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原作小説が9巻まで出ていた「可愛いひと。」シリーズ。
もともとハイランドから出版されていたものなので入手が難しいかったが、現在は新装版がルチル文庫より順次刊行されている。
そしてコミックスも同じく絶版中だったのだが、リンクスコレクションから描き下ろしなどを追加して今回発行された。
このシリーズ、コミックス版から入ったのだが、すぐに原作小説が読みたくなってしまった。
作画の御園えりいは正直あまり好みではないのだが、そんなことは殆ど気になることなく、一気に読み切ってしまった。
多くのエピソードを削ったコミックス版でこれなのだから、きっと原作小説はもっと丁寧に、そして濃密にその世界が描かれているのだろうと思う。
「あなたが誰よりも何よりも好き」という、それだけを訴え続けているこの物語は、何の飾りもなくとてもシンプルだ。
ごちゃごちゃした駆け引きや裏はない。
ただただ相手を慈しみ、狂おしいほどに愛する。
それだけが切々と語られる物語である。
だからこそその為に用意された設定は、よくよく見ればリアルではない。
一番不自然なのは、受けの絢一とその姉との関係だ。
絢一の姉と攻めの高根は元夫婦なのだが、彼女の浮気が原因で別れ話になった時、絢一は姉の不実に激昂するも、高根に対する恋心を暴露され、逆に汚いと罵られる。
実際のところこのやり取りがあったとしたならば、恐らくこの姉弟は金輪際関わることはないのではないだろうか・・・・・・と私は思う。
それなのに絢一の姉は、高根と絢一の恋を応援している。
あり得ない。
自分の元旦那と弟が付き合うだなんて卒倒しそうだ(笑)
とまあ、リアルではまずあり得ないだろうが、物語を動かしていく上ではそういったコマの配置もありかなと思った。
常にうじうじとしながら下を向いて生きてきた絢一だが、そんな彼が初めて声に出して「欲しい」とはっきり言ったのは高根だけ。
だからこそ高根もそれに応えるかのように、全てをさらけ出し与え、そして絢一の全てを自分のものにする。
そんな絢一の情熱と高根の決意がこの物語の最大の見せ場であり、細かい設定の不自然さは問題ではないのだ。
そのくせ「セックスってのは汚ねえもんだ」と絢一の羞恥を一蹴するリアルな台詞にはドキリとさせられるのだが。
ちなみにコミックスでは頁数の都合からか、たまに「?」な部分が出てくるので、世界観を完全にを熟知したければ、小説を読むのが一番だと思う。
とは言え、いきなり9冊というとキツいので、とりあえずコミックスから入ることをオススメしたい。
少し大袈裟かと思うほどの愛情を交わす2人だが、ラブストーリーを読みたいのであれば、しっかりどっぷりその世界に浸れる本作なので、きっと満足できるかと思う。
漫画の方も、とても雰囲気があってステキなのですが、やはり文章で表現されていたものが絵になると、端折られる部分も多くて、ちょっと残念です。
しかし、御園えいりさんの絵は可愛い受けがより可愛く描かれていて、とっても好感があります。
漫画だけでも違和感なく読めますよ。
離婚した高根と、元妻の弟・絢一とが結ばれていくストーリー。
離婚の原因は、妻の浮気なのだが寂しくさせるほどほったらかしにしていた高根にも原因はある。
しかし、高根をかばい姉を攻め立てる絢一。
姉も弟になじられて驚きますが、しっかり反撃されちゃいます。
姉も薄々気付いていた絢一の高根への気持ちを、バラされちゃいます。
それからしばらくして二人の関係がスタートしていくのですが…最初から気持ちが繋がっていたのではなく、絢一が無口なのも原因となり二人の意思はまったく咬み合いません。
はっきりした言葉と態度が欲しい高根、しかし自信のない絢一は勇気を出して告白もできない。
ウジウジ君だど、高根を一途に思う気持ちはとても純粋でピュア。
勇気を出して言えた時、ずっと待っていた高根も箍が外れたように絢一を慈しむ。
なかなか進めない二人がじれったいですが、それもストーリーを盛り上げる上ではスパイスとして楽しめました。
年の差という設定もあり、大人の慎重な想いがたくさん盛り込まれていて、しっとり落ち着いたラブストーリーでした。