• 電子書籍【PR】
  • 紙書籍【PR】

表題作沈まぬ夜の小舟(下)

瀬越利哉
外科医
相澤創
17歳,高校を中退しバイトを掛け持ちする青年

同時収録作品沈まぬ夜の小舟(下)

高野慧一
麻酔科医
相澤創
17歳,バイトを掛け持ちする青年

その他の収録作品

  • 灯火
  • lamplight
  • 野の花
  • たったひとり
  • あとがき

あらすじ

ひとりで生きるために己の体すら売ってきた。明日が見えない夜にも、遠くの星に憧れるように高野先生を好きだと思うと頑張ることができた。けれど、心身を曇らせる行為とそんな自分を密かに温めてくれる想い、そのどちらも隠そうと嘘を重ね続け――あろうことか、仕事のトラブルで憔悴する瀬越先生へ抗えず体を差し出していた創。本当はとても優しい、今は弱り切ったひとにひどいことをさせて苦しめている。苦しんでほしくない。罪の意識ではち切れそうになった創は同時に、自分は高野先生に触れたい、触れてほしいのだと気づいてしまった。寄せては返す波のように止め処ない事態と感情は、創の痩せっぽちな体には収まらず溢れて……。

作品情報

作品名
沈まぬ夜の小舟(下)
著者
中庭みかな 
イラスト
テクノサマタ 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
発売日
電子発売日
ISBN
9784344848757
4.5

(63)

(46)

萌々

(11)

(2)

中立

(0)

趣味じゃない

(4)

レビュー数
11
得点
280
評価数
63
平均
4.5 / 5
神率
73%

レビュー投稿数11

王道のシンデレラストーリーではあるが

『沈まぬ夜の小舟』の下巻。続きものなので前作未読だと理解できません。上巻から読まれることをお勧めします。

『沈まぬ夜の小舟』の上巻がめちゃめちゃドツボで。下巻の発売日を心待ちにしていました。上巻含めてのネタバレがあります。ご注意ください。





創がウリをしていることに気づいてしまったこと。
そして、仕事上でトラブルを抱えてしまったこと。

いくつかの誤解とトラブル、そしてすれ違いが重なったことで、創を手酷く抱いてしまった瀬越はー。

というところで終わっていた上巻。下巻はぎこちない空気感を纏わせる瀬越と創の描写からスタートします。

瀬越に負い目に感じてほしくないと願う創の行動は、さらに二人の関係を悪化させることになっていく。そして、高野への想いも断ち切ることを決意した創がとった行動は―。

母亡き後、家を出ていった父親にも頼ることができず17歳という少年が少しずつ追い込まれていく。そんな創という少年の感情、環境、そういったものが中庭さんの圧倒的な文章力で描かれ、もう読んでいて涙がこらえられませんでした。

お金も、家も、頼る場所もない創が、最後に頼ったのが創にウリを斡旋していたナルミ。ナルミを通して再会した東とのやり取りにハラハラが止まらない。けれど、そんな創を助けてくれたのは、またしても高野先生。

創が生きていくことに疲れ果て、そして彼が望んだ「冬眠」。
良い言葉だなあ、と思いました。
寝て、春になったら起きて。辛いことがあったら逃げたっていい。そんな、中庭先生からのエールのように感じました。

身体も、そして心も限界を迎えていた創。
そんな彼を丸ごと受け止め、助けてくれる高野先生の存在に、読者もまた、救われる。

で、今作品には攻めさんが二人います。
創を買っていた東はちょっと置いておいて、高野先生と、そして瀬越先生。
創は高野先生が好きで、でも瀬越のことも放っておけない。この二人の男と、創の関係はどうなるのか。そこがBLとしての軸として描かれていきます。

瀬越という男は、なんて言うんですかね。
挫折知らず?なのかな。
チート感がある。
そんな彼が仕事上でトラブったことは、おそらく彼のメンタルをかなり削ったのだろうと推測できるのですが、それでも彼は対外的に仮面をつけることが上手な男性なんだろうなと感じました。

