12/20発売amazonの電子書籍版です
今回は駆け出しの画家と会社員のお話です。
絵を描くことにしか関心のないアルファと
攻様の才能を信じる受様の恋の顛末と後日談を収録。
この世界には身体的な特徴である男女の一次性と
性質的な特徴をもつアルファ、ベータ、オメガの二次性で
6つの性別が存在します。
受様は中学入学前の二次性別検査で
オメガ判定された男性体オメガです。
オメガは3か月に1度発情期があり
フェロモンでアルファを誘う淫らな性として
社会から蔑まれてきた歴史がありましたが
近年の男女格差撤廃の風潮とともに
オメガ差別も問題視される様になり
オメガ雇用促進法が制定される様になり
受様も大企業のオメガ枠で就職が決まります。
受様は昔から絵を見るのが好きでしたが
転職活動で不採用が続いて気持ちが落ち込んでいた時に
偶然訪れた芸術大学の学園祭てせ展示された絵を見て
号泣してしまいます。
その作者の学生こそが今回の攻様です♪
攻様は絵を描く以外に関心のない男ですが
受様とは連絡先を交換する事になります。
それでも2人の関係は知り合い程度でしたが
名家の跡取息子としての未来を求められた攻様が
経営者の道を拒んだことで支援を止められ
生活に困り果てた攻様に受様は手を差し出すのです。
受様は副業禁止なのに喫茶店バイトをし
時には攻様の求められるままに避妊具なしの性交にも応じ
攻様が加賀として羽ばたく未来を信じて支え続けます。
そんなある日
受様は移動してきた営業部のアルファ男性社員と
見つめられただけで突発的な発情を興してしまいます。
26年間で初めての経験に
受様は運命の番という都市伝説を思い浮かべますが
それ以来彼に好意を向けられるようになり・・・
絵を描くことしか眼中にない攻様と
攻様の絵が大好きな受様の現代オメガバースです♪
オメガバ設定は作家によってアレンジ自在で
最近では二次性の組み合わせや運命の番設定も
王道ではない設定がよく見られるようになりました。
本作の攻様はアルファですが
生活力がなく受様のヒモと言っても過言ではない状況で
恋仲ですらない関係性から始まるので
かなり特殊な感じがしました。
不憫受は好きですが
攻様の愛情がみえてこそであり
受様の運命の番がとてもできた男であった事も
かなり読んでいて辛かったです。
受様が他の誰かに取られるかもと思ったことで
攻様も態度を変えてはいくのですが
受様は攻様が変わる事をあまり歓迎していなかったのも
大切な人であってもその大切な人に思われる自分を
蔑ろにする展開はあまり好みではありませんでした。
ただ現代ものとしては多分ありえない事ではなく
受様を失ったことで攻様が変わっていく展開は
かなりドラマチックであり
運命の番を本能的に惹かれあう関係として
二次性に捕らわれることのないベータのように
相手への好意から生まれる想いこそを大切にするという
ロマンチックな恋物語ではあるので「萌」としました。
仁茂田もに先生、初読み作家様です。
才能ある者×その才能に心酔し、心から支えたいと願う二人のすれ違いが
なんとも切なく痛く心を打つ、現代オメガバースの物語。
途中、涙が溢れる場面がいくつかあり、切なさに胸が締め付けられました( ; ; )
言葉の足りなすぎる二人の、夜明けの物語。良かった。。大好きなお話でした。
以下、簡単なあらすじを感想を。
思いのままに書き綴っているので読みにくいかと思うのですが;
売れない絵描きでヒモ男の暁斗(α) × 暁斗を支え、昼は会社員・夜は喫茶店で働く律(Ω)。
制作に夢中になると寝食を忘れ没頭してしまう暁斗の生活を
文字通り全て支えて生きる律ですが、二人に体の関係はありつつも、
明確に恋人関係であるとは言えずー
そんな中、律の会社に異動してきたα・栗原が律の運命の番だと分かり、
律に少しずつアプローチをするようになり…
と続きます。
もーー途中から当て馬である栗原に感情移入してしまい、彼の健気なアプローチと
叶わぬ想いに、涙が溢れてきて大変でした。。
この栗原、最後の最後、二人が再会を果たす際にも大きな大きな役割を果たしてくれているのです。
ぜひぜひ、栗原が救われる物語がスピンオフで読みたい…!とこちらに要望を記しておきます…!!
