特典ペーパー付
民俗学の深い世界観に、それに対する見解、美しい日本語、物語のひとコマひとコマが丁寧で、本当に素敵な作品でした。
不老不死のモノノケという題材の元、ファンタジーな世界なのかな~って軽い気持ちで読んでみたら全然違いました。
しかも難しい言葉のやり取りが続くかと思いきや、きちんと抜きもあり、わからなくても読んでいけました。
また、2人の恋もしっかり進んでいくのがまた素晴らしい。しかもロマンチックなんです。
日本語の深みに気をとられましたが、恋愛パートにはいると激甘です。このギャップよ!
初めてのセッも、生々しい事前準備を含め、こんな細かく丁寧に描かれている作品は私は初めて読みました。
1日1日を丁寧に過ごしていく2人の物語は、自然に感情移入でき、感動も緊張も一緒に味わえる神作品でした。
不老不死のトキが、シワも愛する人と日々を過ごしていけている証だと受け入れていたシーンは、泣きそうになりました。
老いは恥ずべきもの、悲しむべきものではない、幸せを感じられるものでもあると、私自身で曲解はしてますが、かなり刺さりました。この漫画に出会えて良かったです。
◾︎トキ(モノノケ) ×八日見八潮(高校生)
季節ひとまわりを美しく描ききるのだなぁ。草木を愛でて、寝て起きて、ご飯を食べて、日々生きる様が描かれているので、濃いセックスシーンとのギャップが素晴らしい。3大欲求しっかり描かれてます。言葉少ななセックスシーンがしっかりページ数使って描かれてるのはたぎる。
上巻で広げた風呂敷を閉じ切ったかというとそうでもないかもしれませんが、綺麗に丸め込まれて浸れる終わり方でした。下巻の雰囲気の方が好きだな。
上巻ですこぶるカッコよく描いた「八潮は何者?」とかも完全無視してますがまぁ、ね。「相性結び」で先生の作品は全て語らないモノだと学習しているのが良かったのかもしれない。先生の中には答えがあるのかもね。
上巻でミツ落ちしてたので、そこに触れてくださったのはありがたい!…のだけれど、ミツ…
ミツは八潮との関係性をどういうものにするのが理想だったのか、希望だったのか分かりませんが、トキにとられた気分だ!
聖人君子が聖人君主になってるので、重版かかるなら直して欲しい…言葉を大事にしてるいい作品なだけにこういうのは悲しいので。
上巻の感想で触れましたが、参考文献に柳◯國男出てきてましたね〜
二人の距離がどんどん縮まり、言ったことは覆せないけど、ちゃんとぶつかって気持ちを繋げてく過程が良い。
サラッとしたやりとりにも、キーとなる言葉がけがあり、ユーモアとドキドキが味わえるのが好きなところ。
トキの変化が1番に表れたのが笑い皺というのにもやられました!!
初めて体を繋げるって日の挑みっぷりもあっけらかんとしてるのに…色気が!!
突然のトキの余裕あるオスっぷりにトキメキ、段々と慣れて感じるようになる八潮の色気にもドキドキ。
蟻の門渡りをふにふにしてるの初めて見たかもしれません!!
さらっと描いてあって、一瞬どこや?と思って、蟻の門渡り!と気づいた時の感動!!
ふにふに感と八潮の反応がたまりません!!!
(ニッチな趣味ですみません)
体位やボリュームもたっぷり、ときめきポイント満載でした。
ミツもすごく好きでした!!!
すっごく良いやつ(狼)
八潮のこと大事に大事にしてて距離感わからなくなって、それを八潮に突破されたのじーーーんときた。ミツも唯一無二!!
山での日々を大切に、周りを大事に過ごす生活が素敵で、満たされてて満たされてないとこを二人で補えたのも唯一無二で良かったです。
これまでの作品も好きなんだけど、好きと同じくらいモヤモヤするとこもあって、
今作も言われて見ると、それ謎ですね!!とこあるけれど、読んでる時は全く気にならなず、満たされた幸せ気分な読了感で謎のままでも良いかって気持ちです。
なんてことない日々のことを大切にしたり、特別なことは特別に喜んだりお祝いしたくなりました。
日本の四季、伝統、諺、歴史、、、、ここに不老不死のモノノケと人間の恋が交じるとこんなにも美しい物語になるのかと驚愕。
この2人、共に年を重ねて生きていくことが出来そうだなぁと想像できるラストでした。
八潮を想い感情を持つことで不老不死であるトキの中で刻が流れ出したのかなと。そしてそれはトキにとって幸せなこと。ラストシーンの
「俺に遺して 俺を息づかせて」
こ、こ、こ、こんなにロマンチックな台詞聞いたことがない!!!!ボロ泣きです。上巻から2人のやり取りを見届けてきた流れでこの台詞は重みがあり全てを物語ってくれてる気がします。
ほんとに素晴らしかったです。
灼先生の作品を拝読するのは、『あおに鳴く』に続き2作目です。
約2日でのめり込んでしまったくらい、灼先生の作品は、私の観念や思想とマッチするのだと思います。
絵について。
瞳の訴える力や、身体の色気が物凄く、うっとりするほど好きです。
また、全ての言葉についてしっかり読み込む必要はありますが、読み込めば漏れなく全てに意味が詰まっているので、文字だけで赤面できます。
言葉の破壊力が高くて最高です。
八潮は優しいと、繰り返し出てきますが、この「優しい」が内包する意味についても色々考えられます。
この「優しい」や「甘い」の意味ついて、灼先生の作品ではちゃんと読み取る必要があると勝手に思っています。
ミツもトキも八潮の両親も、八潮に甘えている。でも甘えたからには、自分の罪悪と向き合わねばなりません。その深度の差が、関係値の深さの差に直結している。トキが逃げずに向き合ってくれて良かったと思います。
さておき、不老不死の謎について、「宿木」をヒントに考察してみました。
トキは黒髪だった頃、木の上にある宿木(丸い塊)と、地面に落ちて死んでいる鳥とを見比べて、「嫌だなぁと思った」と回想しています。
その時は何がどう嫌で何の話をしているのかわからないのですが、最後まで読んで、
これは「鳥のような生が嫌で、宿木のような生が羨ましい」という意味なのかなと解釈しました。
だから、ラストシーンの八潮への言葉が「俺に遺して 俺を息づかせて」という表現になる。
宿木は、鳥に実を食べさせ、運ばせ、新たな別の木にフンを根付かせてもらうことで、自分の種を繁殖させます。
トキは誰かの宿木になりたかったのかな?と、思っています。
ともかく、沢山考えられて、すごく読むのが楽しかったです。
本当に出逢えて良かった作品でした。
ありがとう!!!