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読み始めてから暫くして、実に華藤えれな先生らしい作品だと思いました。先生の実体験に基づく景色や街並みの描写や美味しそうな食べ物、そしてこちらの作品でも献身的な愛を捧げる受けのエミルがとてもいじらしかったです。
お話は受けと攻めの両視点があるので、ルドヴィクが本当はエミルをどう思っているのか、彼がどうして他者と距離を取り心を通わせない努力をしているのかが分かるんです。エミルの過去も悲惨でしたがルドヴィクもとても気の毒な人生を送っていました。
だからこそルドヴィクがエミルと一緒に居ると心が安らぎ、エミルの心根を愛するルドヴィクがエミルの絶対的な存在になるのがスッと心に入って来るんです。
常に暗殺の危険のあるルドヴィクですが、更に公女が再婚相手にルドヴィクを狙って来たりと2人の恋の行方にハラハラしました。
途中でエミルはもしかして…という想像が誰の頭にも浮かぶと思います。その秘密が明らかになる時にエミルに命の危機が訪れて、更に驚くべき変化が現れるのです。
エミルの正体が明らかになった時、エミルやその周りを守るべく死を覚悟したルドヴィクに対してエミルがある行動に出ます。
これは読んでいて想像通りなのですが、種明かしされるまでワクワクして読みました。
エミルの命を大切に思い平和を願う心と、エミルによって幼い頃からの母親の死の際の呪縛から解き放たれたルドヴィクにとって、最善の結末だと思いました。
エピローグに10年後のお話があるのも良かったです。ドラマティックでファンタジー感溢れる作品でした。
不憫受が、優しい人と出会って幸せになるファンタジーだけど、
この作品の主人公も王子も、気の毒すぎる設定。
「醜いアヒルの子」が土台。
昔仔猫を助けた異形の奴隷少年は、転売されてサーカスの雑用係になっていた。
少年は、顔に痣を持つ孤児
名前もないまま使役され、火傷や傷だらけ。
動物たちと会話ができても、人間との会話は下手。
或る日、一座の移動中に発熱して、厄介払いされる。
ボロ布にくるまれ、冬の谷底に突き落とされる。
谷底で死を待つだけの時、狼と猫が見つけて王子に助けられる。
ルドヴィク王子は、敵国に人質として送られる旅の途中だった。
王子の従者になり、エミールと名付けられて色々な事を学びだす。
動物なら片目の痣は、個性を持つ模様。
でも人の場合、差別や虐めの対象になる。
そして王子も家族の愛が薄い、幸せな人ではない。
ハピエンものだけど、読んで色々考えさせられる寓話的なお話だった。
ハッピーエンドなのに、それにたどり着くまでが切なくて悲しくて苦しい…。
本音を隠した好きじゃないのやりとりは、焦ったくてもどかしかったです。
冒頭エミルが半死にさせられる状況や、エミルが過去にされてきた人間らしからぬ扱いにも怒りが湧きそうでした。
こういう不憫受けには絶大な愛で包み込む溺愛攻めがワンセットで、不憫さを中和してくれることが多いと思いますが、この作品はそれがあまりないです。
瀕死の状態だったのをルドヴィクに助けられてから、彼を好きになっていったエミル。"エミル"という名前もルドヴィクに付けてもらいましました。
ルドヴィクだって本当は好きなのに、自分の置かれた境遇から、エミルに愛してると言わないし、エミルに愛されたいとも思わない…そんなスタンスをルドヴィクはとっています。
このやりとりがしんどい…本当に楽しくない。
想い合ってるのに、ルドヴィクは自分のことを愛して欲しくないため(危険に晒したくない)、エミルに敢えて酷いことを言って突き放します。エミルのことを猫の世話係としてか見てない、自分には恋人がいるからとめっちゃ境界線を引いてきます。
エミルが男たちに騙されて陵辱されそうになったときルドヴィクが助けにくるんですが、エミルは誰かに愛されたかったし抱かれたかったから別に良かったのに。みたいなこと言っちゃったりして、完全にルドヴィクへの当てつけ発言で対抗するんですよ〜!(はぁ…)
なりゆきでエミルを抱いても、ルドヴィクは恋人を愛してます発言を重ねて本音出さないまま。それにエミルも乗っかって、ルドヴィクは誰も愛さないんだよね?それなら僕は愛してくれる人と一緒にいたいからさよなら〜みたいな。そしてルドヴィクはガーン…!
(このやりとり2回目なんだけど…)
ルドヴィクの事情は痛いほど分かります。エミルにとっての幸せを与えようとしているのも分かります。
でもそれはルドヴィクの考えであって、エミルのためになってるかと言うとそうではない。エミルもルドヴィクを試そうとしてるのか絶妙な挑発具合なんですよね。
駆け引き、駆け引き、駆け引き…です。
どちらのためにもなってない不毛なやりとりにも見えちゃって、結果傷付き合ってる状態に楽しく読んでいられませんでした。
ルドヴィクもエミルも不憫な境遇で生きてきた中で、心から愛する人に出会ったのにこんな悲しいことありません。
真意を分かっているのは飼い猫のパムパムくらい。エミルは動物の言葉が分かるので、パムパムが通訳フォローしなかったら、2人は永遠にすれ違っていたままなんだろうな。
ルドヴィクは何事にも負けない王道の溺愛執着攻めとはちょっと毛色の違うキャラでした。それがこの作品にとって重要なポイントかも知れないけど、私には痒いところに手が届かない状態でずっとムズムズしてました。
読み進める安心感が得られないのはツラいものがあります。
最後は一応ハッピーエンドですが、それでもスカッと爽快感が得られたかと言うと微妙なところ。ルドヴィクの命を狙う兄はそのままだし、モヤモヤは残りました。
不憫受けや健気受けが好きで、悲しい境遇を乗り越えて幸せになるストーリーが好きなの方には刺さる一冊かも知れません^ ^
不憫な受けのエミルと帝国の皇子のルドヴィクとのお話。
エミルという名前は、ルドヴィクが名付けました。
元々エミルはサーカスにいたのですが、その時には酷い名前で呼ばれてて胸が痛くなりました。
17歳くらいの子が「死にたい」って思う環境って…。
ルドヴィクと出会ったことによって
幸せになっていくんだろうなぁって思ったんですけど
なかなかそういう展開にはならないし
なんなら辛い展開だし、幸せとは…?と思っちゃいました。
お互いがお互いを想いあっているのに、想い合っているからこその行動がほんとに辛かったです…。
パムパムが居なかったらこの二人は結ばれることがなかった気がします。
それぐらいすれ違ってたので…。
ちゃんと最後はハッピーエンドなのですが、
そこに行きつくまでに、私は心が疲れちゃいました…。
勝手にもっと甘々を想像しちゃってたので…。