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『穢れのない人』の下巻。
上下巻の2冊ものなので上巻未読だと理解できません。
上巻のレビューでも書きましたが、今作品は読み手を選びます。
小児性愛に拒否感のある方、人を殺めるというシーンが耐えられない方、あるいは自分の意にそわない性行為に対してトラウマのある方はくれぐれもご注意ください。
さて。
上巻で一郎が服役することになった凄惨な事件の真犯人が分かりますが、これ、誰が犯人なのか下巻のあらすじに書いてあるんですよね。できれば知らずに上巻も読み始めた方がいいと思うので、ここでもなるべくぼかして書こうと思います。ただ、レビューの表現の都合上どうしてもわかってしまう表記はあります。
少し下げますので、ネタバレ厳禁な方は注意されてください。
自分を陥れた真犯人が誰だったのかを知った一郎。
そこで、彼はどうするのか、という部分は今作品のキモかと思われます。
私なら許せない。
糾弾する?
警察に言う?
詰って、責めて、怒りをぶつける?
けれど、一郎はそのすべてを赦すことにした。赦し、って難しいよね。そこで、彼の神父だった、という過去が生きてくるのは上手なストーリー展開だなと思いました。
そして、じゃあ赦された真犯人は?という部分につながっていく。
「彼」が、なぜそんなことをしたのか。
その事情を解き明かすために、「彼」の過去編へと突入しますが。
これがまたなんというか胸糞というのか。
諸悪の根源はあんたかー!という人物の登場です。どこまで読んでも希望は見えずしんどい展開が続きます。
自分の欲望のはけ口のために、子どもを飼い殺した男。
夫の罪を知っていてなお、子どもの苦しみを知っていてなお、それを己の平穏だけのために無視した母親。
そこから行きついたゴールはー。
なぜ、木場は一郎を愛したのか。
なぜ、求めたのか。
一郎の神父として、一人の人間としての懐の広さと温かさ。
それを必死で、木場は求めていたのではないだろうか。
そして、木場もまた、神父になった、その理由も。
描き下ろしは、真犯人が出所してきた後のお話。
何年経っても、信じて愛していた二人の想いは揺らぐことはなく。短いページ数しかないのですが、そこにギュッと詰まった彼らの感情が怒涛の様に流れ込んできて思わず落涙しました。
少しの描写で、過去で、仕草で表情で。
いろいろなものを読ませる手腕がとにかく素晴らしく、人によって感想は様々だろうなあと思いつつ読破しました。被害者の男の子に向ける贖罪の気持ちが生まれていて本当に良かった。彼はやっと自分を赦せるようになったんじゃないのかな。
終盤に単話が収録されています。
「仮面のなかみ」。
イケメンで人気上昇中の舞台俳優・夏希。
さぞかしモテるだろうという大方の予想を裏切り、実は彼はDT。
そんな彼に声をかけたのは、バイトとして雇っているモサモサ男子の今井くん。
なぜ未だにDTかを相談しているうちに、なぜか今井くんとイタすことになりー?
コミカル、なんですが、人の悪意とか、生まれたてのほのかな恋心、とか上手に描かれているなという感じ。今田くんがオスの顔になるシーンがヤバ!ってなりました。
なんていうんですかね。
人の悪意、裏の顔。そういう、人には見せない部分に焦点を当てている、というのか。そこをぼかさずに描いていることで、いわゆる一般的な「BL作品」とは一線を画す作品に仕上がっていると思いました。
人は一人では生きていけないのだと。
誰かが、心に寄り添ってくれる誰かが、人には必要なのだと。
間違えた時には叱咤し、けれど理解しようとしてくれる人がいることの幸せを、しみじみと感じました。
「赦し」とか「愛」は、人によって形を変える。
その難しさも、きちんと描いている作品だったように思います。
このご時世に、このバックボーンで描き切った虫飼先生に心からの拍手を送りたい。上巻でのレビューでも書きましたが、今作品はいわゆる万人受けする作品ではありません。けれどデビュー作でこのクオリティは素晴らしい。
ストーリー、キャラ、そして伏線の回収、などなど、非常に読み応えのある1冊でした。ちょっとすごい作家さまが出てきたなという感じ。次回作も楽しみに待っていようと思います。
読めない人間は一定数存在する話。BLに少女漫画的な萌えを求めて読んでいるのなら、向かないかもしれません。更に、小さい子のレ○プものが無理な人は厳しいと思います。
BLというよりも"犯罪"、特に小児性愛や幼少期の虐待についての問題提起的な作品だと思います。理由があれば犯罪が肯定されるわけではありません。しかし理由について知ることは必要な事だと感じました。私は犯罪心理的なものも好きなので、とても楽しく読めました。
