【SS付】【イラスト付】
個人的に、妃川先生の書かれる受けがツボなのです。
強気で不器用で健気。
その生真面目さ故に、貧乏クジなんかを引きやすくて。
また、硬質な色気なんかも持っている。
攻めは大抵、最初は傲慢だったり俺様だったりするんですけど、その見た目から御し易しと嘗めてかかった受けの、意外な芯の強さや凛とした姿に興味をそそられる。
で、「お前は面白い」とか言いながら、一転、受けに甘くなる。
ついでに、実は結構な束縛系だったり執着系だったりする。
受けは、その執着に怯えを感じつつも、同時に強く求められる事に喜びを覚えちゃうのです。
そう、私の萌えツボを、これでもかと押さえていてくれるのです!
まぁそんなワケで、ビジネスの見返りに身体を差し出すよう要求された受けと、ロシアンマフィアのボスである攻めと、今回は設定としてはハード。
ハードなんだけど、いつもと同じく内容としては甘々なんですよね。
なんのかんの言いつつ、マフィアの攻めは受けに甘い上に弱いですし。
いや、仕事の視察だ!とか言いつつ、受けを連れ回して美味しいものとか食べさせて、満足気にしてるしね。
ところでこちら、新書で出された既刊の、新装版になります。
旧版未読なので確かでは無いのですが、加筆修正は無さそう。
攻めの言い回しとか、やたら時代を感じさせますしね。
ただ、初版で購入すると、特典のSSペーパーが付いてきます。
あと、書き下ろしの新作では無くとも、こうして新刊を出して貰えてとっても嬉しいです。
で、ザックリした内容です。
父親の命令により、ロシアに新たな事業展開を求めるべく訪露した、日本人ビジネスマンで財界の名家・鬼柳院家の次男である咲人。
新興財閥トップで実はロシアンマフィアのボス・アランに協力を仰ぐんですね。
すると見返りとして、愛人となる事を求められー・・・と言うものです。
繰り返しになりますが、こちら設定のハードさに反して、甘々な印象が強いです。
実は咲人ですが、不義の子だと言う疑いから、父親に冷遇されてるんですね。
で、幼い頃から、父親の愛情が欲しい。
居場所が欲しいと、渇望してきた。
今回も突然ロシアに飛ばされ、無茶な要求をされつつも、成功をおさめなければと強迫観念にも似た思いを抱いているんですよね。
そう、健気で不器用で心に傷を持つ、愛に飢えた受けなのです。
で、最初こそ咲人を男娼扱いと、傲慢な攻め・アラン。
マフィアである自分に対しても、強気な姿勢を崩さない咲人の言動に興味をそそられる。
そこで、愛人契約を持ちかけるー。
この愛人契約ですけど、最初こそ激しく抱かれと、咲人がちょい気の毒なんですよね。
が、その後に寝込めば手厚く看護され、更にここから、ロシアの視察だのと仕事にかこつけて、あちこち観光に連れ回される。
で、楽しげな咲人を見て、アランは満足げに目を細める。
いや、態度は傲慢だけど、やってる事はめちゃくちゃ甘いよね?と。
この後ですが、アランの尽力により、咲人の仕事は軌道に乗ります。
で、仕事仕事でアランとの時間が取れなくなる咲人。
すると、「甘やかしすぎたな」と閉じ込めて、愛人としての務めを果たせと抱きつぶすアラン。
アランの采配により、仕事は滞りなく進むものの、逆にその事で傷つく咲人。
咲人にとって、自分は必要無いとされた事が、一番堪えたんですね。
スレ違い展開です。
いや、アランのした事は正直どうかと思うんですけど、咲人に完全に無視されるようになるとですね、なんとか機嫌をとろうとするのに笑えちゃうんですよ。
子猫を無理矢理押し付けたりして。
こいつも結構、不器用だよな。
そして、かなりの束縛系だよな!
