好評! 中には「え、これがデビュー作!?」と、新人離れした作品の内容に、驚きのレビューも寄せられました。今後の活躍が期待される一ノ瀬智(いちのせ とも)先生、要チェックです!
Q. 一ノ瀬先生のデビュー小説『指先にジェラシー』、ちるちるでは発売数日後からズラズラッと高評価やレビューが寄せられました。中には「あれ? 一ノ瀬先生って新人さんなんだ」のように驚くユーザーもちらほら。作品の充実度が新人離れしていたことがうかがえます。商業デビューされてみて、いかがでしょう?
A:レビューや評価をいただけたことを嬉しく思います。ありがとうございます。実はオリジナル作品を書いたことが一度もなかったので、デビュー作を書くにあたり、始めはいろいろと悩みました。ストーリー展開、キャラクター作り、自分の文章レベル……。
担当様から「意識をせずにいつも通りに」とアドバイスをいただきましたが、「そもそもいつも通りの私ってなに?」なんてぐるぐる考え始めてしまって。
ですが、書き進めていくうちに、自分の生み出したキャラクターに愛情を感じるようになり、それからはストーリーにも入り込んで夢中で書けたので、いつの間にか不安は無くなっていました。いつもと変わらずに楽しんで書けたのが良かったのかなと思ってます。
Q. デビューのきっかけや経緯など、デビューに関する印象的なエピソードを聞かせてください。
A:BL小説好きの友人から「オリジナルを書いてみては?」と勧められ、書いてみたいネタもあったので(『指先にジェラシー』ではなかったのですが)、チャレンジしてみようかと考え始めた矢先に、私の二次創作同人誌を読んでくださった担当様から声をかけていただいたのが始まりです。
自分がオリジナルを書いてみたいと考え始めた時期と、スカウトをしていただけた時がぴったりと重なったので「これは運命に違いない!」と張り切りました。
Q. デビュー作『指先にジェラシー』で私が印象的だったのが、会話のテンポです。攻であるイケメンの碓氷がズケズケ言うタイプで、受である美形エリートの桐谷が冷静なので、漫才のように二人のキャラ分けができていてうまくやりとりが進むというか、漫画的というか、読んでいて、二人が会話している絵が頭に浮かんできました。こういった感想、いかがでしょうか?
A:とても嬉しいです! ありがとうございます。漫画やテレビドラマが好きなこともあって、小説を書き始めた当初から『漫画を読んだような読後感』『ドラマを見たような感覚』『光景が浮かぶような小説』を目指してきました。そう感じていただけたのは私にとってこれ以上ないほど嬉しいお言葉です。
ドラマや漫画を見ていて、登場人物の表情一つに思わず笑ってしまったり、涙したり、胸が締め付けられたりすることってありませんか。そういう視覚から受けるトキメキを、文字でも表現できたらと思っています。
Q. 碓氷の心情表現も印象的でした。たとえば「あんたとはもうダメだ」みたいなセリフのあとすぐに、ダメなわけないじゃないか、と本音をひとりツッコミしたり、「好きです」のあとに、すごく好きです、とさらに心情が重ねられていたり。こういった手法の狙いを教えていただけますか?
A:狙いというよりは、勢いかもしれません(笑)。私の文章の癖で、実は自分で気に入ってもいます。キャラに入り込んで盛り上がった気持ちで書いた時にそうなるみたいですが、ほぼ無意識です。
推敲している時に我に返って消したくなることもあるんですが、恥ずかしいくらいがいいんだ!と自分に言い聞かせてそのままに(笑)。心情の部分はとくに『考えるより感じろ!』で書いています。
Q. あと、脇役のキャラ設定が細かかったり、桐谷が碓氷の住所を知る種明かしや、碓氷の両親がお出かけをするときの書き置きなど、散りばめられたネタが楽しかったです。すぐにでも漫画化できそうだと感じました。同人活動では小説のほか、漫画原作もされているということで、そういった経験が活きているのかな? と思いましたがいかがでしょう?
A:「漫画と小説では作風が違うね」とよく言われるので、自分では漫画脳と小説脳は別にあるんだと思っていました。漫画の場合、ストーリーの大筋とはあまり関係のない小ネタやキャラの台詞が、展開上で意外なエッセンスになったり、キャラの性格の特徴が出たりして面白かったりするんですよね。それが活かされたのかもしれません。
Q. あとがきに、文字数の制限を大幅にオーバーして「430ページも書いてしまいました」とありましたが、泣く泣く削られたネタもあったんでしょうか?
A:ありました! 初めてのエッチの後に、オフィスでのラブシーンがありました。オフィスでこっそりいちゃいちゃするのがリーマンラブの醍醐味!なのと、自分でも可愛く書けたと思っていたので気に入っていました。
担当様とも最後まで消さない方向で進めていたのですが、ページ制限により泣く泣く。それでも小ネタやお楽しみシーンはなるべく消さないように意識しました。BLは萌えてナンボだと思うので!