ただ殺されてしまった男の子のことを思うと、こういうのって身内に被害者がいないから言えることで被害者遺族からしたらこの作品を読める私も悪魔のように見えるのかもしれないなとか色々考える作品でした。しかしそれでも犯罪の減少の為には確実に考えなければいけないことではあります。
起承転結で言うと、上巻は起までしか描かれていませんので是非上下巻で一気に読んで欲しいお話です。下巻を読むと、上官の最後の木場の激昂は自分の罪悪感から逃げたいがために来る虚勢なのだろうなと思いました。
結局父親は逃げ切っているし、罪のない男の子が殺されながらもその子は物語の背景でしかない、などモヤモヤしたものが残る話ではあると思います。ただ、読んだ後に何か考えさせられるような作品が好きな方にはおすすめの作品です。
秋鷹が木場を受け入れたことでその関係は変わり、まるで恋人同士のような日々を過ごしているふたり。
でも木場の言動には愛や執着とはまた違う"何か"が隠れているような違和感があり、噛み合わない気持ちにハラハラしていると…
木場の過去がわかってきて、15年前の事件の真相にも繋がっていくわけです。
上巻でも途中から空気感が変わっていきましたが、下巻でも仄暗い雰囲気のままゾクゾクするような場面が何度もあって。
家族の在り方や信じる気持ち、愛とは何なのか?という部分を一緒に見つめ直しながら、ふたりともが救われていくような展開にすごく惹き込まれました。
木場が犯した罪は、本当に木場"だけ"の罪だったのでしょうかね…
彼の人格を歪めた父親と見ないふりをし続けた母親。
直接手にかけた木場自身と同じくらいの重さの罪が彼らにもあったのに、裁かれるのは木場だけ。
描き下ろしの先のふたりの日々が、どうか幸せなものでありますように…。
「なんだかなぁ…」というモヤモヤした気持ちは残ったけれど、そんな後味の悪い余韻ごとこの作品の魅力だったなと感じるようなとても深いお話でした。
上下巻読んでの感想です。
それぞれの気持ちを丁寧に描かれた作品だと思います。
結局のところショタコンは神父の木場ではなくその父親のみであったことに何となく安堵。
私はショタものが超苦手で理解出来ない範疇でしたが問題なく読めました。
まあ、最近低学年児童に接する仕事をし始め、興味どころか自他共に認める子供嫌いでしたが柔らかいすべすべの肌やいとけなさ、無垢無知に惹かれる大人の気持ちも分かり始めたからかもしれません。
犯人の精液が残っているだろうになんで秋鷹に罪を被せられたのか?
木場の父親はいったいどういう社会的地位の人間なのか?
つっこむところは有りますが概ね違和感なく物語は進みます。
ずっと幼い子供のまま、幼稚な木場と無罪なのに15年刑務所にいた秋鷹。
真犯人の木場を憎むこともできず赦す秋鷹は木場の中に神を見たからです。
木場が秋鷹にがむしゃらに愛を乞うのも秋鷹に無性の愛=神を感じたからだと思います。
木場の父親や母親についても一応ペイされている状態、つまり心身が平穏で豊かな老後を送っているなどという許し難い状態ではなかったので私の中の胸くそ悪さは薄まっていました。
とはいえ父親に関しては立派な小児性愛者、もっと支払うべき人間であることは確かです。
最後の描き下ろしで、殺された子供のお墓やお墓参りで終わっていたのは今後に続く希望の光なのだと思いたいです。
上下巻のそれぞれの別作品を除いて全1巻で出してもよい程の厚さでしたが、出版社の事情なんでしょうね。
先ず、言いたいです
地雷のある方や、ある程度作品嗜好に自分型がある方などは出来たらあらすじや作品傾向を把握してから読む事をお薦めしたいです
逆に属性も幅広く雑食な方はとにかく読んだ方がいい!!と言い切ります
この作品の凄さは読んだら分かります
でも一方「しゅみじゃない」人もいるだろうし、その赦しが許しがたく気分が良くなく思う人も居そう
想う感情は人それぞれだからそう思うのも仕方ない
だけど出来たら読了後にこの作品に対して負の感情以外の何かを得られたらいいな~って思う位私には衝撃的で凄い作品でした
所々やっぱり胸クソだなって思う人や理解に苦しむ流れがなかったとは言いません
でも、それがこのお話が唯一無二であり強烈なインパクトを残した事もまた事実
重みが増すというか感情をガシガシ半強制的に揺さ振られるような感覚です
それらを超えた読了後、、、
まだ私の感情はぐゎんぐゎんしています…
うまくレビューもまとめられない
でも言わなきゃ!凄い作家さんの作品が誕生した事
そして出来たらいたずらに読むのではなく(そんな人居ないと思うんですけど…枕詞みたいな意味のいたずらだと解釈頂きたい)読後にこの作品の余韻に浸かって欲しい。。。と。
絶対に上下巻一緒に読んで欲しいです
そして合間読書ではなく「よし、読むぞ!」で向かい合って読んだ方がきっといいと思います
読む人も読む時も選ぶかも知れない
でも私はこの本に選ばれた(呼ばれた)気がしてならない…
ここまで抉ったデビュー作を描いて下さった先生と導いた編集さん、ありがとうございました