SS付き電子限定版
今回は敏腕営業マンと営業部2年目社員のお話です。
受様がメル友とのやりとりで攻様への憧れが恋だと気づくまでと
受様が入社予定のアルバイトを育てようと奮闘する続編を収録。
受様の実家は祖父の建てた大きな一軒家ですが、8人家族と
大所帯で子供部屋は2人兄と共有だった為、自分だけの部屋に
強い憧れを持っていました。
そのため高校からアルバイトを始め、一生懸命勉強して学費の
安い国立大学に入り、憧れの1人暮らしを始めます。6畳1間の古
アパートでしたが、古い家具をリメイクしたり、安いツールを
レイアウトを楽しみ、リフォーム関係の仕事に就きたいと思う
ようになります。
就職のための会社訪問で、受様はリフォームやリノベーションを
扱う大手リフォーム会社を訪れます。説明会でプレゼンターを
務めた男性社員は、受様のバイト先のカフェでよくパソコンを
開く男性客で受様が秘かに憧れている人だったのです。彼が
今回の攻様になります♪
受様はユーモアを交えながら会社概要を説明をする攻様を知り、
攻様が見た目以上に内面も素晴らしい人だと思います。こんな
人の下で働きたいと強く思った受様は、口下手ながらも必死に
面接で思いを口にし、力説の甲斐があってかめでたく入社、
しかも攻様のいる営業部に配属されるのです。
受様の会社は個人から会社や公共施設のリフォームまで手掛け
ています。今の受様の担当は小さな飲食店のリフォームで、
実績のある攻様はチームでマンション1棟の耐震リフォームに
取り組んでいます。
最初は小さな好意と憧れだった攻様への思いは2年がたった今、
大きくなりますが、自分の恋をアイドルに憧れるようなものと
思っていたのです。受様は好きと言えないならせめて仕事仲間
として近くにいたいと仕事に励みます。
そんな受様の考えを変えたのはある1通の間違いメールでした。
受様が帰宅後も今の案系の新アイデアに頭を捻っていたある夜、
スマホに見知らぬ人からメールが届いたのです。
受様はすぐに間違いメールと気づきますが「真剣な相談です」と
いう件名に思い切って開きます。するとそれは友人宛だろう恋の
相談で、なんと「好きな男がいる。それで友人を続けてくれる
だろうか?」という身につまされる内容だったのです。
受様は悩みながらもメールの主に宛先の間違いを知らせますが、
受様自身も攻様への恋に悩んでいた事から彼の相談相手を務める
事になります。やがて受様の恋がアイドルに向けるような淡い
想いではない事を自覚していきますが、攻様に恋人がいる事を
知ってしまうのです。
果たして受様は自らの恋を攻様に告げるのか!?
そしてメールの主の恋の行方とは!?
雑誌掲載作であるタイトル作に続編を書き下ろしての文庫化で、
秘かに憧れ続けた攻様の勤務する会社に入社した受様が恋に仕事
に頑張るオフィスラブ(!?)になります♪
受様は入社前からずっと攻様に憧れていますが、同じ会社に後輩
として入社した事で可愛がられはするものの、経験の差はいかん
ともしがたく、ずっと前を歩く攻様の隣にたてるとは露ほども
思っていません。
見ていられるだけで満足、一緒に仕事ができたらさらに嬉しいと
思って仕事に励む受様でしたが、間違いメールの主の恋という
一見無関係な相手の恋が受様の恋を変えていくツールとなるのが
面白かったです。
同性が好きだ、キスしたい、抱きたい、と言うメールの言葉で、
受様は自分の恋についても考えるようになります。そして偶然
攻様に恋人がいるらしい事を知ってしまった受様が、自分の恋も
メールの主と同じくらい強い想いなのだと気付いていく様が
丁寧に描かれています。
傷つきたくなくて目を逸らしていた自分の恋に否応なく向き合う
事になる受様の恋がどうなるのか、メールの主の恋が実るのか、
ワクワク&ドキドキで読み進めました。
受様視点で進むので攻様の気持ちは全く受様にはわかりません。
第三者な読者には攻様がちらちらアプローチしている事でメール
の主が誰なのかはうっすらとはわかりますが、なぜに彼がそんな
手段に出たのかはわかりません。
受様のぐるぐるとメールの主の思惑と正体を想像しながらいくつ
になっても恋は人を臆病にするのね♪ なんて思いつつ、とても
楽しく読ませて頂きました。
受様にとって攻様は仕事の出来る大人であり、頼れる上司であり、
およそ弱点はなさそうな完璧な男性なのですが、受様に嫌われた
くなくて小細工するようなヘタレな所がすごく火崎先生らしい
攻様で、個人的にはかなり萌ツボでした (^_-)v
火崎勇先生×麻々原絵里依先生×キャラ文庫さんということで、個人的にスーパーにてノールックで卵のパックをカゴに入れちゃう感覚です。
麻々原先生のイラストですとフラフラと吸い寄せられるのはいつものことなのですが、これは先生のコミカライズが読んでみたい。先生のリーマンスーツは垂涎ものなので…それとネックストラップのIDカードね…♡
