…藤次の 無知で バカで 無神経なところが好きだった

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表題作愛だなんて言わないから

榊八千代
高校生→ 弁護士
高坂藤次
高校生→工務店の内装工

同時収録作品愛だなんて知らない

榊八千代
(高校生→)弁護士
高坂藤次
(高校生→)内装工

同時収録作品愛だなんて言わないから

聖人
藤次の彼氏,バーテンダー
高坂藤次
工務店の内装工

その他の収録作品

  • 描き下ろし

あらすじ

…会いたくはなかった

藤次は恋人の聖人と順風満帆な日々を送っていた。
そんなある日、祖母の葬式で高校の親友・八千代と再会する。
顔を合わせるのは八千代の結婚式以来、二年ぶりだった。

高校時代のある出来事をきっかけに、疎遠になっていったふたり。
あの時、気づけなかった、気づいた時には遅かった、苦い記憶。
見切りをつけたはずの思いは、再会を機に渦巻いて…

作品情報

作品名
愛だなんて言わないから
著者
日暮くれ 
媒体
漫画(コミック)
出版社
大洋図書
レーベル
H&C Comics ihr HertZシリーズ
発売日
電子発売日
ISBN
9784813033691
4.1

(166)

(88)

萌々

(40)

(18)

中立

(12)

趣味じゃない

(8)

レビュー数
23
得点
666
評価数
166
平均
4.1 / 5
神率
53%

レビュー投稿数23

空回りの気持ちが切ない

八千代×藤次


高校時代の青い感情から、
ぎこちなくて不器用なまま、
大人になるまでの空回りの気持ちが、
お互いを想いながら、
逃げたくなるほど途方もない恋心・・・胸が苦しくなるほど切ない。


藤次と八千代、高校で出会って、
藤次の陽気なワンコ力が八千代に付き纏う。
だんだんと親友に抱く感情が過剰である2人だが、
八千代が告白する流れになって、
藤次が天然で無神経のゆえに振ってしまい、
2人が親友のままで、卒業して、会わなくなる。
時は流れて・・・

八千代が女性と結婚し、
藤次が聖人という恋人がいる。
三角関係の雰囲気も刺さる。

八千代の結婚式での再会の時の
親友のまま紛れ込む虚偽な感情。
お互いにそれぞれの恋しているけど、
2年後の藤次の祖母の葬式でまた再会してからの 
抑制しても現れる
一番大切なのはやっぱりお互いだという強力な本音と、
「会いたくはないくらい会いたい」という大きな気持ち。
そんな想い尽くす2人に心が乱れて疼く。

同人誌で発表された『愛だなんて知らないし』という
2人が高校を卒業した後、
八千代の結婚式で再会する単話からスタートし、
その2年後、藤次の祖母の葬式で再びに再会する本編に入っていく。
2人の視点もあって、
高校時代の数々のエピソードが交差しながら物語が進行し、
結末も完璧に締めくくられている。
2人の成長から見て、
遅すぎることなどはなく、
本気で向き合うことが素晴らしかった。

藤次、
天然でバカで、無神経すぎて不器用さを一層を拡大させる。
好きなのに、
「好き」という感情に鈍感で、
八千代の気持ちを勝手に無視して、
実はただ一番近くにいたいという純粋さがもどかしい。
未知な「男への恋」に怯えていたから、八千代を振ったのだろう。
聖人との関係で男同士の恋を味わって、
男でも恋愛ができる自分が、
さらに八千代に向き合うことを難しくさせ、逃避してしまい・・・
結局、今度こそ2人の関係を取り戻したいという健気さにグッとくる!

