襖くろーらー
長野まゆみ先生の初期作品です。最近は青年同士のBLの様なものやミステリーが多い長野作品ですが、本作品は古きよき少年愛・耽美系の長野作品です。
三つの短編「白薇童子」「鬼茨」「蛍火夜話」が収録されています。どれも大人のお伽噺的な作品です。お伽噺が元は寝所で語られる寝物語であるならば、正統派のお伽噺といっていいのかもしれません。要は、すごくエロスでした!!
「白薇童子」
貴族の少年が父の代わりに母の敵である夜叉・白薇童子に仇討ちしようとする話。白薇童子の部下である女狐視点の物語です。ユーモアがあり、登場人物の掛け合いにはフフッとなります。
「鬼茨」
武家の少年と能楽師の子が、過失から帝の縁者・蜜法師に呼び出され酷い目に遭わされる話。残酷でありながら背徳的な色気があります。高畠華宵の描いた、緊縛された南蛮小僧の図に萌える人向けです。
「螢火夜話」
将軍家の嫡男として生まれた双子の兄弟。しかし世継ぎは二人も要らないということで、侍女の苅安は双子のうちの一人を人知れず始末するよう命じられます。ところが苅安は預かった緑児に情が湧いてしまい……。というよくある貴種流離譚と見せかけて、ラストは思わぬ展開に。
本書が発表されたのが1994年と、今ほどモラルに煩くなかった時代なのもあり、倫理道徳?なにそれ美味しいの? といわんばかりの突き抜け感。官能と無性別的な少年の美しさを極めています。なので、物語にも現実のモラルや常識を持ち込まないと気が済まない方には絶望的に合いません。現実と空想の区別をきっぱりつけられる方のみお楽しみください。