【電子限定おまけ付き】【イラスト付き】
初読みの作家さまですが、あらすじと、テクノサマタさんの描かれた表紙につられて購入。
ヤバい。
薄幸・健気受け大好物のワタクシにドンピシャな、萌えツボ刺激されまくりの作品でした。萌え作品なのに何がヤバいかっていうと、これが上下巻ものだということ。えー、ここで「次巻へ続く!」なの?
下巻の発売が待ちきれない…!
ということでレビューを。ネタバレ含んでいます。ご注意ください。
主人公は17歳の創。
両親が離婚し、母親に引き取られた青年。母親の恋人の男性と母親の三人で暮らしていたが、母親が急逝してしまう。
母親の恋人は母がいなければただの他人。
自分と母親を捨てて若い女のもとへと行ってしまった父親も、創を引き取ってはくれなかった。
金銭的な理由で高校に通えなくなった彼は高校を中退し、昼間は病院の清掃、夜はコンビニバイトを掛け持ちしている。
が、何より、彼には「帰る家」がなかった。
母と母の恋人の三人で暮らしていたマンションの屋上に寝袋を持ち込んで、固いコンクリの上で、どんな天気であってもそこで寝る。
若干17歳。普通なら親に甘え、金銭的な心配をすることもなく友だちと楽しく過ごしているであろう創が、とにかく可哀想で思わず落涙しそうになりながら読み始めました。
が、そんな創に手を差し伸べてくれる人物が二人現れます。
一人は母親が倒れたときに運ばれた救外で診てくれた外科医の瀬越。
もう一人はICUで診てくれた麻酔科医の高野。
食べ盛りの男の子であるはずの創がいつも粗末な昼食を食べていること、痩せていること、その年でバイトに明け暮れていること―。
「心配している」という風を前面に出すことなく、創を気遣ってくれる二人の男性の登場に少し安心するのですが。
いやいや、待てよ。
これって上下巻ものだよね。
なら、薄幸健気少年がこの二人の大人たちに愛され幸せになるっていう、そんな単純な話じゃないんじゃない?
と思ったわけですよ。
で、まあ、その通りなんですね。
創は病院の清掃、夜のコンビニバイト、と一生懸命働いていますが、なぜか報われない。無垢すぎる性格故に、どうやら人の悪事を被せられてるんでは…?と思う描写も時々登場します。
そして、そのバイトでだけでは家を借りられるほどの金額は貯められない。そこで彼は、ウリもしています。ウリと言っても口での奉仕くらいなのですが、彼にウリを斡旋している大学生とか、創を気に入って買っている中年男性とか、もう波乱の予感しかしない。
それでも創は、生きていくしかない。
そんな創に、瀬越、高野の2人が手を差し伸べる。
明るく気さくな瀬越。
寡黙で、けれど温かな手を持つ高野。
創は高野に恋心を抱いていますが、もしかしてこれどっちを選ぶの?的なお話なのか、はたまた3Pものとか?
などという不埒な妄想をしながら読み進めたのですが。
あらあら、えー。
そういう展開?
どこまでも、果てしなく、創という少年が薄幸です。
創が貧乏くじを引く、その理由もほんのりと描かれています。
一生懸命で、自分の急所を、無防備にさらけ出してるからかな。
だから、そんな創を傷つけたくなる。
そんな人がいるのかも。
一生懸命頑張っているから応援したくなる。そう思うのが「普通」だと思うけれど、自分が持っていない光を持つ人を、あえて傷つけたくなる。そんな人もいるのかもしれないな、と。
そして、素晴らしいなと思ったのはタイトルです。
「小舟」っていうのは、創の状況をあらわしているのかな、と思いました。
帰る場所を失った創が、星を見ながら眠りにつく。
彼が乗る「小舟」は、小さいけれど、ぼろいけれど、彼の唯一の場所だった。創の現状を端的に表わしてるっていうのかな。
序盤から最後まで、創はかなり薄幸です。
一生懸命で、頑張り屋で、でも報われない。
薄幸健気受けさんが好きなそこの腐姐さま、もう、萌えツボ刺激されまくること請け合いです。
でも、そんな彼に、幸せになってほしい。
そう願いつつ、下巻の発売を正座してお待ちしています。
少し生き辛い思いをしている者同士が出会って惹かれあって居場所を見つけていく物語でした。
17歳の創は母親を亡くし父親から疎まれ放置されながらも
誰も恨むことなく一人で頑張って生きていこうとすると健気な子です。
けれど大人の弱さや身勝手や心無い扱いのせいで傷つけらることばかり。
それなのに相手の不機嫌や怒りが自分の至らなさのせいと自分を責めてしまうところが胸が痛いです。
そんな不憫な境遇の中でも精一杯生きようとしている少年に気が付いて見守る若い医師2人。
麻酔科医高田は過去の結婚と別離に心に傷を持つ。
元嫁からの仕打ちを思えばトラウマものでしょうに、自分の駄目さを後悔し相手の幸せを願える優しすぎる先生です。
外科医の瀬越は院内の人間関係に疲れ心折れそうな日々を送る中で、高田に向ける創のキラキラした視線を見て癒されるところで思わず「わかるわー」と言いたくなります。
日々の生活の中で見つける小さな癒しですね。
健気な少年 創くんが幸せになるまではまだ遠そうですが下巻が楽しみです。
みかな先生のサイトの頃から「これを紙本で読みたい!」と、切実に思っていました。何度も後戻りするので。
創ちゃん。不憫。もうちょっと上手く生きていけないのか?と、何度も思うのだけど。母親は多分、生きるのに必死だった。父親は我が子の扱いが酷い。だから自己肯定感が低すぎて。なんでこんな方向に行ってしまうのか?と、何度も思った。
高野先生がしっかり愛してあげられるか・・・と、思っていたら、伏兵?の瀬越先生が・・・あれ?これ、まずいんじゃないの!?と、ハラハラしながら下巻に続く。いやその、話は知ってても、何度読んでもハラハラして最後まで読まないと気が済まない!即、下巻へ
17歳、高校中退。親の離婚、再婚前の親の突然の他界。本来ならまだ大人に庇護される年齢なのに彼を守ってくれるものが何もない。そんな重くて苦しいお話です。
創ちゃんは自分が優しくてキレイな心の持ち主だということを知らないんです。だから他人と比べたり妬んだり、恨んだりをしない。自分の境遇や周りの大人を恨んで非行に走ってもおかしくない状況なのに。それって創ちゃんがめちゃくちゃ強い子だからじゃないかな?と読んでいて思いました。
自分には守ってくれる親や仕事やお金がなにもないのに、それでも落ち込んでいる人には自分のすべてを捧げようとしてしまう…。それは創ちゃんの無知によるところも大きいのですが…。
そしてそんな創ちゃんを取り巻く大きな存在の高野先生と瀬越先生。二人はまるで北風と太陽のような存在。側にいるだけで温かい気持ちになる高野先生。優しい態度ではあるけど何か自分本位の優しさのような瀬越先生。瀬越先生の優しさも間違いではないし、きっとそれで救われる人もいるんだろうけど…。
でも最後に瀬越先生との関係が変わるような出来事があって…というところで上巻が終わってしまうので、速やかに下巻にいかないと苦しくておかしくなりそうです。
創ちゃんの全身から放たれる優しさに押し潰されそうになりながらも、高野先生の言葉を胸に自分を小舟に乗った旅人のように一日一日を乗り越えていく強さに勇気をもらえます。