と、そんな日々を経て、アランを愛し始める咲人。
しかし、政略結婚の駒とする為、父親から帰国命令が下り・・・と続きます。
ここからマフィア同士の抗争まで発展しと、ストーリーは緊迫感を増して行きます。
これ、咲人の唯一の理解者である兄がですね、すごくいい味を出してましたよ。
いいお兄ちゃんですよ。
まぁただ、父親がアランの敵対勢力と手を結んでって、ちょっとお話としては無理がある気がするけど。
だってロシアに伝手があるのなら、ロシア支社はこんなに苦労してないはずじゃん。
あと、微妙に引っ掛かる部分ですけど、なんか言葉が古い。
10年前の作品って事が大きいのかも知れないけど、アランが咲人の事を「そなた」とか言うんですよね。
ロシア美女も、「あんたみたいなチンクシャ、どうせすぐ飽きられるわよ!」なんですよね。
チンクシャ・・・。
懐かしい響きだ。
まぁ「そなた」は三回目くらいで慣れて、全然気にならなくなったけど。
と、そんな感じでちょっぴり気になる部分はありつつも、全体的にはとても好みでした。
ラストも、とってもロマンチックですしね。
朝南かつみ先生のラフあると聞いて購入。時々重いなあと思うこともある妃川先生ですが、今回はロシア舞台だからか、攻めの雰囲気がとても良かったので萌2にしました。本編260p弱+あとがき+かつみ先生のラフ2p。
父親の命令によりロシア拠点のテコ入れのために赴任した咲人。最初の伝手にけんもほろろに追い払われ、言い寄ってきた別の相手に会ってみるとヤバそうな相手で大ピンチになったところ、最初の伝手であるアランが「これ(=受け)には私の手がついている」と言ってきて・・と続きます。
攻め受け以外の登場人物は
ヴィクトール(攻めの側近)、ルリ(受けに与えられた子猫、しゃべりません)、聖人(受けの兄)、白澤(聖人の側近)ぐらいかな。ヴィクトールと白澤に惹かれるのはしょうがない、執事・秘書・側近大好き。
**好きだったところ
攻めのブレないところ。帝王然としたマフィアですが冷血さはあまり感じず、貴族の血をひくのか、どことなく優雅な振舞いをする方でして。いつも優雅で余裕ある様子で、良いのです。
それが子猫を拾ったかのように、抱きよせ愛撫して連れまわしてと受けを猫かわいがり。でも顔はにやけてなくって、おそらく渋い顔をしたままなので、咲人には「愛されています感」が絶対伝わってないと思うんです。そこがまた、よろし♡
微に入り細に入り説明してあるのより、色々想像する幅を残してくださっているように感じられて、嬉しかったなあ。単に私が攻め好きでシンクロしているからかな?
不器用そうな雰囲気なのに、受けの機嫌取ろうとして仔猫持ってくるなんで、王道とは言え超好きなんですが!良いと思いませんか・・?
受けさんはお涙頂戴とまではいかない頑張り健気さん?どっちかというと「捨てられた血統書付き貴重な品種の猫」という雰囲気なんで、「保護せずにはおれん」という表現の方が正しい気がする。
最後は必殺技!という様子でお話は片付けてしまいましたが、良かったです。ヴィクトールも、白澤&聖人の話も読んでみたいな・・・
ラフは、アラン、咲人、ヴィクトール、ルリのラフでした。本当に美しい挿絵、朝南先生、有難うございました。大好きでした・・・こうやってまた新しくお目にかかれる機会もあるのですね、またいつか拝見できることを楽しみにしています。
随分前に購入して、読後レビューしていなかったので、再読。
この小説は、かなり古い作品を、文庫に再発刊したもの。
多分連邦時代のロシアが舞台。
両親に似ていない咲人は、不義の子だとネグレクトされて育つ。
結果を出してこいと、父親にロシア支社に飛ばされて、
地下組織のトップ・アランに気に入られて愛人になる。
色々在って、アランと二人で国外脱出、自分を愛してくれる人と暮らす咲人。
全ての悲しい出来事の因は、父の誤解。・・兄は母似、咲人は祖母似だと分かる。
咲人の兄が、父親を引退させた後、
ロシアンブルーの兄妹猫を買い取り、咲人を思い出して涙する場面で終わり。
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朝南先生の挿絵がとても綺麗、丁寧な描写の絵が物語に深みを添えています。
2012年1月7日、くも膜下出血で逝去された朝南先生、
御友人がオンライン美術館を制作、Twitterアカントをここにメモ。
『朝南かつみ(鳥居裕美)展』@オンライン美術館HASARD @Asanami1130_eb