卯月の感性は恋愛においてとても女性的です。なので恋愛感情の部分をしっとりと読ませてくれるタイプのお話だと、女性読者としてはおなじみの女性臭さは遠ざけたいのです。現実逃避したいの…。コミックの方がその部分を伏せることができて、卯月の心情と読み手に距離が出て読みやすいかもしれないなぁと勝手に思いました。
ガッツリな男同士!というより、作家様の受けって、いかついタイプよりかは受けっぽい受け(どんな受けだ笑)のイメージなので、攻めの男らしさ、特に対面で上手く気持ちを伝えられない不器用さが引き立つ印象です。このお話の四方さんも仕事ができて、頼もしくて優しい男って感じで好みでした。有能な人は自己処理能力が高く情緒が安定してるので、常に機嫌が良いもの。職場では落ち着いていて話しやすく、メールではしっかり恋人として甘い言葉もくれる…卯月の気持ちを的確に察してくれているんですよね。そりゃ、営業としても優秀なわけです。
表題の本編後に「メールのこちらには愛」が収録されていますが、後半編では坂井くんの教育に奮闘する卯月の気持ちにかなりシンクロして読んじゃいました。
仕事に関しては信念があって、周りの先輩方(特に四方)を参考にしながらしっかりと下積みをした上で、自分の判断でできる限りのことをやり切った卯月は偉かった。あんなふうに感情的にならずに後輩を諭して育てられるだろうか…。彼みたいに自力で解決しようとしていく人が伸びていくのかもしれないなぁ。翻って坂井くんは自分で起業した方が性に合ってると思うよ…。明文化されてようがいまいが学生の身分に甘えて会社のルールを受け入れて守れない人は、組織の中でやっていくのは息苦しいだけだし、会社側からしても教育コストに値しなさそうな人物だったし…。
BL小説でこんな感想が出るの、予想外でした。最近リーマンもののコミックに飢えているので、麻々原先生のビール会社のお話みたいな、本作のコミカライズが読みたいっていう希望を叫びたかっただけのレビューになってしまいそう…。四方や卯月たちみたいな、誠実に働く人たちのお話が読みたいです。オフィスで盛らないタイプの笑
これを読んでいて、メールをモチーフにした海外の映画作品を思い出しました。文面だけで見ず知らずの人に妄想を膨らませて、思いを馳せるのがロマンチックに思えた時代がありましたね。いつの時代でも、文章の奥に隠されている発信者の思いをきちんと汲み取れる人になりたいなと、いくつになっても思っていたいです。
しかし、あとがきに書かれている、二人のその後がいつも面白そうなんだよなぁ。
表題作とその後の書き下ろしの2作収録。
「メールの向こうの恋」
外見も内面もかっこいい職場の上司・四方に憧れのような恋心を抱いている卯月。
同じ職場で時々会話もできて、という今の状態でいい、これ以上を望んじゃいけない…と進展などは望まないようにしていたが。
ある日、全く知らない人物からメールが誤送信されてきて…
…と物語が動いていきます。
男性が同性の友人を好きになってしまった、という内容のメールに、同じ境遇だと感じた卯月が返信した事でやりとりが始まるわけなんだけど。
まあ…最初からこれはこういう話なのかな?と思う通りに展開していきます。
卯月はとても真面目で誠実な青年。少し臆病だけど、彼が自分では行動を起こさないのは普通にそうだろうな、と思えます。
逆に四方の方が、こういう人だったの?と思ったかな。
変化球というか、大人にしてはいじらしいような気もするけど、もっと正攻法でアプローチするタイプの方が好きですね私は。
恋は人を変える…って事なのかな。
「メールのこちらには愛」
無事恋人になった2人ですが、まだ「ひみつメール」やってます。
秘密の社内恋愛だもんね。こういうのが楽しいんですよね。
さて、卯月の下にインターン的な大学生・坂井がアシスタント的につくことになります。
この坂井が社会人としての色々が未熟で、卯月は彼の教育に悩み、ついにトラブルが起きてしまう…というお話。
卯月は傷つき、だけど四方に相談できず。
一方四方は卯月をよく見てなかった、と悔やみ。
いつもそばにいてやりたいしいてほしいから、一緒に住もう…
仕事は嫌なことキツいこと、これからも多分いっぱいです。でもとりあえず甘々の結果になって良かったね、ですね。
麻々原絵里依先生のイラストは素晴らしい。特に四方のかっこいいスーツ姿とお風呂Hでの髪を下ろした姿も最強ですね。
不足していたのは、甘さです。
せっかくのリーマン同士の恋&年上エリート攻め。
もう少し糖分多くしてもらったなら…個人的には満足できたかも。
間違いメールから始まる交流はムズムズしましたし、ツッコミどころもいくつかありました。
でも、全体としてはお仕事モノとして楽しく読めました。