八千代、
孤独な状況で藤次からの安心感をもらって、
それでも藤次に振られて、
行き場のない感情を返すという行動がキュン痛で、
それは藤次が大切な存在だから不安に駆られてしまうからだと思う。
藤次が他に恋人がいるという状況でも、
もし彼を失ったら悲しむという強い想いや、
傷を気づかないふりをしながらも、
最終的に藤次に向けられる愛情は本当に尊い。

聖人、
藤次の幸せを最優先に考えて、
自分の愛だけでは藤次を満たせないことを理解し、
その決断が自己犠牲的で、
まさに「聖人(せいじん)」にふさわしい存在。
コミコミ4Pリーフレットと一緒に読むと、
彼の想いがダイレクトに伝わってくる。

愛しているのに、
伝えられない苦しさに胸をえぐる。
八千代を振ってしまって、
傷ついていて、愛に臆病になっていく藤次、
傷つけていくはずなのに、愛に強くなっていく八千代。
大人になって本心を隠してしまう2人が、
最終的にはお互いを受け入れるまでの愛の形がとってもよかった。

エロのない中で、

高校生から大人までの等身大の恋模様が、
聖人を含めて3人の心理が丁寧に描かれていて、
愛に翻弄された彼らの躊躇がリアルで胸がジーンと痛む中で、
恋愛という感情の難しさから迷走することこそが、
好きという感情の大切さを改めて感じさせ、
その3人の真の感情が鋭く突き刺さって共感し、
デビュー作とは思えないほど心が打たれる作品でした。

このままの終わり方が好きだけど、
続編を楽しみにしています。



・コミコミスタジオ限定特典4Pリーフレット
描き下ろし漫画2P:
藤次の祖母の葬式の日の聖人の思い。

・とらのあな限定特典12P小冊子(有償特典)
[カバーラフ公開]2P
描き下ろし漫画9P:
藤次と聖人が付き合っていた時のお話。

・協力書店限定漫画ペーパー:
藤次、八千代、聖人、それぞれが犬への(犬からの)反応。

18

テーマから想像したよりはあっさり

まず絵はめちゃくちゃ上手いし好みでした!
時系列を行き来する構成ですが全然無理なく読めるコマ割りだったし、心情描写も繊細で引っ掛かりなく読めました。デビュー作とは思えないレベルです。
でも、だからこそ解像度が高い分主人公2人にいまいち感情移入できず...


再会した親友二人の選択を過去回想を交えて何があったのかを描く構成なのですが、それが「こんな過去があった運命的な二人なんだな」となれずに「なのにもう一度人を傷付けるの?」と思ってしまったのは恐らく私が主人公達以上に脇キャラ達に惹かれてしまったから
誰かを傷付けた経験自体は誰にでもあると思うし、今でも引き摺ってあの時どうしたら良かったんだろうと思い悩むシーンは沢山あるとは思うんです!

でも、それ以上に同性パートナーの親族のお葬式に顔を出すまで今彼・聖人はどんな感情だったんだろうとか恐らく30代で離婚を決断したであろう奥さんのこの先だとか、そちらの方が切実なリアリティを持って胸に迫ってきてしまって...
この2人が日常の変化から何を感じ取り何を想って離れたのかを語るシーンがあるのですが(題名は寧ろこの脇キャラ達にかかってるのかな?とも思いました)肝心の主人公達が流されるままでいまいちピンと来てなさそうなのが腹立たしい。
藤次に至ってはなんか相手のこと責めてるし全く伝わってないの向こうも察しちゃったっぽいし...
思ったよりあっさりした話だと感じてしまったのは主人公側の現在の人間関係への思いやりとか葛藤が少なかったせいかなと思います。

どちらにせよこの巻は周りの成長と決断のおかげで舞台が整ったまでの段階だと思うので、続編では能動的に動いて自分でアンサーを出す主人公達が見たいです(とはいえやっぱり聖人のスピンオフの方が欲しいなあ...)

17

素晴らしい作品です

連載の時から気になっていた作品!
新年一冊目はこちらと決めておりました。

満を辞して読んで、感嘆。
想像を遥かに超える素晴らしさで、何を書けばいいのかわかりません......

まず絵柄がとても好みなのですが、冒頭からスッと引き込まれるストーリーもとにかく素晴らしいとしかいいようがありません。
ひたすら丁寧に気持ちの動きが描かれていて感情移入不可避でした。

読むか迷っている方にオススメしたいのでネタバレ無しで書きました。
ぜひ読んでいただきたい作品です!

