amazonの電子書籍版です
『花嫁のカヤ』はAmazonで、『傭兵の男が女神と呼ばれる世界』はちるちるランキングで評価が高いけれども、設定が大好物とまでいかなくてなかなか手が出ませんでした。作者の作品を読むのはこれが二冊目なのですが、すっっっごく良かったです…!!!
そういえば最近、小説の新作で親戚とか義理の兄弟ものを読む機会がなかったかな、と。本作の電子書籍刊行は2019年なので、(創作期間は直近とは限らないけれど)最近では思いがけない個人的ヒット作になりました。
ストーリーは伯(叔)父と甥ものの王道。訳があって家族になって、愛され慣れない者同士がお互いに寄り添い、惹かれ合っていくような…。
雨瑠(あまる)はプロ棋士。兄夫婦が火災に遭い、一人息子を遺して亡くなったために高校生の夏樹を引き取るところから物語は始まります。
棋士としての雨瑠の描写が度々出てくるのですが、お仕事的に全然浮いていなくて、むしろ棋士じゃないと雨瑠のキャラが生かされなかっただろうと思えるくらいに自然でした。雨瑠の辛辣で天邪鬼な性格、ギリギリまで追い込まれた人生観、不器用だが芯の通った生き様が棋士キャラにピッタリで。
17才の夏樹は、両親と住む家をいちどきに失う不幸に見舞われたにも関わらず、辛い時こそ泣きそうな笑顔を湛えているような少年です。親戚の中でも雨瑠と暮らすことを選び、世話になる代わりに家事を全て引き受け、高校生活を続けることに。雨瑠は当初、夏樹との同居は煩わしいばかりで、夏樹の気持ちを汲んでやれるような余裕は全くありませんでした。
口元をふにゃりとさせて笑う夏樹は、年齢の割に気丈で大人びています。雨瑠と出会った頃は未だ頼りない幼さが残っていたのに、いつのまにか雨瑠より背が高く、手も大きくなっていることに気づく頃。雨瑠の兄に生き写しの面影が、夏樹自身を深く傷付けることになります。
棋士仲間の花村親娘や雨瑠の対戦相手など、サブキャラクターも人間味があって読了後は読んだ〜!っていう満足感でいっぱい。ラブもエチシーンも萌えたし、相手を思うがゆえの切なさも堪能しました。少しだけ背徳感もあり、かつBLの優しさも感じられる、人生のままならなさがギュッと凝縮された良作です。
<第5回B-PRINCE文庫新人大賞 優秀賞受賞作品>加筆修正版
受賞作だけあって、丁寧な構成の作品でした。
登場人物
本田 雨瑠:兄に恋心を手酷く拒絶され、孤独に生きる棋士
兄:妻の放火により焼死 実は拒絶した 雨瑠を愛していた
夏樹:雨瑠の兄夫婦の遺児。養父の雨瑠に熱烈な恋をする
雨瑠は、兄に告白して、酷く拒絶されたことから、自己否定した生き方しかできない。
兄夫婦が焼死して、ひきとった兄の遺児、夏樹は兄とそっくり。
甥から一途に愛を寄せられて、夏樹の人生を潰してはいけないと、今度は雨瑠が夏樹を拒絶する
兄が雨瑠を拒絶したことのまるで繰り返し。
雨瑠を拒絶した兄
夏樹を拒絶して避ける雨瑠
自分の想いに真っすぐ向き合った雨瑠
因果の輪廻とその解消を土台にした物語でした。
はー…やっぱり、野原耳子先生の年下攻めもの、大好き。。
不憫攻め×不憫受け、そして禁断の甥っ子と叔父(血の繋がりなし)、歳の差18歳(!)の恋。個人的好き要素が詰まってる。切なさに胸が締め付けられる物語でした。
17歳の高校生・夏樹(攻)の口から紡ぎ出される蕩けるように甘い言葉や視線、それとは裏腹に、荒々しく青さ若さを感じさせる抱き方に胸が高鳴って仕方なかった…
過酷な将棋の世界が描かれているのもとても良かった。
「氷の女王」と呼ばれ強がってはいても、その奥歯は負けた時悔しがる度に噛み締められ、削られてすっかり平らになってしまっている…
勝負の世界の厳しさ、その緊張感を文章を通じて追体験することができ、お仕事ものとしても楽しむことができました。
好きになった兄の息子から愛を向けられるという、禁断の愛。その愛に苦しみ、一度は夏樹を突き放す雨瑠(あまる・受)が、本心とは異なる残酷な言葉を敢えて夏樹にぶつけるシーン、胸が痛くて泣きそうになってしまった( ; ; )
大事な局面で雨瑠に届けられた黒焦げの差し入れ、それを「美味しい」と言って頬張る雨瑠の姿にも、なんともいえない思いが込み上げてきて鼻の奥がツンとしました。
誤解とすれ違いを経て想いを確かめ合ってからの、荒々しい2度目のえちもたまらなく官能的で萌えた。。
そして最後の最後の雨瑠のセリフ!!もーーーーこの短い3文字に、意地っ張りな雨瑠の気持ちの全てが詰まってる!!!そしてそれをちゃんと分かって受け止められる夏樹17歳よ!未来のスパダリが見えて泣けました。
耳子先生のファンタジーも本当に面白いけれど、やっぱり現代ものが好きだなあと、あらためて深夜にしみじみ感じた作品でした。