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ぼくは、恋人を壊すことにした。
少し危ない嗜好を持つ高校生と文具店のお兄さんのお話。
親の都合で転校してばかりの掌には、子供の頃から抱え続けている破壊願望がある。物ならばまだしも、人に対して向けられた暗い欲求は、初めて恋した年上の男性だった。
祖父が営む文具店を譲り受けた蛍二郎は、二年前にノンケの恋人と別れた痛手からまだ抜け出せずにいた。転校生の掌が上履きを買いに蛍二郎の店を訪れたのがきっかけで二人は出会う。
初めは面白い子だなぁくらいに思っていた蛍二郎も、十代の純粋さと狂暴な衝動が見え隠れする掌の危うさに惹かれていく自分を止められない。つい最近まで別れた男が忘れられず、夢にまで見ていたのに…
掌と蛍二郎が惹かれ合っていく段階が丁寧に描かれるけれども、表向きは初々しい恋の始まりのようでありながら、掌の厨二病的な儀式が遂行されつつある怖さが潜んでいます。
とにかく、先生の美的センスに惚れているので、時々コマに挟まれる植物や花のカットに見入ったり、人物の表情やヘアスタイル、ファッションに目がいってしまいます♡
でも、一番の魅力はキャラクターのネガティブな感情をしっかりと捉えて、その醜悪さや、みっともなくもがく姿すら美しいものとして描いてくれるところです。そして物語の中にはそんな彼らを必ず掬い上げて受けとめてくれる誰かがいる。
過激な暴力シーンや極端な変態性を描くような作者ではありませんが、人間の潜在的な悪や毒をチラ見せしてくる巧みさがすごく好きです。作画、作風、ストーリー、色彩、美意識、バランス感覚などなど、全てが大好きな作家様。ドラマ性のあるお話がお好みの方におススメです。
一人顔アップ表紙コミックスも今まで数あれど、これはかなりのインパクト。
その上このタイトルに帯。
あらすじの文章もなかなか不穏だし、さぞかし病んだ内容なのではと思いきや、、、、
主人公の高校生の男の子が、恋する気持ちとは何かをしっかりと悩む、とってもピュアな、ハッピーエンドの初恋物語でした。
現実の高校生男子がこんなに物を考えられるかというと、到底あり得なそうで、実は一番やばそうなお母さんのこともいい感じにスルーして、ラストのハッピーさときたら、現実には到底あり得なそうなBLファンタジーではあるのですが、
ストーリー展開の巧みさといい、構図や個々の絵の上手さといい、
すごく、すごく、上質な物語を、しっかり味あわせて頂けて、本当にありがとうございました。としか言えない感じ。
もちろん、神です。
発売前から表紙とあらすじに後ろ髪をに引かれながらも手にできず、電子発売でやっと購入。
初読み作家さんだったので、この作品にハマり既刊作品を拝読する楽しみができました。
もっとドス黒い感じのサイコ感あふれる雰囲気かと思ったら、柔らかいコミカルな作風。
その中で、突発的な破壊衝動を秘めた高校生 掌のサイコ感が見え隠れする…それが余計に恐怖を煽る。
しかも、読み進めるなかで、掌の壊したいレベルが解らない…
精神破壊なのか、人体破壊なのか、どこまでいくのか解らない、実はそれが一番怖いのかもしれない。
掌は決意してから、常に壊すことを考えて行動しており、標的を文房具店の蛍次郎に決めて毎日通う。
ゲイの蛍次郎はノンケに捨てられボロボロになり、祖父の文房具店を継ぎ立ち直れないまま生きている。
壊したい掌と壊されたい蛍次郎…お互い心情など知らぬまま、運命のいたずらで付き合いはじめる二人。
破壊衝動にドキドキしながら読み進めると、まさかの純愛…
壊す為に近づいた掌は、蛍次郎を知るほどに、どんどん蛍次郎に囚われ夢中になっていく。
そんな掌に癒され蛍次郎も葛藤しつつほだされて…。
関係を深めていく、葛藤する二人の心理描写がすばらしい!特に表情変化の描写がスキです。
上質な作品は秀逸な脇キャラが欠かせません。
学校で掌にめげずに絡むワンコのチョーちゃんは、掌が年齢相応の少年の表情をみせるコミカルさ。
気付けば恋愛相談になっているやりとりも面白く、作品のコミカル担当といえる印象的な明るさ。
そして、学校教諭の今日子…
掌から闇感を感じ取っている唯一の人物で、偶然なことに蛍次郎の昔からの親友。
ネックになるのが、掌が破壊衝動を抱える要因となったと思わせる母や家庭環境。
この作品の面白さは、脇キャラがメインの破壊行動に変に絡んでこないところ。
今日子は掌を主体にして現状を把握しつつ、いつでも手助けができるというスタンスを取ります。
そして、未成年である教え子との関係について蛍次郎を戒めますが、それ以上のことはしない。
破壊行動にも間に合わず、直接的には二人の関係に関わってはいない。
掌と蛍次郎の二人だけで始まって終わる見せ方が、二人の世界という感じでイイ!
