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表題作水に眠る恋

久住廉
大学病院の外科医,尚哉の高校の同級生
上原尚哉
業務用空調設備会社の営業

その他の収録作品

  • 幸福の在処
  • 運命の人
  • あとがき

あらすじ

仕事で大学病院を訪れた上原尚哉は、高校時代の同級生で外科医になっていた久住廉との再会に狼狽する。
なぜなら、かつて心を通わせながらも、ある事情で尚哉が裏切り、別れた相手だったからだ。
久住は屈託なく接してきたが、二人きりになると態度を豹変させ、脅すように「償い」を求める。
身体を差し出せ、と―。
別れてからも久住を想い続けていた尚哉は、心を痛ませながら応じるが…。
甘苦しいセクシャルラブ、全編書き下ろしで登場。

作品情報

作品名
水に眠る恋
著者
可南さらさ 
イラスト
円陣闇丸 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
リンクスロマンス
発売日
ISBN
9784344806641
4.2

(74)

(37)

萌々

(20)

(13)

中立

(3)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
11
得点
307
評価数
74
平均
4.2 / 5
神率
50%

レビュー投稿数11

久々に泣けるBL小説読みました

テーマが再会愛ということで、9年前に好き合っていたのに別れてしまったカップルが再会するところから話が始まります。攻めが受けを誤解したまま別れていたので、最初は「昔裏切ったんだから体を差し出せ」ってな感じで痛い関係の始まりだったんですが、受けの方も嫌いになって別れたわけではないのでそんな関係でも再びお互いに求めあい惹かれあっていってしまう二人。切ないお話なのに結構エロが濃い所もおすすめです。

9年前は攻めの母親に、現在になってからは受けの妹にそれはもう激しく二人は邪魔をされます。前者は精神的におかしい人でしたが、後者はまともで思いやりもある人間だったので優しい受け様は攻めを愛してるんだけど家族のことも大事で本当に苦しみます。こんなに愛し合っている二人なのに、これでもかという位周りに邪魔されるのが本当に可哀想でした。でも現実的に考えたらこれくらい反対されるのが普通だと思う。あんまりすんなり家族に理解はされないんじゃないかな。受けは高校生の時に攻めのお母さんに酷い目に合わされたので、攻めもあれくらい妹にきつく言われたのはおあいこでかえって良かったと思います。

そして受けの出した決断。別れるわけではないけど、家族を捨て切れず遠距離恋愛をはじめます。その一時的な駅での別れのシーンがまたいいんだ。駅で別れのシーンのあるBLはドラマチックで映画的で名作が多いと思います。

離れてみて受けは自分が攻めにどんなに愛されているか、自分もどんなに彼を愛しているか思い知り、全てを捨てても彼についていく決心がつくのです。電話で話していた攻めの一言で受けにスイッチが入るシーンがまた良かったです。何事もほんのきっかけなんですね。ストーリーが丁寧に作りこまれてて最後まで飽きさせないお話でした。名シーンがとても多いです。切符のエピソードもよかったなあ・・泣けました。攻めは最初は嫌な奴かと思いましたが本当にいい奴でした。器の大きい男です。しかもエリートで顔もいいなんて・・受けは心配が絶えないと思いますがこれだけベタ惚れされてるからきっと大丈夫です。

イラストも美麗でお話にとても合っていたと思います。

10

これまた名作です(T-T)

水に眠る恋は、全部で3つの章からなります。

1章目が本編であり、タイトルと同じ「水に眠る恋」です。
出会いから9年後の再会愛。お互い思いあっているのに、すれ違うという王道ストーリーです。
ここでは攻めの母親が見識の高いキツイ女性で、二人の間を引き裂こうとします。受けはその母親からお金を受け取り、攻めの前から消えるのですが、事実とはかなり違っておりました。でも攻めはそのことをずっと根に持っていたため、最初の出会いはきつかったです。攻めが受けを抱くときは実際痛みを感じたほどです。あぁ、何という鬼畜攻め、辛い、と思いました(>_<) 全編を通じて受け視点が多かったこの作品。ですが途中攻め視点もあり、そのお蔭で攻めの冷酷なイメージが薄れました。それどころか、溢れるほどの受けへの愛を知ることが出来、とても良かったです。
攻めから受けへの過去の誤解が解けて、二人の心が寄り添い、通じ合うまでの描写が本当に素晴らしかったです。

2章目が「幸福の在処」です。
受けとその家族との衝突がメインです。家族を取るか恋人を取るかの選択を迫られます。葛藤し、苦しみ抜いたあと選んだのは、愛する攻めとの悲しい二度目の別れ。でも最後にようやく決断した攻めとの未来。ここに辿り着くまでがホントもどかしく苦しかったです(*´Д`)
やっぱり家族の反対というのは、同性愛者にとって、他の何ものよりも厳しい試練なのだと改めて思い知りました。あとがきで可南先生も「いっそ昼メロ調を目指したい」と仰ってましたが、こうした家族との軋轢に悩む受けの姿を、小説を通して知ることが出来て本当に良かったです。勉強になりました。彼方を立てれば此方が立たず、と諺にもありますが、全ての人を喜ばせ納得させるのは難しいし、あり得ないことなのだと分かりましたorz

3章目が「運命の人」です。
受けの妹の結婚式から始まります。この妹が2章目で受けと攻めの間を引き裂こうとした張本人ですが、兄である受けをとても大事に思っていることが伝わってくるため、キツイとは思いましたが酷い子とまでは思いませんでした。大団円でした(*^ワ^*)