素の自分を見せることを良しとせず、常にパーフェクトな自分を見せたい。

が、そんな瀬越が、唯一仮面を身に着けることができなくなるのが、創という男の子だったのではないかと、そう感じました。愛していたのだと。けれど、一つ目のボタンを掛け違えてしまった。そのことを一番理解し、後悔していたのもまた、瀬越自身だったのではないかと。

彼救済のスピンオフとか書いてほしいなあ…。
創を愛しているからこそ身を引いた、彼の深く、不器用な愛情にめちゃめちゃ萌えました。

高野はねえ、もうパーフェクトな攻めさんでしたね。
押しつけがましくなく、創を包み込む包容力にもう完敗。大人の余裕と、思慮深さを兼ね備える、これぞ理想と言える攻めさんでした。

東、そしてナルミの存在。
創を捨てた父親とのその後。
高野と瀬越と、創の関係。

細部まできちんと描かれていたのも良かった。
ナルミが不思議すぎて、彼のお話も書いてほしいです。彼が創の入院しているところにお見舞いにやってくるシーンがあるのですが、そういったところからもナルミはいろいろなところに情報源がある良いところのボンボンな気がしますが、その謎ときを読んでみたいです。

薄幸少年が、スパダリに愛され幸せを手に入れる。
王道と言えるシンデレラストーリーではありますが、どこをどう切り取っても文句のつけようのない萌えの詰まった作品でした。

14

名前に込められた意味

(上下続けての感想になります)
複雑な家庭環境の為母を失った後17歳で帰る家もなくバイトをしながら時には身を売りながら暮らす17歳の創
彼は屋上で寝袋に包まれながら眠る時真っ暗な夜空を見ながらその瞬間に
痛いことも辛いことも寝てる間に終りますからね
惹かれている麻酔科医高野の言葉を思い出しながら眠る

正直下巻の途中までかなり読むのが非常に辛い
漂う海は自分の流した涙かなと思うくらい辛いです
その辛さは創に降りかかる境遇よりも
どんなに辛いことも自分のせいだと創が思っていることだと思う
自分の行い
自分の無意識が呼び起こし引き寄せ起こしたことだから
自分が泣く権利はないし
助けを求めてはいけない
大人はその辛いことを全部自分でクリアしているんだから
1人で生きて行かなきゃいけない自分は大人にならなければいけない
と懸命に1日1日を生きている
このことがもう心を裂きたくなるくらい切ない
目を逸らさずに懸命に生きる創を見守るしかないことが切ないと思いながら読むしかなかった

この物語のポイントとして底辺にいながらも健気に生きる創を見守る男が二人いることだろう(本当はもう一人見守ってる男はいたと思うが)
創が惹かれている麻酔科医高野と高野の後輩の外科医の瀬越
二人だけは人の目にうつらないように小さく小さくなっている創を見つけ見つめている
創が心に傷を負った時に気がついて
それぞれの方法で
それぞれができる方法で
創のそばにいてくれていた
だから創が二人に心を寄せるのはごく自然だと思う
創は高野には明らかに惹かれているが自分を気にかけて助けてくれる瀬越にも優しい大人の人として心を寄せている
瀬越は高野への創の気持ちをわかっている上で創を気にかけ好ましく思っていた
暗い海で漂うだけの創の船の2本のオールのように高野と瀬越は創に寄り添っていていたが
瀬越が創にした事でオールは高野一人の手に渡ったのかもしれない

心のどこかで瀬越と創が結ばれてもいい気がしていたので少し残念ではあったけど
あの事である意味瀬越と創はひとときでも同じ船に乗ったのだから
魂のどこかで結ばれたのかもしれない

最後この二人の存在と創の名前の意味のリンクに気がついた時
名前の意味が物語と二人の男と重なって驚き震えてしまった

とにかく下巻の途中までかなり辛いが
健気に生きる創がどう生きるのか寄り添えて読めてよかったと思う

10

小舟で夜に浮かぶ

良かったです。目新しさというものはあまり無いかもしれないけど、じわじわ浸ることが出来て沁みましたので、神にしました。じわっとくるタイプのお話が好きな方でしたら、めちゃおススメしたいです。上下巻の下巻本編270P弱+番外編4編。

