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※ゲイの青年は登場しますが、物語のメインテーマはBLではありません。
マンションの屋上庭園の奥には朱塗りの祠がある。
悪いご縁を切るための「縁切り神社」で、地元の人たちからは「縁切りマンション」なんて呼ばれている。
そこに住むのは神社の神主を務めながら血の繋がらない娘を育てる統理とその娘の百音、親子の隣人兼親友で同性を愛する青年・路有、昔亡くした恋人を想い続ける桃子、とみんなそれぞれが失った過去をもち、生き辛さを胸の内に抱え、それを乗り越えてきた人間ばかりだ。
にもかかわらず、縁切りマンションの住人たちの周囲に流れる空気は穏やかで心地いい。
彼らはいつもマイペースで、他人の視線に振り回されることなく、ありのままの自分でいる。
何にもとらわれないそんな姿に肩の力が抜けて、こちらまで気持ちがゆるんでしまうのだ。
統理と百音、路有の三人の関係もとても素敵だ。
統理も路有も百音を子ども扱いしない。
決して答えを誤魔化さず、考えを押しつけず、一人の人間として、娘として、尊重してくれる。
統理はくそがつく程に真面目で、淡々としたその人柄からは読み取りにくいが百音への話し方、触れ方その一つ一つが父から娘への愛情として感じられる。
血のつながりはないけれど、三人はまぎれもなく家族なのだと思う。
血縁があっても切れる縁があるのと同時に、血縁がなくてもつながる縁もきっとある。
〝手を取り合ってはいけない人なんていないし、誰とでも助け合えばいい。〟
統理のその言葉の通りで、それが出来たら世界はもっともっと楽しくて優しくなれるのだろう。
どこかの知らない誰かが決めた「正しさ」に縛られる必要なんてない。
毎日を過ごしていく中で、しんどいこと、嫌な気持ちが消えなくて落ち込んでまうことはいくらでもある。
その度に自分をなだめすかして、開き直って、なんとか自分の中で折り合いをつけてやってきたけれど、みんな同じなんだって、自分だけじゃないんだ、と思えて味方をみつけたみたいで嬉しかった。
そんな風に辛いことも苦しいことも受け止めて、これからもずっと続いてゆく明日の乗り越え方を教えてくれる、心の処方箋のような1冊だった。
またいつか、縁切りマンションの住人たちの物語が読むことができたら嬉しいな。
そういえば、うちのマンションの屋上は緑化されていないなーと、興味を持った本ですが、著者が「縁切り神社」に引っ掛けて何かを問いかけている作品でした。
著者は「ちょっと変わった人」たちが抱える生き辛さを書くために、どういう方法で人の観察したんでしょうか?道端でしゃがみ込んで、虫を観察する幼児を連想してしまった。
某サイトに凄く良いレビューがあったので、嬉しくなってしまった・・と言うのは、私の感想と似ているから。(今の私は、何を読んでもこのように感じてしまう病にかかっています)
著者が、一般ノーベルで出す3冊に共通するのは、三つ。
★「読者が身近さを感じるキャラ構成」で、
★「ちょっと変わった人」をテーマにしていること。
★「少し変わっている」だけなのに生き辛さを感じているマイノリティな人達へ目を向けて、躓づいているもの=「普通とはなに?」を考えてほしい、と誘導している。
・・のではないか?、と私も思いました。
「BLジャンルへの偏見/ジェンダーレスへの偏見」も、同じですよね。
戦って得るべき権利や理解ではないので、こういう芸術面からジワジワ融和していくのが最善だと思います。
★「神さまのビオトープ 」
うる波は、事故死した夫「鹿野くん」の幽霊と一緒に暮らしている。
夫の幽霊と暮らすうる波を取り巻く、秘密を抱えた彼ら。世界が決めた「正しさ」から置き去りにされた人々へ、「愛の形」を問う物語。
★「わたしの美しい庭」
マンションの屋上庭園の奥にある「縁切り神社」。そこを訪れる<生きづらさ>を抱えた人たちと、「わたし」の物語
『屋上神社』とか『縁切りさん』と気安く呼ばれる神社に、悪癖、気鬱となる悪いご縁、すべてを断ち切ってくれるといい、“いろんなもの”が心に絡んでしまった人がやってくる
★「流浪の月」
家出をした少女を保護したのに、誘拐犯にされてしまった引きこもりのロリコン少年の話。
少女の考え→「あなたと共にいることを、世界中の誰もが反対し、批判するはずだ。わたしを心配するからこそ、誰もがわたしの話に耳を傾けないだろう。それでも文、わたしはあなたのそばにいたい」
(被害者にされた少女は、保護した少年の弁明を強くするべきなのに、著者はそれをさせない。なんで?一番の被害者は、少女を保護した少年。)
・・・この作品の筋がきが不満で、読後感想はとても書きにくい黒い感情が渦巻いて上手く書けません。今も。
先生買い。そんなに落ち込まずに済んだので萌にしました。人生色々考えてしんどいわ、という方に少し楽になるためのヒントがあるかもと思うお話で、全5編260ページほど、です。
登場人物は
統理(とうり、♂、百音の保護者)、百音(もね、♀、10歳)、路有(ろう、♂、ゲイ、統理のマンションに住む)、桃子(♀、39、医療事務している)、坂口(桃子の高校時代の彼氏)、基(坂口の弟)、忠志(路有の元カレ、修羅場製造機らしい)、茉莉(百音の母)、真由(基の彼女)等々、とまあ色々。
皆さん、等身大でその辺に居てもおかしくないと思う方々です。
##以下、より内容に触れるお話
1編目:百音視点、プロローグみたいなお話。
2編目:もう後がないと母親から見合いを迫られる桃子が、自分の進む方向を見つけるお話。
3編目:路有が、自分を切って捨てた男に会いに行く羽目になるお話。
4編目:基が、自分の事をもう一度好きになる話。
5編目:百音視点。エピローグみたいなお話。
「流浪の月」よりかは、落ち込まずに済んだし、前向きな気持ちになる部分もあるかなと思うのですが。読後に、自分はこんな大切にしたい仲間を持ってない気がするなあ…と淋しい気持ちにもなってしまいました。温かいような、でもちょっと痛みを伴うような、そんなお話に感じました。
鬱の方や、どうしようもない痛みを抱えた方も出てこられるので、そっちに引きずられちゃうのかな。がんばって、周りに支えられて、それらを振り切って、ぼちぼち前を向いていくお話なので、もう少しハッピーな読後感でもいいのでは?と思うのですが、自分のパワーが今少ないからダメなのかも。
統理、路有、百音の緩やかな素敵な関係はとっても清らかで暖かく良いです!3人とも一度お茶をご一緒させていただきたいと思う方。優しく大人な距離感を保ちつつ、でも思いやりも持ってくださるとでも言えば良いのかな。だから元気になれる人が多いはずだと思います。
上手く言えなくて悔しいですが、読みやすいし、書かれているどれか一つは近い痛みを感じたことがあるだろうし、あ、いいなと思う言葉が一つはあるよ!と思うお話でした。うーん、レビュー難しい……良さを伝えられない……