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二巻目は弓目線になるので、一巻目でモヤモヤしていた部分がクリアになってきました。
まだ恋愛と気付いていないけど、敏夫のことがとても気になり始めています。
ただ、それは家を出た兄と比較されることへの対抗心からではありますが。
受験の最中、温泉へ行く敏夫と弓。
敏夫は弓を意識してしまい、一緒にお風呂に入れず一人で抜くシーン。
その後無神経な弓の敏夫に対する肉体に関する発言。
この弓の無神経さが、敏夫には辛いんだろうなと思わせる場面でした。
この温泉行きで風邪をひき、受験に失敗する弓。
敏夫と離れたくなくて、浪人して一人暮らしを始める。
敏夫は新しい生活で新しい人間関係を築きつつあるのに、弓は敏夫にこだわったまま何もできない。
弓は田舎にとらわれていたのではなくて、兄を通して敏夫に執着していたのだろうか。
兄の角が敏夫に向って
「あいつはブラコンだから甘えられる人間にとりつくんだよ」
と言っている。何か過去があるのかと思わせるセリフだった。
角と敏夫がまだ会っていると言って怒る弓。
角の家出は家族承認だったと、自分だけが知らなかったのだと知り、自分の居場所はないと泣く弓。
それを放っておけない敏夫、意を決して結ばれるかと思いきや、がりがりにやせた弓の体を見て引く敏夫。
やっと繋がると思った二人の心がまた離れて、、、
二人とも、自分自身の心の螺旋にとらわれて、一向に歩み寄ることができない。
表紙では弓が裸を制服で隠して、裏表紙にいる敏夫を誘っているようです。
そのくらい、心を裸にして当たればいいのにとさえ思わせるもどかしさです。
しかし、この人間関係と心の移り変わりの描写がとても切ないです。
口絵カラーが凄く好きです、ゾクゾクします。
今はデジタルで色んなタッチが出せるので画材は分からないけどイメージで上げるなら不透明水彩絵の具やアクリル絵の具を入り混ぜた感じで(あくまで画材イメージ)緑色の使い方が綺麗。
引っ掻いた様な線とか多分デジタルかなあとも思うんだけどその引っ掻いた感が好き。
カナ子さんの絵柄はホント好きだなあ。
引っ掻いたといえば、本編内でもトーンのちょい粗めの削り方も質感的で好きなのですな、綺麗に綺麗にひたすら綺麗という方向じゃなくてカナ子さんみたいな方向性の絵柄の方が好みです。
今回は弓が結構頑張ります。
時折、見せる強い視線は敏夫が言っていたあの弓を射るみたいな目。
その頑張りがちょっと空回っていたり、何か一つを見てると周りが少し見えなくなっている感じが良いのです。
兄に感じていた弓の想いは何となくこの巻で少し伝わってくるけど、兄の弓への想いは分からない、でもその分からないとこがいいのだー。
後半、弓が大学に落ちて予備校に通うになってからもまた兄のシーンが有りますがやはり兄はよく分からない、この人は分からない所が良いんだと思う訳ですよ。
「月」
巻末のこの話は単独としてのバランスが凄く良い回。表紙からしてグワッと来ます。
この2人がどうなるのか続き続きーーって気分に。
カバー下にオマケマンガあり、弓らしいです。
敏夫と弓の二人は共に通った高校を卒業し、そして家を離れての新生活が始まります。
近所には住んでいるものの、違う生活を送る二人。
生活がすれ違う以上に、気持ちがすれ違って行く様が描かれている巻。
強く弓を恋する敏夫、今までと変わってしまった敏夫との関係のことで気持ちが一杯の弓。
お坊ちゃまの弓は実際の独り暮らしにも四苦八苦し、
出口のない状況に悶々としながらどんどん痩せていく。
兄と比べて「出来の悪い子」という自身への呪縛、自分の敏夫への気持ちが分からず空回りする弓と
変な思い込みで素直な思いを告げられない敏夫のすれ違い。
焦れったくて切ない。
視点が弓に移ったせいか、1巻目とは少しテイストが違う印象。
重くて痛みを伴う感情が、独特の絵と相まって不思議な感覚で描かれています。
表紙と口絵のカラーページの弓が出色。
お互いが勘違いしてすれ違うこの巻は、焦れったくていらいらします。
自分の気持ちにも気づいていない弓と、勝手な思い込みで角を利用する敏夫に、ひたすら苛立ちを覚えます。
露天風呂での弓の無神経な発言だとかもう!
敏夫も敏夫だ。やせ細った弓の体を見て、引く敏夫のシーンには胸が苦しくなりました。
だからさーそうじゃないんだってばー!と二人それぞれにほんとうのことを教えたいいいい!
続き物の間の1冊としては、ハイクラスな焦れ焦れです。
前作「三村家の息子」の続編。
敏夫の目線で進んだ前作に対して、今回は弓視点となる。
兄に強烈なコンプレックスがあるが故に、親友の敏夫とホモの兄がただならぬ関係だなんて、絶対に認められない!という、初めは恐らくそういった理由から、弓は敏夫に目がいったのだと思う。
しかし読み進めていると本当にそれだけ?と問い質してやりたくなってしまう部分も多々ある。
嫉妬と依存と我儘が、弓を敏夫に執着させているのだろうか。
そのせいで愛情が曇って見えなくなっているような気が。
それだったら敏夫があまりに不憫だなと思った。
“出来の悪い子”。
この言葉が呪いのように弓の人生を縛っているような気がした。
だから全てがそれのせい。
勉強が出来なかったのも、敏夫を盗られたのも、敏夫に冷たくされるのも、それは全て自分が兄より“出来の悪い子”だったせい。
しかしこれを念仏のように唱えていれば、そこが逃げ道になるので、物事の本質は見えてこない。
自分の事を分かろうとしない人間に、人の気持ちなど分かるわけがないと思うので、弓はしばらく敏夫との関係に悩み続けることだろう。
少し可哀想だが・・・・・・しかし可哀想と言えば敏夫の方も十分にお気の毒かもしれない。
思い余って弓を抱きしめキスをするも「兄貴の代わりくらい(出来るよ)」と力なく微笑まれる。
そうじゃないだろ!と思わず言ってしまいたくなる苛立ち具合だ。
でも誰が本当に悪いのか、と問われれば私は「敏夫」と答えてしまうかもしれない。
ただ力いっぱい弓を抱き締めてやり、好きだと言ってやればいいんじゃないか・・・と。
それをしないからややこしい事になる。
でもややこしいのが人生だから、まだしばらく敏夫も弓もややこしい道を行くのかな、とも思ってしまった。
たまに角に惑わされながら( ・3・)
弓はすぐに泣く。
でもそれに同情して安易に手を伸ばしてはいけない、と敏夫は常に自分を律する。
角と爛れた関係を続ける敏夫が、弟の弓を神聖化しストイックに想い続けるとは、これまた何とも因果なことか。
続きは最近まで雑誌にて掲載されていたようだが、少々苦くても良いのでハッピーエンドになればなあと思ってしまった。
ハッキリと言えることは、自分の恋心にも気がつかない弓が誰よりも可哀相だ、という事である。