瀬越と寝てしまった創。彼の心の負担にならないようにとお金をもらい、高野の家へ戻るけれども、だんだん疲れてきて、ナルミの申し出に乗ってしまい・・と続きます。

攻め受け以外の登場人物は
瀬越(彼にも救済を)、ナルミ(創を食い物にしている悪党)、東(創に執着するリーマン)、番外編で攻めの両親+わんこ。両親がとてもとても素敵。ほんとに良かった。

++好きな所

心もとなく寝袋で野宿している子の様子が痛々しくて、とても沁みて。本当に夜空に寝袋という小舟で頼りなく浮かんでそうで、辛かった。本人はなにも悪いことをしていないに、ちょっとしたことから、こんな風に社会から切り離されていくのかと思うと、心が痛くてしょうがなかったでした。刺されるとか酷い扱いを受けるとか無茶苦茶な内容なのではなく、本当にすぐ側に現実でありそうな状況だったからコワイです。

そんな子がギリギリのところで救われ、なんとか二人で落ち着きどころを見つけてくれたので、安堵感がとても大きかったのです。熊さんのような攻めにようやく抱き留められ、二人で暮らしていく方向へゆっくりゆっくり進んでいってくれるし、瀬越もなんとか新しい方向へ向かうようでしたので、本当に良かったでした。

攻め受けのキャラがめちゃくちゃ好き、惚れるというものではなく、うっかりするとすぐ身近にありそうな事態を、三人の関係でじっくり静かにあぶりだすように書いていただいたから良かったのかもしれません。

めちゃくちゃゲロ甘とか笑うとかというお話ではないので、できればメンタルは健康な時に読んだ方がよいのではと思います。じっくりした救済話がお好きでしたら是非是非。

8

幸せになってくれてありがとう…

下巻も途中まで辛い展開が続いて、まだ続くのかこの苦しみは…という気持ちでした。
早く高野に助けを乞えばいいのに、と何度も思いました。
高野だって創に何らかの気持ち、少なくとも安らぎを感じているのは確かだったので、状況を話せば必ず助けてもらえるのに…ともどかしくて堪りませんでした。

瀬越には酷いことをされたり言われたりしましたが、創の気持ちに共感していたからか、瀬越の隠れた気持ちに気付いていたからか、不思議憎いとは思えませんでした。

高野は人間が出来過ぎでは?って感じだったかなぁ。
あまり感情を表に出さないタイプだという事は分かってましたが、創が瀬越にされていた事を知っても感情の動きが分かり辛かったです。
大人だなぁとは思いましたが、嫉妬とか独占欲とかメラメラさせてる高野も見たかったなと思いました。

創が幸せになってくれて本当に良かった…。
もっともっと末長く幸せでいて欲しい、切に願ってます。

レビューを書いて気づいたのですが、after storyがあるんですね!
また創と高野のお話が読める♪って嬉しくなりました。

6

たどりついた幸せに感動しました

最後まで読んで、ああよかったぁと言いたくなる物語でした。

上巻に続く完結編です。

けなげに頑張る少年 創くんを癒しにしていた瀬越先生が、創の恋の成就にひと肌脱ぐ少々お節介だけどやさしいお兄さんという位置にいたならいい人で終わったのに、自分がどん底に陥った時に側にいた優しくて甘やかしてくれる天使の創くんに縋り傷つけてしまった行為は許しがたいことです。
それでも、創は逃げずに受け止め立ち直れるように願うようところがいい子過ぎて涙が溢れます。

高田の心情が本編ではほとんど描かれていないので創に対する想いの変化や仕出かした瀬越への感情が分からずじまいでしたが、本編終了後の短編で出会いの印象や終盤の距離を置こうとした心の変遷がわかったのはよかったです。

瀬越も幸せになってね、と創と同じように背中を見送りたい気分で本を閉じました。

5

この作品が収納されている本棚

ちるちる評価ランキング(小説)一覧を見る>>

PAGE TOP