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表題作帝王の奴隷と天使

宗近龍一
大企業の御曹司,24歳
細臣竜生
龍一の奴隷,24歳

あらすじ

一度囚われたら逃れられない、執念めいた愛――。一気に読ませる濃厚エロスBL。日本を代表するグループ企業のトップを親に持ち、すべてにおいて完璧な龍一と、十年あまり共に過ごしてきた竜生。周囲からは親友と思われるであろうその関係は、実は龍一から性の奴隷として束縛される、一方的なものだった――。アメリカでMBAを取得したふたりは帰国後、龍一の実家に住むことに。龍一から逃れるチャンスをことごとく潰され、絶望していた竜生が命じられたのは、龍一の愛弟・己龍の家庭教師。天使のような己龍を前に、竜生の中に暗い想いが芽生えて…?

作品情報

作品名
帝王の奴隷と天使
著者
愁堂れな 
イラスト
笠井あゆみ 
媒体
小説
出版社
集英社
レーベル
コバルト文庫【非BL】
電子発売日
3.1

(6)

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萌々

(3)

(2)

中立

(0)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
2
得点
18
評価数
6
平均
3.1 / 5
神率
0%

レビュー投稿数2

不器用すぎる男の恋心に萌え。

電子書籍ってあまり買わないのですが、愁堂さん×笠井さん、という神タッグにつられ購入。

だってこの表紙!
素敵すぎじゃないですか。
もしかして3Pもの?
とかいろいろ妄想しつつ読み始めました。






主人公は竜生。
社長令息の彼は親の勧めで小学校卒業と同時に単身イギリスへと赴く。言葉も満足に話せず不安に押しつぶされそうになっていた彼は、そこで龍一という日本人の同級生に出会う。
日本でもトップの大企業の子息である龍一は、文武両道で、かつ優しく、竜生の良き親友となった。

が、それから11年。
今では竜生は龍一の奴隷だ。
いつでも身体を開くことを強要され、彼の気分次第で酷いことをされることもしばしば。

理由は、金銭的なものによる。
竜生の両親は事業に失敗し、息子を残して自害してしまった。多額の負債を残され日々の生活も困るようになった彼を救ってくれたのは龍一の父・龍蔵。大学院までの授業料、生活費の一切を龍蔵に負担してもらう見返りとして、龍一の奴隷のなるよう告げられたのだ。

今までの良き友人であったはずの龍一の変化についていかれない竜生だったが、金銭の負担をしてもらていることに変わりなく、それゆえ屈辱的な行為に耐えてきた。いつか、復習してやると思いながら。

そして、日本に帰った彼は、龍一の弟・己龍と出会う。
龍一に復讐する材料として、己龍と関係を持つことを決意する竜生だったが―。

というお話。

龍一の竜生に対する態度はまさに外道です。
言葉で嬲り、竜生の気持ちには一切頓着しない。

二人の過去の出来事は竜生の回想という形で少しだけ描写がありますが、基本的に「現在」の2人の描写が多いため、数多くある濡れ場も糖度はゼロ。

一方の竜生は、非常にガッツのある青年。
どんなに貶められても龍一に対して気持ちが折れることがない。
いつか、借りたお金を返して、龍一の元から離れていこう。
その時が来ることだけを心の頼りに踏ん張り続けています。

で、ここまでならよくあるパターンのお話。

この二人に龍一の弟の己龍が加わることで、このお話は他のそれとは一線を画しています。

龍一はイギリスのパブリックスクールに通っていましたが、己龍はドイツのギムナジウムに進学していた、という事で二人の接点はほぼなし。美しいビジュアルに、穏やかで優しい性格の彼を始めてみたとき、「天使のようだ」という感想を竜生は持ちます。

傲慢で、自分の思うがまま行動する龍一。
可愛らしいビジュアルを持ち、温厚で優しく、竜生を一身に慕ってくる己龍。

二人の男に挟まれた竜生は、どちらの男を取るのか―。

と思いきや、ここでも一捻りあります。
まあ、予想の範囲内のストーリー、と言ってしまうと身も蓋もないですが、それでも二転三転するストーリーで面白かった。

龍一と竜生が、かつて良き友人だった時の描写があまりないため、龍一の変化にいまいち戸惑いきれなかったのが残念でした。そこがしっかり書かれていたら、竜生とともに戸惑い、哀しみ、そして復讐心を持つという竜生の心情により一層より添えた気がします。

また、竜生が自分の勘違いに気づくシーンが若干駆け足気味だったような気もしました。そこがこのストーリーのキモの部分じゃないのかい?と思ったりしました。

龍一の弟の己龍。
宗近家の執事・有馬さん。
魅力的な脇キャラも多く、彼らのその後の話も読んでみたいです。

あと一点、めっちゃ残念だったのは、

挿絵がない…!