そして、元カレへの嫉妬と母に振り回される環境がスイッチとなり、掌は蛍次郎を破壊する…
柔らかい作風だったので、あの展開はけっこうな衝撃度でした。
カラダは成長してみえても、未発達な感情と心は子どものまま…見ていて苦しいですが、
掌の吐き出した想いを、酷い事をされたまま受け止める蛍次郎は大人です。
傷付いて壊れて再生できたからこそ、掌の痛みを理解して許せるのかな。
そのまま、あまあまHに流す上手さで、破壊行動の衝撃が薄れる…スゴイの一言です。
結局、壊れたのは自分で、壊れたからといって再生できるわけではない。
蛍次郎から離れて大人になった掌は、振り回された家族から離れても、自分を見つけられないまま。
蛍次郎に会いに自分から踏み出して、やっと再生できた掌の人生でした。
すれ違いの時間が、それぞれの再生に必要だったんですが、破壊以降の描写がもっと見たかったです。
再生描写が物足りない…再生するようすがもっと丁寧に見たかった。
しかも、描き下ろしの蜜が足りないわぁ…ごねてすみません…でも、もっと続きが見たいです><
※シーモア:修正なし。修正不要な描写です。
読後にジェイン・オースティンの「分別と多感」をふと思い出しました
全く相反する訳ではないけれど同軸ではない微妙な感情や歪み
同じような感情でも抱えるその人物の環境(年齢や家庭環境など含めて)如何によって成す意味は同じではない
とても複雑でありながら同時に実はすごく単純だったりする、、、人間の厄介さを至極丁寧に浮き彫りにした作品だと思います
攻めの掌はそれこそ多感なお年頃
その上不安定な母親に振り回されながらも自身の内に抱える「破壊衝動」を持て余している
このキャラを生み出し、描き切った事がこの作品の個性だし他とは確実に一線を画すBLだな、、、ってつくづく思います
受けの蛍さんもまた人間らしいです
痛みも狡さも知り、経験しながらもそれらを自身の糧として受け入れるにはまだ若い、、、それでも掌に比べたら十分な大人の年齢、、、
年齢が人を育てる訳でも経験だけが人の厚みを出す訳でもない
彼等を通して向き合って積み重ねて、そして受け入れていく事の大事さを感じていきます
「今だから分かる事」が増えて来たからこそ冷静に受け止めて読める作品かも知れないな~と思います
揺れ動く気持ちを整理出来ずに弱さと混同してしまったり、どうしようも出来ない環境への苦しさに当面した時期にもし読んでしまっていたら少し鬱屈としてしまったかも知れないな。。。なんて少し思ったりもします
いや?もしかしたら先に希望が見える、という点では読むべき作品となるのかも知れない。。。
印象深い作品です
糸井先生、、、ガッツリBLはもぉお描きにならないのでしょうか…?
また新作が読みたい作家さまです(ღ˘͈︶˘͈ღ)
ハラハラしちゃいました♪
”破壊衝動”のある掌が、それを理性で我慢してきたが
いつか遂行したいと心に思い続けてるのがぞくっとしちゃいましたね。
そして、出会った蛍二郎の人間関係や家の造りなどを冷静に観察してターゲットへと絞ってからは、掌が蛍二郎に会いに行く度ドキドキでした。
自分が「破壊衝動」だと思っていたのが「恋」だったと清々しい顔で言う掌。
自分が「破壊衝動」を「恋」だと勘違いしたと泣きながら言う掌。
もぉたまりませんでした!!!!!