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義兄弟もので刺さるものってあんまりなかったんですが、これは個人的にとても良かったです。
義兄弟なわけですから背徳感をテーマにしてすごく暗かったり、葛藤もなく甘々だったり、ほのぼのだったりかなり極端なものが多いイメージです。
ですが、こちらの作品はそれら全てのバランスが良いなと思いました。
受けは無自覚に攻めへの恋愛的感情があり、躊躇なく全身で好意を伝える攻めを兄弟でこういうことをするのはおかしいと、強くはないですが拒絶します。先輩である飯島からの言葉で攻めのことが好きだと自覚しますが、葛藤しますし、付き合ってからも思い悩みます。
そういう心理的描写が切なく、健全でとても好ましく思いました。少しそういった仄暗さはありつつ、攻めが本当に受け大好きって気持ちを周りの人がわかるくらい惜しみなく前面に出してるので、甘々〜な雰囲気もありキュンキュンしました。
あと魅力的なのは受けの濡れ場の色っぽさ…
どんどん攻めの手によって作り変えられ、快感に正直になるわ、どんどん口も素直になるわ、攻めがそんな受けに参ってしまうのもわかりますし、とても伝わりました。
当て馬の女性の不快感が最後まで拭えませんが、攻め視点のSSで私は吹き飛んでしまいました。
義兄弟もの好きな方におすすめできる作品だと思います。
2019年刊。
といっても、元は2012年に単行本にて刊行された作品の文庫化に当たる。
親同士の再婚で義兄弟となった雪宏(ユキ)と景輝(ケーキ)。
血の繋がらない同い年の兄を好きだという気持ちを隠そうとしないケーキの言動に対してユキは日々慎重だ。
ある日、偶然再会した高校時代の写真部の先輩・飯島との仲を勘ぐられてしまい、独占欲の強いケーキの嫉妬、すれ違いを受け止めたユキは、自身も8年間抑えていた気持ちを告白して一線を越える決心をつけたのだった。
ケーキに惹かれているのを自覚していながらも、"兄弟(家族)なんだから”という枠に納めたいユキの葛藤から心を開くまでの過程をじっくりと読めた。
母親想いなのもあるが、気持ちを打ち明けずに我慢していれば、家族である限り繋がりが消える事がないだろうからね…
いざ覚悟を決めて自身の想いに忠実になり、抱かれる戸惑いが消えてからは睦言が増えたけれど、性に溺れているような淫らさはなかった。
ユキを一番理解しているのは俺でないと嫌だって言うケーキは完全な執着攻めだが、ドロドロしている感は皆無だ。
元から血が繋がっていないって状況と、どちらも一途すぎる想いを抱えていた経緯から、くっついてからの二人には甘々な雰囲気が漂っていた。
ただ、ユキの性格がお人好しすぎて、二人の仲に強引に割り込もうとしてきた呉川って女の子への対応が生ぬるかったのは少し歯痒かった。
彼女のしでかした事は「私って熱狂的なのよね~」って言い訳を盾にして、やってはいけない事を誤魔化している訳だからね。
呉川が当て馬キャラ役に収まった分、気になったのはもう一人の脇役、飯島先輩だ。
カメラや銀塩式フィルムに対する造形の深さや、後輩兄弟の洞察力の鋭さからしてこの人、なかなか奥の深い人だね。
この人のスピンオフがあったら是非読んでみたいけれど、元となるこの話が2012年刊となると望みは薄いかな…残念。
義理の兄弟モノで、みんなの人気者でモテる弟×喘息持ちのおとなしい兄です。
本当にすいません、私は攻の景輝(ケーキ)よりも受の雪宏(ユキ)よりも、当て馬?的な立ち位置の飯島先輩が気に入ってしまいました。飯島先輩はユキの高校時代の写真部の先輩です。そもそも文中の挿絵では、ケーキを差し置いて先に登場しており、その時点でこいつぁータダモンじゃねぇぜ…という雰囲気はバシバシ感じてましたが、なななんと挿絵に登場すること計3回!!メイン以外のキャラが3回も挿絵に登場したのを初めて見ました。すごすぎません!?しかもユキとのキスシーンの挿絵まであるし。
飯島先輩はユキの良き趣味仲間で良き師匠で、しかもユキのこと可愛がってて何なら手出しちゃえるよ?っていうスタンスでいながらも、本当にユキが悲しむことはしないからケーキとの仲を応援してくれるという、なんともこちらにとって都合の良い男。ユキが、ケーキにつきまとう呉川という女の子にひどく傷つけられた後、「兄弟じゃなくてただの男同士なら何も言われなかったのかな、自分はそもそも男が好きなんだろうか」と悩んでいることを知った飯島先輩は、「じゃあ俺と寝てみる?」と泥酔したユキに持ちかけ、ユキがそうですねと答えたので本当にお持ち帰りしてキスするのです。ここの、リトマス代わりになってあげる、的な飯島先輩のセリフ、ずるい〜〜!!!!なんかもう、意思が弱かったら流されちゃいそう。飯島先輩も、本当に食べちゃおうかなというつもりでいるのがわかるのです。ずるい男!!かっこいい。好き。一家に一台、ていうか私に一台、飯島先輩ください。
ここまで飯島先輩の話しかしておらず恐縮ですが、飯島先輩はストーリーの雰囲気を出すのに非常に重要な役割を担っております。ケーキはユキに対して異様なほど執着しているので、中盤までは、ユキと飯島先輩が、大学生になった今でも仲良くしていることにケーキが気付いたら、ユキを監禁陵辱するんじゃないかという、ものすごく不穏な空気が常にあったんです。私はBLには光を求めるタイプですが、本作に関しては途中まで「もういっそめちゃくちゃに崩れて監禁エンドになってくれ!!」と思ってしまうほど、ツンとつついたら一瞬ですべてが壊れてしまうような、それを期待させるような危うさがありました。その脆さ故に、ページをめくる手が止まりませんでした。
中盤でユキが腹を括って両思いになるので、あ、監禁エンドじゃなかった、と安心したようなちょっと残念だったような(笑)。
終盤には呉川の言葉に苦しみ、ケーキとの関係を見つめ直してしまうユキに、ケーキ以外見えていないのに何を悩む必要がある、と説いてくれる飯島先輩。私が助演男優賞あげます!!