電子だと挿絵がないんですかね。
笠井さんの美麗イラストが拝めると思ってたので、凄く哀しかった…。

という事で、ぜひとも笠井さんの美麗イラスト入りで、紙媒体で販売してほしいです。

視点は竜生で、龍一の外道っぷりがこれでもかと書かれていますが、この作品は龍一の恋の成就のお話。
竜生の目を通して描かれているのは、受けさんのことが好きすぎて、でも不器用すぎる龍一という男性の姿です。

ほのぼの可愛らしいお話ではありません。
痛い描写も沢山書かれています。
でも、そこから導き出される攻めさんの深い愛情に、萌えツボをがっつり掴まれました。

6

『追い詰められ感』の描写がすごい

このお話、ガッツリネタバレすると怒られちゃうやつだ……愁堂さんらしい、捻りの効いたお話で、どんでん返しが何度か(回数を書くとラストが想像しやすくなっちゃうんで、それは書かずにおきますね)あるので、中盤まではかなり手に汗握って読んじゃいました。
だって、追い詰められた人間の描写がとってもサスペンスフルなんですよ。
で、胸くそ悪いままで終わっちゃうのか、スカッとさせてくれるのかが解らないの。

豊かな家に育った龍一と竜生は英国のパブリックスクールで初めて出会い、友情を育み、勉学もスポーツも競う様にして成長してきたのですけれど、在学中に竜生の両親が亡くなってしまうのです。事業に失敗して心中するという形で。
本来なら留学なんか続けられない状態の竜生を救ったのは、日本を代表する企業の子息である龍一。彼の家の援助を受けて、竜生は龍一と共に米国の大学・大学院でMBAを取得するまで勉学を続け、共に日本に戻って来ました。
でもこれ『麗しい友情』なんかじゃないのです。大学に進んだ途端、龍一は竜生を「奴隷」と呼び、自分の性のはけ口にして来たんです。そんな龍一を竜生は激しく憎み、龍一の側から離れる事だけを考えて生きてきました。
日本に帰って仕事に就き、今まで自分のために使われたお金を返せば、この関係に終止符をうてると考えていた竜生ですが、龍一の父が竜生に用意していたのは『彼の家の執事になること』。絶望した竜生は、ドイツ留学を終え、彼らと同時に帰国した龍一の弟で天使の様に愛らしい己龍が自分へ好意を持っていることを利用して龍一への復讐を果たし、彼らの家からの脱出を図るのですが……

前述しましたが、龍一の仕打ちがなかなか酷い。
この『酷い扱い』のシーンは、正直言ってかなり胸くそ悪かったです(まぁ、それも『読書の楽しみ』ではあるのですけれども)。
だから竜生が『天使の様に愛らしく、純粋な』己龍を利用しようと考えても「このゲス野郎!」という気持ちにはならんわけです。
この辺がね、とてもお上手。
グイグイ読ませます。
後から効いてくるのですよ、この上手さが。

で、全部読み終わりまして「面白かったんだけど、いや……でもさ」と腑に落ちない部分が残りまして。
その部分はガッツリネタバレをしないと書けないので、お許しいただきたいんです(できる限りぼかして書く様に努力しますが)。
「結末が推測できる様な本は読む気が萎える」という方は、ここから先は読まずに回避してください。





要は『不器用男のこじらせ純愛』という結末だったんですけれども、でもさ「真実を話しちゃった方がお互いに幸せだったんじゃない?」と思うのですよ。
最後に匂わせられる『本当にヤバイ真実』の部分は絶対に言っちゃダメだけどね。
何故に『茨の道を選んじゃったのか』がよく解らなかったので、ガーッと盛り上がって来た気持にちょっとだけ水をかけられた様になっちまいました。
いや、幕引きまではとっても面白かったです。
特に竜生の『追い詰められ感』が。
だから余計、残念な感じが……

2

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