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恋は秘めたる情慾に -旧制高校モラトリアム-

koi wa himetaru jouyoku ni

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表題作恋は秘めたる情慾に -旧制高校モラトリアム-

牧野光太郎
本家の嫡子,旧制高校に通う学生
白石行彦
光太郎の目付け役,旧制高校に通う学生

あらすじ

三日ごとに、触れ合うだけだったのに――。

旧制高校二年の行彦は、本家の嫡子・光太郎の目付役として寮生活を送っている。
年下だが凛々しく聡明な彼に対して恋心を隠す日々の中、
友人に誘われて遊里通いを続ける光太郎を止めようと、
誤解とも知らずに自慰の手伝いを申し出てしまう。
深まる関係、すれ違う両片想い。
触れられるたびに「学生の間だけ」と心に繰り返し言いきかせ、
身分違いの恋をあきらめようとする行彦だが――…。

作品情報

作品名
恋は秘めたる情慾に -旧制高校モラトリアム-
著者
高月紅葉 
イラスト
北沢きょう 
媒体
小説
出版社
フロンティアワークス
レーベル
ダリア文庫
発売日
電子発売日
ISBN
9784866574448
3.7

(11)

(2)

萌々

(6)

(2)

中立

(0)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
4
得点
40
評価数
11
平均
3.7 / 5
神率
18.2%

レビュー投稿数4

恋愛<時代背景に萌えた

むろんの作家買いにございます。
今回の作品のイメージは大正前期だそうです。
旧制高校の学生寮が舞台って何のご褒美(^ω^)
読む前から私の高鳴る気持ちはそりゃもう天井知らず。
学生服の上にマントなんか羽織っちゃって。
シャツの上に絣の着物、さらに袴なんか穿いちゃって。服装だけで萌え転がれるわーい。


お話について(光太郎×行彦)
先に触れたように、お話の舞台は旧制高校の学生寮。光太郎と行彦はその旧制高校の二年生である。
光太郎と行彦の御家は本家と分家の関係にあり、さらに、行彦の御家の事業が傾いたことにより光太郎と行彦は主従の間柄になる。
そのふたりがBLしようってんだから、主従関係がもたらす葛藤、苦悩が萌えどころであり見せ場であると思う。
行彦の繊細で悲観的な性質には、時代背景をしかと感じ、普段は鬱々とした主人公を好まない私も、うまいなーと唸る人物像でした。
光太郎の強く優しい様は正に理想の人物像であり、時折りのぞく行彦への執着が私にはごちそうであり、恋愛要素に於いてなにかと語りたいオススメポイントもあるのですが……このふたりが織りなす恋愛模様は個人的に萌えが少なかった、というのが正直な感想m(._.)m
えろを含め、想定内の恋愛の域を超えなかったm(._.)m高月先生作品を読む時のいつもの色めき立ち、興奮した心が、今回はフラットで冷静であったように思うのです。
と、辛口なこと言っちゃうわりに評価が高いのはなぜなのかと申しますと。
もうね、設定やセリフ回し、脇をかためる面々の描写が最高だったから!!であります。

学生の鬱憤晴らしのために度々寮でおこる「ストーム」
鍋や太鼓を打ち鳴らし、怒鳴るように歌われる寮歌。乱痴気騒ぎであって蛮行。
でも、それがまかり通り、許された時代。

胡桃やどんぐりを拾い、食べられるものならなんでも保存しようとする学生一派。
そんな描写があるなんて、芸が細か過ぎでしょ。吹き出しました。

いつの時代も、流行りに聡く、新しいものに柔軟に対応し吸収していくのが行彦たちの年代である。だから「学生言葉」というものには、その時代時代の特色が色濃く反映されていると思う。
学友である「緒方」と行彦の会話は時に哲学的で、小難しくて!
きっとこの時代には、こんな学生が居たであろうと想像し、微笑ましくなる。

などなど。語り出したら止まらなくなるくらい、大正前期をイメージした旧制高校という設定が最高だったのです( ´ ▽ ` )
キャラの作り込みがさすがの高月先生で、主人公ふたりはもちろん、学友「緒方」の格好良さは、緒方でもう1作品書けちゃうレベル。