Q. 受攻の二人が同じ会社で働いているということで、社内の組織に関する事柄や仕事の進め方についてなど、作中にはサラリーマンの生活描写が見られますね。先生にも会社員経験がおありとか? であればどんなオフィスライフを楽しんでらっしゃいましたか? 特に無い場合は、サラリーマンの萌えポイントなど聞かせてください。
A:肩書きにとても萌えるんですが、私が勤めてる会社では肩書きでは呼ばないので物足りないです。社内のイケメンに「○○部長」と呼ばせたい! 呼べないからこそ、萌えているのかもしれません。
日本語での会議中に白熱しすぎたドイツ人部下が、日本人上司に母国語(ドイツ語)で食って掛かった時はめちゃくちゃ滾りましたね。互いに違う言語を発しあっているので、はたから見ると会話が噛み合っていないようなんですが、本人たちはちゃんと理解して議論してるんですよ。
私は仕事そっちのけで「萌える……」と色々妄想しました。私の中ではドイツ人部下が攻めでした、金髪のハンサムで(笑)。
Q. 先生は現役でオフィスライフを楽しんでらっしゃるんですか! 実は作品がまだデビュー作のみなので、なんとなく別の仕事をお持ちなのかな、とは思っていたんですが。オフィスでの仕事と、作家を掛け持ちする苦労、逆に楽しさなどありましたら、聞かせてください。
A.楽しさは、男性が多いので毎日がリーマンカタログなことでしょうか(笑)。すべてがネタになりますね。頭にくるような理不尽なできごとがあっても、あとで「ネタにしてやる!」と思うと冷静になれたりします。
苦労の方は……これは苦労というより自業自得なんですが、いつも眠いです。睡眠不足でどうにも眠かったので具合悪いふりをして、会社のベッドルームで昼寝したことがあります。何のために会社に来たんだって話なんですけどね。
その時に初めて自分が勤めてる会社にベッドルームがあることを知りました。あ、もちろん急病人用のベッドですよ! これが結構ホテルみたいに綺麗で、個室で鍵も掛かるし、清潔で(シーツも枕カバーもクリーニング済みを貰えるので)「このネタ、使える……!」と思いました。こんな風に、全部ネタに変換されてます(笑)。
Q. お好きな作品や作家さんなどを教えていただけますでしょうか。理由や思い入れなどもお願いします。小説でなくてもけっこうです。
A:世間での話題作を手に取るくらいです。好きなのはミステリーとサスペンスです。海外ドラマが大好きで、タイトルを挙げたらきりがないくらい好きな作品が多いのですが、特に『トゥルーコーリング』『デスパレートな妻たち』は何度も見返しています。
ストーリーの運び方やキャラクターの魅力、会話の流れとお洒落感、わくわくドキドキ感……どこをとっても素晴らしい!
国内作品では山崎豊子さん原作のドラマ『不毛地帯』は何度も見ます。軍部ものかつサラリーマン。働く男はかっこいい! 信念があれば尚更! 不純な目で見てることも(笑)。
Q. BLでは、どんなカップリングやシチュエーションがお好きですか?
A:可愛い子ちゃん攻め、美人攻めが大好物です。今まで好きになったタイプを思い返すと、属性やシチュエーションはわりと何でもOKで、キャラクター性に萌えるようです。受けでも攻めでも完璧なキャラより、欠点ありまくりの不器用なキャラや影のあるキャラに惹かれます。
Q. 今後、チャレンジしてみたい作風や分野、野望などありますか?
A:まだ一作目でスタートラインに立ったばかりなので、何をするにもチャレンジという状態なんですが、一年で三冊くらい本を出せるようにコンスタントに書いていけたらいいなと思っています。
愛し合って擦れ違って憎み合ってまた惹かれて……みたいな泥沼大恋愛が好きなので、そういう作品もいつか書いてみたいですね。
Q. 最後に、ちるちるユーザーのみなさんにメッセージをお願いします。
A:はじめまして、一ノ瀬智(いちのせ とも)と申します。『指先にジェラシー』を読んでくださった方、評価をしてくださった方、レビューを書いてくださった方、皆様どうもありがとうございます。
この本を気に留めてくださった皆様のお陰で、この場に呼んでいただけることになり、有り難く思っております。これをきっかけに知ってくださった方にも、是非読んでいただけたら嬉しく思います。
次回作はデビュー作とは雰囲気の違ったものになりますが、楽しんでいただける作品になるように頑張っていますので、どうぞよろしくお願いします!