amazonの電子書籍版です
kindle unlimitedにて
ハッピーエンド主流のBLで、主人公二人がくっついたその後、死後や性的な繋がりが消えた時まで踏み込んだお話で興味深かったです。
初めは仏文学(好色文学)翻訳家で研究者の神園と、彼を慕う大学生実希也のフランスでの出会い、逢瀬と恋人になるまでがしっかり描かれます。文学に携わる二人がお互いを「良いな」と浮き足立ち、可愛いと思っているのが分かる文章と台詞がすごく良かったです。
知的で洒落ていて気さく、知らない世界を知っている歳上(30も上)の先生に惹かれる初心な実希也は恋焦がれ、恋人になって蜜月に開発されていく…ベッドシーンは甘々で、神園の丁寧で献身な愛撫と戸惑いつつ夢中になる実希也がかなり濃厚でクラクラします。
この二人の関係が濃厚に描かれていたので、悲劇な事故に「嘘だろ・・・」と思ったし、その後の彼らの行動に軽薄さを感じませんでした。
事故の為不能になった神園は、自分が認めた男を実希也に当てがい、自身が果たせない実希也の性欲を慰めてやろうとする。実希也は神園しか愛せない心とは裏腹に、開発させられた肉欲を持て余し、彼の見ている前で他の男に抱かれる事を承諾する。
この展開は理解できなくもないのですが、いきなり受けの承諾なしに3人と絡ませようとする強引さは謎でした。読者にはその内2人の正体はバレバレなのに実希也はすぐ気付かないし、作風が変わったように攻め3人のモブおじ的なキモ台詞にはトンチキさを感じてちょっと面白く若干白けてしまいました。
性と愛に狂った結末に見えた二人だったのですが、それを最終章(電子書き下ろし)の余韻が上書きしました。
実希也にとって自分の身体が感じる恍惚や欲望は全て神園に植え付けられ育てられたもので、そこに彼そのものを感じている様でした。
これはもう浮気は浮気でなく、一人の男とか人間としての在り方を超えてますよね…凄い。
悲劇があってもその後穏やかに確固たる愛を描いたお話でした。(途中双子奴隷とか変態描写はあったけど)