何れも攻めが久住廉で、受けが上原尚哉であることは間違いなく、とても長い道のりを経たけれど、美しい愛の物語でした。皆様もまだお読みになったことがないというのでしたら、是非、お手に取って読まれてみてはいかがですか。私は沢山涙しましたし、最高に良い作品に出合えたなと胸を熱くしております。有難うございました。

5

切なさと想いの深さと

高校時代に人知れず触れ合った久住と尚哉。
それは久住の母親と、家庭環境から終わりを告げる。そして9年後、二人は再会するわけですが、久住を裏切り目の前から消えた尚哉はあの時を忘れられず。

もう、二人の気持ちと表に出る言葉や態度がすれ違い、周りの環境(主に尚哉の母や妹)もあって、また離れそうになります。
しかし、尚哉がずっと大切にしていた、裏切りの結果である切符を久住は見つけてしまいます。その時、久住は尚哉の気が付きます。都合のいい解釈かも知れないと思いながらも、尚哉と対峙します。
その時、切符は手を離れ落ちていくのですが、歩道橋から身を乗り出すほどに必死で取ろうとする尚哉、「もう、久住との思い出なんてこれしかないんだ」というセリフにグッときました。
そして「好きなやつ」としっかり言葉にして伝える久住。
もうね、やっとですよ、コレで二人は幸せになれるんだ、と思いました。

が、まだまだ彼らには試練が…
そう、尚哉の妹さんという強敵が。尚哉は優しく家族を捨てるなんて簡単には出来ない。だからこそ久住と離れるべきか、と思うんですが、そこは久住も学習しています!俺はもう、手放す気はない、とキッパリ言うし、最後には「間違えるなよ、俺の幸せは周囲が決めるもんじゃない。お前でもない」と力強い〜!
久住が男前すぎてくらっくらしました。

私が読んだのは旧版ですが、文庫が出ていて書き下ろしが追加されているんですね。
文庫版も読みたくなりました。

1

く、苦しい…

高校の頃、誰とも親しく話をしない金持ちの息子・久住と、
ちょっとしたきっかけで仲良くなり、自分だけに見せる態度が嬉しかった尚哉。
二人とも友情以上の気持ちを持っていて、
二人だけで出かける約束をした日、尚哉は久住に連絡もせず、
家庭の事情で引っ越してしまいます。
9年後、仕事先の病院で外科医になった久住と再会し、
最初は当たり障りのない、過去には何もなかったかのように接する久住でしたが、
尚哉が上司を庇おうとすると途端に豹変し、
尚哉の体を要求します。あの頃の償いをしろ、と。

わりと王道と言ってもいいかもしれないストーリーですが、
可南さんは初読みで、更に円陣闇丸さんの素晴らしい挿絵が+αとなり
切なさで胸がぎゅいぎゅい音をたてました!!

当時の誤解も解け、お互いの気持ちも交じり合って…という時に
今度は尚哉の妹が許してくれません。
キッツイ妹さんだな…と思いましたが、
小さい頃実の父親にも裏切られた為、
兄には自分と母親を見捨てないで欲しかったんです。
家族って、血で繋がっているだけじゃなくて、
過去も現在も未来も、距離は多少離れていたとしても
ずっと縁は切れない人間ですから、
決して無下には出来ないわけです…。
自分の幸せばかりを優先させてはいけないと思い悩む尚哉。

でも、そんなツライ日々も乗り越え、久住と共に生きてゆけるラスト。
ほっと嬉しくなりつつ、それでもすれ違っていた時の切なさが
胸の大半を占めるのでありました。

元同級生、再会もの、大人の切ないラブストーリーをご所望であれば、
是非こちらの作品をおススメ致します!

…本当に、円陣さんて色気ありまくりの男性を描かれるなぁ…。
すごく得した気分になります。





5

恋と家族

評価に違わず良い作品でした。
王道的な「過去のすれ違いからの再会」からはじまる今作ですが、かなり家族というものに重きを置いている作品だと思います。
すれ違う原因となったと言える久住の母親の存在や、見捨てることや見捨てられることへの恐怖を尚哉たち家族に植え付けた尚哉の父親の存在、そして尚哉の母親と妹の存在。それぞれがとても重要な作用を主人公たちの心や行動に及ぼしています。
家族だからこそ大切で、でも家族だからこそ時に傷つけあってしまう。そこに愛する同性の恋人という存在が絡まれば、事態はより複雑に……。二人が愛し合っていればそれでいい、では終わらない一筋縄ではいかない恋愛が描かれています。

また、家族と恋人との間で揺れるジレンマも読みどころではあるのですが、久住と尚哉の甘くて苦い過去や、再会してからの胸が苦しくなるようなすれ違い、想いが通じ合ってからの甘い時間、こういった恋愛部分が本当に良かった。読んでいると胸が痛くなったり、胸がいっぱいになったりしました。
二人が互いを強く求めあっていて、人生でたった一つだけの恋をどうにかしようと悩み苦しんでいて……。とても切なかったです。そのぶん、ラストでは熱いものがこみ上げてきました。二人の道はまだまだ続くのだとしても、「ようやくここまで辿り着けたんだな」とそんなふうに感じられました。
読んで良かったです。

円陣闇丸先生の挿絵も雰囲気に合っていて素敵でした。

切ない作品を読みたい、でもハッピーエンドがいい。そういった方は地雷がないようでしたら是非読んでみて下さい。おすすめです。



※余談注意
余談ですが、個人的にこの作品のイメソンにはglobeの「DEPARTURES」を頭に浮かべてました。季節は違うんですけどね。切ない感じとかがぴったりだなと……。
最後に好き勝手書いちゃってすみません。ほんとに余談ですね!

4

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