お買い得商品、セール品、中古品も随時開催中
冬の長い休暇明け、永江が登校すると、
親しい友人の訃報が飛び込んできました。
『好きだった子が死にました』
名作「トーマの心臓」を思わせるオープニングで始まった物語は、
死んだ少年の軌跡を描いて行きます。
冒頭で亡くなった少年の名は莢。
莢はクラス委員の波手と恋人です。小さい頃に虐待されていた莢は、
自分を初めて優しく抱きしめてくれた波手を、熱烈に愛します。
莢の熱烈なアプローチの末、なし崩しに関係を結んだ波手。
真っ直ぐに本能のままに波手を愛する莢と違い、波手は常識人なので。
莢を愛していながらも持て余し、血を吐くまで悩んでしまうのです。
きっかけがどうであれ、莢と波手が愛し合っているのは一目瞭然なのですが。
相手を好きだというだけで、ハッピーになれないのが辛いです。
そんな莢と波手の関係に優しい波風を立てたのは、転入生の永江です。
優しいけれど自分を甘やかさない永江にときめく莢。
莢を愛していながらも、彼から目を反らそうとする波手。
莢に恋をしても彼を強引に奪おうとはせず、
莢と波手の良き友人(理解者)であり続けた永江。
莢・波手・永江の三角関係が切なくて。
『私小説』でも絶妙な三角関係を描いた藤たまきさんですが。
この人は本当に、胸が痛くなるような切ない三角関係を描かせると上手いです。
子供のように笑ったり泣いたり、短い人生を駆け抜けた莢の姿は、
波手と永江の中で一生、生き続けることでしょう。
悲しいけれど儚くて、美しいお話でした。