イラスト入り
今回は敏腕ミキサーと新人声優、人気声優と高校生のお話です。
本カプはオメガの新人声優の受様の恋の顛末、
他カプはアルファの人気声優である攻様の恋の顛末、
本カプの受様と他カプの攻様が共演する後日談を収録。
巻頭作をご紹介します♪
この世界には男女という第一の性の他に
アルファ、ベータ、オメガという第二の性があります。
大多数は標準的なヒューマンのベータですが
アルファは優れた才能を持ち
そのカリスマ性で高い社会的地位に就く事が多く
オメガは発情期が有り男女ともに
妊娠することができる生殖活動に秀でています。
受様は成人済みですが
遺伝子異常で第二の性が定まらない"未分化"と
診断されています。
未分化は難病を発症させるリスクが高く
医師は医療で強制的な分化を勧められますが
受様は決断できずにいます。
そんな受様は養成所をでで
事務所に正式所属した新人声優です。
今日は初めて名前の出る役をもらえた
ファンタジーアニメの収録でスタジオ入りしています。
受様の役は主人公をサポートするマスコットキャラで
コミカルなシーンが多いのですが、
今日の収録は主人公とのシリアスシーンで
ダメ出しばかりが続いていました。
主役である先輩女性声優に励まされ
謎の伯爵を演じるアルファ男性声優に
「手本をみせてやる」と演じられても
受様にそこまでの能力はありません。
偉大な先輩の圧力に困る受様を救ってくれたのは
音声の録音調整をしているミキサーでした。
彼こそが今回の攻様になります♪
攻様は室内仕事で肥満体系の人が多い中、
細身で引き締まった身体ながら重いマイクを軽々と運び
仕事も出来る事から女性声優達に人気があります。
攻様は受様の為にマイクを調整し、
「何度だって全部録音する」「思い切って演じると言い」
と録音助手の立場から懸命に励そうとしてくれるのです。
この日の収録で受様はアニメのアフレコは
多くの人の磁力で成り立っているのだと改めて認識し
攻様に作業を見せて欲しいと頼むのですが・・・
雑誌掲載された2組のカプの恋物語に
書き下ろし作をプラスしての書籍化になります♪
物語としては新人声優として頑張る受様が
声優達の演技をより際立たせる仕事を担う攻様に
憧れて惹かれていくという鉄板な恋バナですが
声フェチで仕事には鬼厳しい攻様はじめ
アルファフェロモンで絶対的な声を放つアルファ声優、
オメガの声優をプロモーションしたいマネージャー
と受様の周りの人たちに一癖あり
アルファの優位性、オメガフェロモンの誘惑性、
運命の番設定等のオメガバーズの基本を活かしつつ
独自のベータとアルファ、オメガの"未分化"設定もあり
2人が恋仲になるまでハラハラ&ドキドキ
とっても楽しく読ませて頂きました (^-^)v
他カプも良かったですが
書き下ろしの本カプの受様と他カプの攻様が
BLで共演するお話で恋人になった2人の変化が
思っていない方向でたいへん面白かったです。
初読み作家さんでした。書籍化されたのはお初かも?雑誌に連載された2作(各々別カップル)+書き下ろしで、攻め受けいずれかが声優さんというお話になっていました。声優さんたちのお仕事話は面白かったのですが、攻め受けのキャラに今一つ萌えあがらなかったので中立より萌にしました。声優さんがお好きな方でしたら良いかも。
++以下 よりネタバレ
1.トランススペックラブ
永久井駿也(ミキサー)×白岩壱太(新人声優さん)。
アルファ、オメガ、ベータやフェロモン、番になる等の設定は王道、
オメガやアルファへの未分化というのが少しユニークか。
攻めは強気押し気味、そんなに言葉多くなく、the仕事人という印象。
ミキサーというお仕事のことが記載あり、面白かったです。
受けはお仕事頑張ろうとしている新人声優さん、オメガかベータか
未分化なのではっきりしないという役どころ。アルファの先輩声優田子さんが
ちょっかい出してくる という感じです。
攻めの俺様っぽい感じは好きなんですが、めっちゃ入れ込むとか萌えあがる
というのには少し短くて、ちょっと足りなかったのかも。文章は2段組で
ライトな感じです。
2.イノセントアレンジドマリッジ
超人気声優(ぜったいイケボ)三苫佑史×オメガに未分化な高校生藤代理央。
アルファで、オメガのストーカー等から迫られ困っている三苫が、オメガと
番になっちゃえばいいじゃん!と思いついて、紹介もらった理央とお見合いする
というお話。理央は経済的に困窮しているからwinwinになるじゃん!という
予定だったんだけど、というお話。
三苫は脳内で自分の推し声優さんの声に変換されて、うっとり・・・
理央は高校生らしい初々しい感じで良かったです。出会って事件あって
くっついてという感じなので、盛り上がりは少しちょっと足りなかったですが
自分の推しパワーで好感度は上がってます。
3.壱太BLる
1作目の受けが2作目の攻めとBL話のアフレコをやるってお話。
1作目の攻めは受けの声が大好きすぎて、コネを最大限活用して
そのアフレコ現場に押し掛けて、好みの声を録音したりしています。
1作目の攻めのフェチ度合いと、2作目攻めのジェントルマンっぽいところが
良かったでした!
2作目攻めは好きだし1作目攻めのフェチなところは面白いですし、声優さんの現場雰囲気は記載が楽しかったです。文章としてはライトなので読みやすいんじゃないかなと思う一冊でした。
初読み作家さまなのも当たり前で、こちらは雑誌の新人賞で期待賞を受賞された作品が、雑誌掲載を経て書籍化されたようです。
だからなのか文章の拙さと、読み辛さがありました。言葉の順序が逆になったり表現の未熟さは度々あって、頭の中で補完してきっとこういうことを言いたいのだろうと想像しながら読みました。
お話自体は面白くて文章にもスピード感があり、オメガバの新しい側面を見せてくれたように思います。
声優業界には疎いのですがこうやって声優になる道があって、声優事務所にはこうして台本が届くのかとかお仕事BLとしても読ませる力がありました。
ただ、壱太の先輩アルファ声優がしたことはハラスメントだし、理央のいる施設を卒業した先輩オメガがした事は犯罪だと思うんですよね。
相手が同じ事務所の人気アルファ声優だから、または人気声優の三苫がオメガのしでかした事に巻き込まれたから大事にしなかったのだと思いますが、その辺りが中途半端に終わってたのが残念でした。また犯罪に加担した三苫のマネがそのままだったのもモヤりました。
一冊に表題作の「新人声優のオメガな初恋 ートランススペックラヴー」と「イノセントアレンジジマリッジ」を一冊にした弊害だと思います。
どちらかをじっくり書き切って、もうひとつはスピンオフで出すべきだったと思います。
書き下ろしの「壱太BLる」は、雑誌掲載作と違ってかなり文章が読み易くて面白いし、レベルアップしていたと思いました。作家さまが努力して進化した結果だと思います。短編だったのが勿体なかったです。
それから新人作家さまを育てる担当者さまに頑張って欲しいと思いました。
「潤んだ紫の"眼球"が永久井を映しだす。」という文章ですが、眼球が紫なら人ではなくなってしまうので"虹彩"が正しいのではと思いました。
それと「"鼻頭"からこめかみまで筆で描いたような眉がきりっと上がっている。」という文章なのですが、"鼻頭"って鼻の尖端だと思うんです。
だから位置的におかしいのではと、読みながら大きく引っ掛かった箇所がこの二つでした。