ってことで、私にとっては恋愛要素の萌えよりも、時代背景、設定萌えが強く、そちらの方をより楽しんだ作品となりました。

タイトルもお気に入り。
モラトリアムという言葉の意味がとても大きく、物語りの要でもある。大人になるまでの猶予期間を本人達は悩み傷付き必死に生きている。
過ぎ去った今だから思う。なんて美しく、かけがえの無い時間なのだろうか(^ν^)

旧制高校や学生寮という言葉に心ときめいた方は、ぜひぜひ読んでみて下さい♪

4

大好きな近代BL

なんてエッチなカバーイラストなんだ…。お話の内容に忠実で、BL小説への敬意を感じます。そりゃ小説の挿絵に引っ張りだこなはずです、北沢きょう先生。

お休みの日にゆっくり読もうと思っていたけど、冒頭をチラ読みしたら我慢できなくなって最後まで読んでしまいました。

時代設定が性癖でしたので、とっても楽しく拝読しました。行彦、光太郎に恋してるのね♡っていうのが序盤から痛いほど伝わってくるし、光太郎も行彦に思わせぶりな行動をとっているのが丸わかり。「硬派」気取りを盾に互いの恋情をひた隠しにしている二人の攻防たるや…!ずーっとキュンキュンさせられっぱなしでした。主従で従側が年上ってのがツボすぎる。よだれが止まらない〜。

恋心の隠密具合がたまらなかったです。双方、共犯的ですらあります。その甘い緊張感がね〜、読み手には明かされているとはいえ、えろちっくでしてね…。体だけの関係というのは名目…っていうシチュ、めちゃくちゃ萌えます。そんな二人の仲を揺るがすような人物が各々に登場したりして、ほんと上手いんですよね。ひゃーっ、二人はどうなっちゃうのー?ってハラハラさせられたりして。行彦と光太郎のラブ描写が萌えまくりで大変美味しゅうございました♡

ハッピーな最後はめっちゃ嬉しかったんですけど、結局二人はどうなったんだっけ?と読み返さないと思い出せない終わり方は、ちょっと悲しかったかも。お話の締め括りにもなにか印象に残るシーンがあった方が、読んだーっ!!っていう気になれるおこちゃま読者なもので…。それと、今回なぜか冒頭の風景描写や寮部屋などの建物内部の作りがイマイチ脳内再現しにくかったのも心残りでした。今まで先生の作品でそんなことを感じたことは無かったのですが…。わたしの体調とか頭の冴え度とかのせいだよね、きっと。

作家様の単発長編を楽しみにしている読者なので、また素敵な萌え作品をお待ちしています。レアなんで。ほんと。ずっと待ってます。気が向いたらで構いませんので。よろしくお願いしま…(しつこい)

2

旧制高校の魅力がつまってる!

大正時代初期の長野の旧制高校のお話。昔の日本のエリート男子学生の寄宿舎ものですよ!こういう話の何がいいって青春群像劇というか受け攻め以外に魅力的な同級生、後輩、先輩がいる事ですね。和製パブリックスクールみたいなものです。

受けの行彦は本家の嫡男・光太郎(攻め)のお目付役として同じ学校の同級生として通っていますが、年齢は2つ年上。当時の第一高等学校(今の東大に値する)に合格していたほどの秀才ですが、実家の家業が傾いたため本家に奉公していたところ、光太郎のお目付役として本家の祖父の好意で学生に戻れたのです。

そういう特殊な立場の受けなので光太郎と互いに惹かれあっている事に気づきながら、素直に交際などできないのは当然。年下ながら身分的には攻めの方が上なのです。でもお目付役としての立場で光太郎の性欲を発散させ、遊郭の女には溺れさせない、学生時代だけの熱病のようなものだから、と自分に言い聞かせながら性的行為に及ぶ所が健気でした。受けの攻めへの愛情と忠義の葛藤が見事に描かれています。2人はちゃんとハッピーエンドを迎えられるの?とハラハラドキドキ読みました。

