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面白かったです。
BLによくいるタイプの、イヤヨダメヨの流されまくりの可愛い子ちゃん受けは『これなら別に普通に男女の恋愛にしちゃってもいいんじゃ…』と思ってしまって苦手な私なんですが、この作品の、一筋縄ではいかない狂気に満ちみちた可愛い子ちゃん受けの、その狂気っぷりにはヤラレてしまいました。
この話が攻め視点で良かったです。もし受け視点だと、ここまで楽しく読めなかったと思う。
主人公はスランプ中の天才ピアニスト(攻め)です。
ピアノが弾けず鬱々とした日々を送っていたある日、彼の前に突然あらわれた少年(受け)に『ユキちゃん!』と声をかけられる。
少年は主人公のことを、行方不明になった恋人だと勘違いしており、その後もストーカーのようにつきまとうようになる。
最初はその少年をウザがっていた主人公も、つきまとわれるうちに、だんだん少年が自分の領域に踏み込むのを許しはじめる。
攻めと受け、お互いが持ってる闇と狂気を、互いに癒していく、その過程がめちゃくちゃ良かったです。
睦月(受)が病んでて、よく考えるとかなりコワイ話なんですよね。全体的に狂気が漂うわりに、テンションはたいして高くならないので、かえって迫力がありました。
正直言うと、何とも評価に迷う作品ではあるんですよ。それなりに楽しめたけど、『好き』かって言うと微妙なんですね。いや、だからって決して嫌いではないんですが。
ただ、ストーリーが最初読みながら想像したように、『大好きな優貴』を失った睦月が、優貴そっくりな晴人(攻)を見つけて、『優貴は死んでなかった!』とただただ思い込んで(心底2人を混同して)たわけじゃなくて、結構複雑でしたね。
ただ、睦月の病み具合がかなり詳細に(ページを割いて)描かれているのに、肝心の晴人と睦月の恋愛が、急ぎ足というか心の動きが唐突に感じてしまってちょっと惜しかったですね。
将来を嘱望されたピアニストの春人は大切なコンクールを目前に、ふと自分の演奏に疑問を持ってしまった。
突然のスランプに、春人は決勝戦直前のコンクール会場を抜け出す。
すべてを放り出して、ピアノのない怠惰な生活を送る春人に元に突然現れた少年、睦月。
彼は春人のことを「ユキちゃん」と呼び、自分はその恋人だと言い張るのだが……
話の流れもキャラクターの心情も全体的に唐突な印象。
突然現れた得体のしれない睦月に心惹かれていく過程もそうだし、そもそもそんなうさんくさいヤツ(うさんくさいを通り越して若干怖い)をかまってあげる春人の心の動きもいまいちわからない。
そして睦月を家に上げた春人がピアノを弾こうと思い立つ理由も。
それから睦月に対していきなり体を意識しはじめるのにもちょっと驚いた。
(まあBLにはよくあることですが……)
色々色々あって再びピアノに向き合うことを決めた春人が何事もなかったように弾けるのが気になりました。
絶対思うように指が動かなくなると思います。
いろんなものにひっかかりを感じているうちに読み終わってしまいました。
スランプに陥ったピアニストの晴人と、晴人を違う名前で呼ぶ少年・睦月のお話。
睦月は、晴人のことを一年前にいなくなった恋人・優貴と勘違いしているようで……というお話。
睦月は、晴人の「優貴じゃない」という言葉に一切、耳を貸さなくて、やれる限りの無茶をする。
家の扉を叩き続けたり、自分が凍えてしまうくらいまで、晴人を待ち続けたり……。
話が大分進んだ途中で、晴人もようやく、優貴の精神状態が普通じゃないってことをはっきりと自覚するんですが……。
まぁ、大体は、考えたような展開……つまり、ベタでした。
でも、ちょっと優貴を我に返らせる方法が、ちょっと思ってたのといい意味で違ったのかなー? と思います。
ただ、話としてはとっても綺麗な話だったように思います。
表現、ちょっと変だと思うんですが、睦月が自然に病んでて……というのか、他は一切普通なのに、そこだけおかしい、というのが上手に表現されてて、それが話が重くならずにすんでる理由なのかな? と、思いました。
シリアスかつ、綺麗な話が好きな人にはオススメできる話かな……と、思います。
ただ、晴人がどうして、あんなに怖いし、迷惑なことをされた睦月に最終的に惚れてしまったのか……? ということは疑問に思わないこともなかったですが……。
自分がやられたら怖いし、ひきますよね……。
でも、最後まで読んで。
結局本当は晴人は、スランプでむしゃくしゃしてたからアレだけど。
困ってる人を放っておけないたちで、純粋な裏表のない好意を見せられたら、弱いのかなー……と、思ったら、なんとか納得できなくもないような……(苦笑)
まぁ、無理やり納得するようなもんでもないですけどね。