そしてメインの二人。
この二人、先述したように圧倒的に言葉が足りなーーーい!!!!
うおお、もどかしい…
特に攻めの暁斗はね。
無意識のうちに抱いていた律への恋心にも気付かないなんて。
それを友人から指摘されて初めて意識するようになるところがお子ちゃまなんですが、なんでだろ、憎めない…
「好き」と一度認識してからの栗原への牽制と律の甘やかし方、
番になってからの健気さと献身が最高なんですもん。。
律についた微かな匂いを上書きするため、毎日の「いってらっしゃい」の時に
頭すりすり。
律のために一念発起して、全くしたことのなかった料理を始めて律を喜ばせようと
したり、”愛する律のために”筆を折って働きに出ようとし、実際にそう行動する。
途中まで「栗原さんにしときなよ!!」と割と本気で思っていた自分ですが、
愛を言葉では伝えられない不器用攻めのこんな健気な姿を見たら、
絆されてしまうーー。。
で、そんなふうに変化した暁斗と「絵を描く暁斗」を愛し応援し、
支えて糧になりたいと願う律の思いのすれ違いが、もう本当に切ない!!!
いや、ちょっと二人とも落ち着いて話し合えば、って思うんですが、
不器用な二人にはそれが出来ないんだよね…もーーーもどかしくて悶絶です。
このすれ違いの末に律がとった行動については、かなり好みと賛否が分かれそう。
自分も「ええええ」と思ったけれど、でも。
何よりも愛してやまない才能が、自分と番ったせいで失われようとしている、という状況になったらー
と考えると、律の行動には(感情的に納得はできなくても)理解できるところもあり。
暁斗という存在そのものを輝かせて生かしている「絵を描く」ということを、
どうしてもどうしても諦めて欲しくなかったんだなあ。。
そして、「(律を失い)絶望の淵に落とされた暁斗が描く絵を見てみたい」という
仄暗い律の欲望、これ、ゾクっとした…!
パトロンとしての律の欲が垣間見える場面、共感し理解できる気がしてしまう自分も
どうなのか…いやでも、分かる・・
そして終盤の、6年越しの二人の再会。
展開としてはなんとなく話は読めてしまうのですが、やっぱりやっぱり、
静かな感動に包まれるシーンでした。。
暁斗の描いた絵のタイトルが、シンプルながらストレートに胸を打つものなんですよね。
言葉よりも饒舌に愛を語ってくれている、一枚の絵。
本文を読んで、挿絵を見て、ぽろっと涙がこぼれました。
長い長い別離の後に見えた光に、グッと気持ちが込み上げてくる。
そんな夜明けの物語、とてもとても刺さって心に残るお話でした。
最後に、しつこいんですがもう一度だけ。
栗原さん…!お願いだから救われてー…!!と祈ってます。。
暁斗(α)×律(Ω)
切ない、切ない・・・それぞれの考え方で痛む2人の心。
想いを言葉にすればいいのに、
不器用さゆえのすれ違いが続いてしまい・・・。
大学の就職時期に出会った2人。
暁斗の絵に惹かれた律は、大学卒業後、
画家の道を家族に反対された暁斗を拾って、
絵を描き続けさせている。
古いアパートで平和に同居4年。
ヒモ以上に自立できず、お風呂すら自力で入れない暁斗を、
バイトを掛け持ちして献身的に支える律。
愛されなくてもーー無償の愛と体を注ぐという健気さが切なく揺れる。
会社で運命の番に出会い、
愛されるとわかってもーー運命の番を悲しませてまで暁斗に一途さもまた胸を打つ。
暁斗は強引で避妊すらしないひどい男。
律も読者も、暁斗の内面がわからないまま進んでいくが、
次第に変化していく律への態度や、
後半の暁斗の視点で、
不器用に「好き」を自覚し、執着や独占欲が強く、
愛情を表現しようとしても、
うまく伝わらない様子がもどかしくも愛おしい。
事故のような運命の番になってしまい、
考え方が180度違う2人。
幸せの方向が真逆で、見ているだけでいたたまれない。
律から見ると、
好きな人のために自分の全部を捨てて選んだ決断、