だめだ、また飯島先輩の話になってしまった。最後まで一気に読んでしまうくらい先の展開が気になるストーリーで、面白かったです。何より飯島先輩が何をやっちゃってくれるか気になって…。
ベロチューまではかましてくれましたね。ありがとうございました。
ただ呉川の嫌がらせに対する決着は、スカッとはしない終わらせ方でしたね。ケーキの荷物を勝手に漁り、ケータイの中身を勝手に見て画像を自分のケータイに送るって、犯罪じゃないの…?感情的には殴って顔の骨折るくらいはしてほしかったですが、すごく穏当に終わってしまって、もやもや。いや、殴って骨折ったらケーキが犯罪者になっちゃうか…。
もはやケーキとユキがどんなキャラなのかほとんど説明しておりませんが、それくらい私を夢中にさせてくれた飯島先輩に、みなさんもめろめろになってみませんか。
穂波先生の挿絵が好きで、初めての先生でしたが手に取ってみました。2012年の作品300Pほど(文庫化)+WEB雑誌掲載の攻め視点の後日談20P+あとがき。私は兄弟萌えがあまりないので萌どまりでしたが、兄弟ものがお好きな方にはたまらん作品なのではと思いました。
小学校卒業したすぐ後に母の再婚に伴って、苗字が変わり姉と弟が出来た雪宏。喘息もちだったこともあり人見知り傾向大だったのが、太陽のように明るく懐っこい弟のおかげで、いじめられるような事もなく無事二人で同じ大学に通っています。学部は違うし、兄の雪宏よりずっとでっかいのに、弟の景輝(けいき)は「ユキ、ユキ」とびったり一緒にいたがっていて・・・と続きます。
攻め受け以外の登場人物は
飯島(高校の写真部部長、今は写真館の後継ぎ)、大学の友達、ケーキに恋する女子、ぐらいかな。
**攻め受けについて
攻めさんはモテモテイケメンなんだけど、兄ちゃんのことしか見ちゃいない超執着わんこという感じ。馬鹿ではなく変態臭もなく、あくまで爽やか~なんだけど、兄しか視界に入ってないんだろうなというのが傍から見てても明らか(笑)
兄はそんな弟の気持ちに気付いていつつ(思春期に暴走した弟に襲われたのもあって)、苦労した母がようやく掴んだ幸せ(再婚)を壊しちゃなんね!と、弟との事件は無かったことに!と頑張る健気?というか、ことなかれ主義というか?いや20歳ぐらいなんで、こうするしか無かったんだろうなと、思います。はい。
穂波先生の描かれる攻め受けの印象通り、二人で粘り強く頑張り、ふんわり着地点を見つけたという感じのお話でした。兄弟ものの王道!というところでしょうか。
写真部の部長さんがこれまたいいイケメンさんで!この方のスピンオフってあるのかな・・?と今気になってます。探してみよう~
初出が2012年なんですね。
あまり考えずに「久々に菱沢さんのお話でも」と思いポチった電子だったのですが、私にとっては『ちょっとばかり旬の過ぎた』お話だった様に感じました。
リアル社会で、まだまだ偏見は根強いものがあるとは言え『同性パートナーシップ制度』を導入する自治体も生まれ、同時に「ステップファミリーを珍しいもの扱いしてはいけないよね」という空気がある現在に読むと、雪宏の葛藤に共感しづらかったのです、私は。
「そんなもん飛び越えろ!女々しいなぁ(この表現自体がもう既にアウトになっているんですが)」とか「なんだかんだ言って良い親なら理解してくれるはず。大学生の親なら40代でしょ?狼狽えるかもしれないけれどいける、いける」なんて思っちゃって、むしろ雪宏の姿勢を古臭く感じてしまったんです。
でも、実際にリアルな話だったら雪宏みたいに感じるのでしょうねぇ……
ゆっくり考えると、その辺の自分の感覚が間違っている様な気もします。
反省。