というか、主人公の受け・卯月がお仕事を頑張っているので、そちらを応援したくなる、というか。
特に両思い後の後半部は、仕事面で苦悩する卯月の描写が大半で、LOVE はどこー?でした。
卯月を苦しめていた後輩の言動に読者はずーっとイライラさせられてますから、最後に四方さん(攻め)が卯月をヨシヨシしていてもフラストレーション解消には至りませんよ。
もっと溺れるほど甘やかしてあげてー!!(心の叫び)
卯月は男前だから、しょうがないのかなとは思いましたが。
両思い後は、甘々な話が良かったな。
こちら、一通の間違いメールが繋ぐ恋と言ったお話で、少しほろ苦くて落ち着いた雰囲気で読ませるラブストーリーになります。
子供の頃からの夢を叶え、リフォーム会社で働く営業マン・卯月。
同性に恋する悩みを綴った間違いメールを受け取った事をキッカケに、顔も名前も知らない相手・ブラックとメールをするようになるんですね。
実は卯月自身、同性の上司である四方に憧れを抱いていてー・・・と言うものです。
火崎先生の作品で、個人的に一番好きな所なんですけど。
主人公の、等身大のキャラだったりします。
えーと、ごくごく普通で平凡な主人公が、悩んだり迷ったり逆に喜びを感じたりしながら、当たり前の感覚で恋をする。
今回も間違いメールがキモにはなるワケですが、上司に恋心を抱いてしまった主人公の、ごくごく普通の恋愛が丁寧に綴られてるんですよね。
学生時代に遡っての四方との出会いから始まり、彼にほのかな想いを抱くようになったキッカケの出来事。
社会人になってからの、上司と部下としての再会。
このブラックですが、彼も同性相手に叶わぬ恋をしています。
自分と共通点を持つ彼に親近感を覚えた卯月は、ブラックの悩み相談に乗るようになるんですね。
その過程で、自身の気持ちを見つめ直すようになる。
率直な感想ですが、設定としてはめちゃくちゃ好みなんですよ。
この時代に、メールでやりとりすると言うのもなんだか優しくて心が和むし、相手の悩みに寄り添いながら、自分自身を見つめ直す主人公の姿もいい。
しつこいですが、すごく等身大なんですよ。
主人公が。
悩んだり迷ったり傷ついたりしながら、恋する姿が。
また、お相手となる攻めですが、頼りになってスマートで爽やかでと、まさに理想の上司。
すごく素敵な攻めだと思うんですよ。
思うからこそ、なんかオチでガックリ来ちゃったと言うか。
いや、オチ自体は悪くないと言うか、予想はついたけど素敵だと思う。
ただ、真相がな~と。
で、以下、この合わなかった所についてレビューしますが、核心部分に触れます。
ネタバレが嫌な方は避けて下さい。
↓
えーと、この間違いメールの相手・ブラックですが、正体は四方になります。
実は四方も卯月が好きで、二人は正体が分かった事を契機に結ばれると言う案配。
この、「正体が四方」自体に関しては、期待通りなので全然いいのです。
いいのですが、なんとこの間違いメールは偶然じゃなく、四方が間違いメールを装ってたんですよね。
そう、他人のふりをして、卯月に現在恋人が居ないかだの、相手のどんな行動に惹かれるかだの、逆に引くかだのを探りを入れてた。
や、これは完全に好みの問題なんですけど、男らしくて格好いい攻めだと思ってただけに、なんか姑息だわ~と一気に冷めちゃったと言うか。
相手を騙してって時点で嫌だし、てか、普通に男らしくない。
もうね、本当の本当に間違いメールで、「ええっ、お前がホワイト?」←(卯月のハンネです)みたいのだったら、どっぷり萌えに浸れたのにと。
あと、主人公である卯月ですが、なんか女々しいです。
これも、好みの問題だけど。
こう、頑なに自分の気持ちが恋だと認めようとしないし、ずっと見ているだけでいい・・・みたいな。
恋に悩んだり迷ったりする様は好きですが、あまりに頑なでちょっとだけイライラする。
ついでに、恋で仕事を疎かにするとか、個人的に嫌いなのです。
彼は失恋のショックから、得意先への訪問だと嘘をついて帰っちゃう。
せめて、せめて具合が悪いから早退しますにしといて!と。
う~ん・・・。
まぁそんな感じで、素敵なお話だとは思うんですけど、個人的に今回は合わない部分があったので「中立」で。
繰り返しになりますが、丁寧に描写された主人公の心情や設定は素敵でした。
ちなみに、雑誌掲載の表題作の他に、書き下ろしでその後の二人が語られます。
こちらは、インターンのアルバイトの教育係となった卯月。
彼の奮闘が語られと言った所。
先に卯月が頑なと書いたのですが、なんかこっちでも同じで若干イラっと。
えーと、かなり奔放なアルバイトで苦労する羽目になるんですよね。
彼は責任感があるからこそ、追い詰められちゃったんだと言う事も分かる。
ただ、何故上司に報告して、指示を仰がない?と。
自身が入社二年目のぺーぺーのくせに、手に負えないなら周りを頼れ!と。
二人の愛が深まったと言う点では萌えました。