文体も何だか純文学風で当時の雰囲気にどっぷり浸れて素敵でした。丁寧に描かれたBL文学という感じです。高月さんは今月も新刊が出るそうで、パブリックスクール→旧制高校ときて今度はギムナジウムが舞台で(男子校好きだなー。笑)しかも諜報員の潜入もの?(あらすじによる)ということでとても好みのジャンルで期待しかありません。今新刊がもっとも楽しみなBL小説家のうちの1人です。やはり書きたいテーマや作品のストックが多い人は作家として力強いなあと思います。

2

切なさと甘さのバランスがいい。

舞台が「旧制高校」っていうところに惹かれて購入。
マントとかさ、帽子とかさ、寮とかさ、なんか萌えるよね。

旧制高校が舞台ですが、今作品のバックボーンはそれだけに非ず。本家の嫡男×嫡男のお目付け役という身分差ものでもあります。で、その雰囲気を壊さないように、って言う事なのかな?いつもの高月先生の文体とちょっと違ってて、そこはかとなくお耽美な空気感の漂う、そんな1冊でした。

ネタバレ含んでいます。ご注意ください。




主人公は行彦。
見目麗しく、そして優秀だった彼は名門高校に進学する予定だった。が、そんなさなかに家業が傾き、結果、家族を養うために本家である牧野家に奉公に行かざるを得なくなった。

そこで彼は牧野家の家長に目を掛けられ、孫息子である光太郎の目付け役となった。そんな光太郎についていく形で、行彦は今現在、地方の旧制高校に光太郎と通っている。

明るく朗らかで多大な存在感を放つ光太郎は周囲の学友たちから一目置かれる存在であるが、彼はたびたび遊里へと出かけてしまう。許婚もいる光太郎が女性のもとに通うのはよろしくないと、行彦は口を酸っぱくして光太郎を諭すが―。



序盤から行彦の光太郎への想いが読み取れるんです。特定の女性の元に通い詰める光太郎の姿に胸を痛めるシーンには読んでいて切なくなります。けれど、その一方で、光太郎が愛しているのは行彦だ、というのも透けて見えてくる。

が、もちろんすんなりハピエン、とはならず、二人の想いが成就するのか否かを追う展開です。二人の恋路の行方を阻む障害がいくつか登場しますが、その最たるものが、「身分差」。

大正時代。
本家の嫡男と、彼に仕える目付け役の恋。
旧制高校が舞台。
そして、男同士という壁。

この作品の持つバックボーンが存分に生かされていて、そこにプラスされるのが耽美調で紡がれていく文章。んー、お好きな方にはたまらない展開かと思われます。

が、うん。
なんて言うのかな、ちょっとくどいっていうのかな。

行彦の覚悟が決まるか否かがストーリーのキモなのですが、バッサリ言ってしまうと、そこに行きつくまでが長い…!一つ壁を超えたらまた違う障害が立ちはだかる。彼の恩人と言って良いでしょう、牧野家の家長であり、光太郎の祖父である宗之さんへの恩義の思いとか、そして光太郎の将来を慮るが故の葛藤は、理解できるもののとにかくひたすらぐるぐるしています。

けれど、行彦のぐるぐるとした葛藤以外は、非常にほのぼの。
行彦に好意的な人たちばかりなので痛い展開にはなりません。最後の宗之さんの男気にも惚れ惚れします。

光太郎が遊里に通うことに嫉妬心を抱いた行彦が、行かせまいと(文字通り)身体を張るシーンが序盤からありますしエロ度は若干高め。けれど、そこに秘めた行彦の切ない恋心がきちんと描かれていますので、エロに特化した内容では決してなく、エロさと切なさのバランスが非常に素晴らしかった。

個人的にはもう一波乱あってくれた方が面白いというか、あっさり進む二人の想いにちょっと肩透かしを食らった感は感じましたが、その辺りは完全に好みの問題かと思われます。痛い展開が苦手とか、受けちゃんが酷い目に遭うのは好きじゃない、という方にはお勧めな作品かと思われます。

7

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