暁斗から見ると、
いないと生きていけないほど好きな人にされた行動、
すべてが痛切で、しんどくて・・・
私から見ると、
ある意味、律は自己満足で、
勝手に片想いだと思い込み、伝えることもせず、
好きな人のために頑張ることで浸っている。
暁斗という男を愛するよりも
「絵を描く暁斗」を愛する時点で、
その愛に疑問が・・・、本当に人を愛するなら、
相手の何事も受け入れ、考え方を尊重するものだと思うけれど・・・。
律のやり方は、結果的に「絵を描く暁斗」には良いかもしれないが、
暁斗自身にとって本当に良いとは思えない。
夜明けを迎える展開で、
とにかく安心できるエンディングでほっとしました。
好き同士なのに思い違いからすれ違ってる。
そんな物語を切なくも、でも最後は幸せに結んでくれる作品を見事に綴ってくれる作者さん。現代ものオメガバースの世界観の素晴らしいストーリー展開に感動、感動、感動……涙がぶわわっと出ちゃうほどの胸アツ作品でした!!
これまで見たことなかった設定のストーリーに、のめり込むのにそう時間はかかりませんでした。
恋人同士じゃない2人の不思議な関係と同居生活。言い方悪いですが、ヒモ(売れない画家)とパトロン(生活全般の支援者)の関係というは、オメガバースの中でもお初です。
パトロンとはいっても、ヒモ画家の暁斗を十分に養うだけの生活ができるわけでなく、通常の会社勤めと副業をプラスしての支援。これがなんとまぁ健気で、暁斗の絵がただ好きってだけでここまでのサポートをする律に涙ホロリでした。
恋人同士ではないものの時に体を重ねることもある2人なので、奇妙な関係なのは否定できません。お互いに好きとも言わず、何も求めない距離感を好ましく思っているせいか、この特殊な関係が成立していることが良いのか悪いのか正直よく分からない部分でもあります。
最初は律視点で進むストーリーということもあり、暁斗のことがよく見えてきません。でも暁斗の行動の端々にはちゃんと見え隠れしてるんですよ、律への想いが…^ ^
そんな照れ屋さんな律への想いを伏線として見てみると、後半の暁斗視点でその答えが見事に解明されていきます。クールで絵以外は無関心そうな暁斗が、あの時あんな風に思っていたのか、この時こんな気持ちでいたのか、と…暁斗の律への不器用な愛情にやるせない思いでいっぱいでした。
律に運命の番が現れたときには2人の関係にどう響くのかドキドキしながら見守りましたが、これに関しては完全に律の勝利。身体は本能的に求めているのに、理性で"運命"に打ち勝つ意思の強さは、めちゃんこカッコよかったです( ´∀`)
ドラマチックさを演出する"運命の番"だけど、何とも思ってない人に身体が反応するなんて怖い以外何者でもないのよね…。
今まで一緒に過ごしてきた時間やそこに伴う感情だって立派な"運命"の根拠。運命は自分で掴む選択だってあっていい、そんな風に思える2人でした^ ^
律の暁斗への絵のシンパ度は高く、そのためなら何でもするという意思の強さは暁斗自身より強いのでは…?と思うこともしばしば。暁斗の絵で繋がった彼らだけど、暁斗の絵によっても離れた2人でもあるわけです。
暁斗のために絵を描くのを応援するというよりは、絵のために暁斗を応援していると見えてしまった律の行動や選択決断には、少しだけ違和感を覚えたトコも。お互いに対話が足りなかったのは残念とも言うべきでした。が、しかし!
2人が再会の時を迎えたときのシーンはすんごいドラマチックでした!( ˃̶͈̀∀˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾
あの特別な1枚の絵を見たシーン……挿絵のイラストと共にぜひ感動に浸って欲しいと思います。
本当の意味での"運命"とは何か?を考える一冊ではないでしょうか。
心に響くアツいストーリーに胸がいっぱい。最高の読後感でした!