9

愛とは、

高校時代の親友同士の再会ラブ。
…なんて、そんな風に軽く言ってしまえるほど簡単ではない恋が描かれていたこちらの作品。
でもものすごく重たいわけではなくて、"深い"お話だったなという印象でした。
それぞれの想いを知れば知るほどに、人間は表面上だけではわからない感情をたくさん持っていて
そして愛を知るということは痛みを伴うものなのだなと感じました。

八千代は藤次に想いを告げたあの日、いくら近くにいても噛み合わない気持ちがあることを知って
向き合うことから逃げて自分の恋心ごと無かったことにしようとしてしまうわけです。
もうずっと藤次以外を見ていないのに、見ることなんかできないのに。
どうして伝える努力をしないで離れる選択をしてしまったんだよ…!と、もどかしくなってしまいましたが、あの時点ではそれが八千代にとっての最善でその行動こそが愛だったのだろうな、と。

たくさん後悔をして気が遠くなるほどの時間が経っても、変わらない気持ちが自分の中にあること。
それを知ってやっと藤次に向き合うことができたのかなと思いました。
藤次もまた様々な経験の中で八千代への想いを自覚できて、ようやくふたりかスタートラインに立つことができて本当に良かったです。

でも聖人のことを考えるとものすごくやるせなくて、一番傷付いてはいけない人が大きな傷を負ったことが切なすぎました。
藤次の背中を押すような別れが本当に悲しくて、最後まで優しくて愛情深かった彼には絶対に幸せになってほしいと願わずにはいられません。

とても綺麗にまとまっていましたが、続編も決定しているとのことなので
これからの彼らが見れるのを楽しみに待ちたいと思います。

3

サブキャラクターが好きすぎて苦しい

読んでいて苦しいほどに登場人物たちの心情が深く、重たく伝わって来ます。
画力・心理描写どちらも非常に丁寧で素晴らしかったです。
どっしりとした重みのある感情の嵐に、はー…と息をついていると…こちらがデビューコミックスなんですね。
いやはやすごい。どうしようもなく読み手を感情移入させてくれる力があります。

恋愛においてのときめきや甘さではなく、苦みや過去への後悔、愛について描かれた物語です。
メインとなる2人の現在と過去が語られていきますが、この辺りの場面転換に関しては突然切り替わるのでやや読み辛さを感じました。
けれど、少しずつ読み進めていけばいくほど、彼らと彼らを取り巻く人々の想いと後悔がじわじわと重く伸し掛かってくる。
八千代の通じないと分かっていても伝えたかった想いも、その想いになぜ気付けなかったのかと悔やむ藤次の心情もすごく苦しい。

と、ここまで深く高校時代の愛について掘り下げたお話であれば、やはりメイン2人が結ばれることを願うはずなのですが…
ちょっと私は2人の今後が幸せであることを願えなかったというか、願わなかったというか、どういう感情で見届ければいいのかと複雑な気持ちでいっぱいになってしまいました。
どちらの気持ちも痛いほど伝わって来ましたし、2人だけに焦点を絞った作品だったのならきっと真逆のことを考えたでしょう。
先述の通り、彼らを取り巻く人々についても描かれていて、心理描写が丁寧かつ細やかなので脇役が脇役にならないんですよね。
どの人物も八千代と藤次を追う上で欠かせない大切な人ばかり。

うーん…早い話がどうしても肩入れしてしまいたくなるんですよ。
特に聖人。2人よりも聖人に気持ちが持って行かれて、彼らの行く末より聖人の話が読みたいと思った自分がいたというのが正直なところ。
聖人の存在を知らなかったのなら、聖人の愛を知らなければ後半の八千代と藤次に両手をあげていたと思います。
傷付く必要がない人が傷付いた上で成り立つ関係性にもやもやとし、でも2人に愛着がないわけではないし…と、こちらの評価になりました。
誰に1番魅力を感じたかによって評価が分かれる作品かもしれません。
その後の2人がどう歩んでいくのかも気になりますが、聖人が幸せになれる物語が読みたいです。絶対幸せになってほしい。

7

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