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世界観の素晴らしさに「神」です。一級の作品だと思います。
生まれながらに全てを兼ね備えている男・涼嗣。その涼嗣に長年恋をしてきた秋祐は、涼嗣の結婚を機に離れることを決意。その時涼嗣は…?
涼嗣と秋祐、それぞれの視点で書かれているので二人の想いやすれ違いがもどかしくもあり、読んでいてドキドキします。
特に「神」だと感じたのは涼嗣の壊れ具合です。全てが優れていて、人間としても男としても常に上位にいる涼嗣。しかし彼は何かが足りなく、どこか壊れてる。崎谷はるひさんはこういうタイプの攻めを書くのが上手いと思います。
涼嗣は病弱で生活力のない秋祐を「庇護すべき存在」だとしてきました。
しかし秋祐は涼嗣の知らない所で成長していた。本当は秋祐はしなやかで芯の強い人間だと思うのですが、いつまでも「護るべき弱い子供」としてきたのは涼嗣でした。
涼嗣の結婚を機に、今まで一緒に暮らしていたマンションを出ると告げる秋祐。結婚をするのは自分のくせに、涼嗣は秋祐が自分の元からいなくなることなど全く考えていなかったと、急激に焦りを覚えます。
これほどまでに「鈍い」涼嗣。やはり何かが足りない男です。秋祐の方がよほど人間として温かみがありまし、大人です。セフレもいたようですし(笑)
秋祐が自分から離れていく。自分ではない誰かに面倒をみられる。
言い知れない喪失感と寂寥感に襲われる涼嗣。秋祐から別れを告げられ、呆然として動けなくなる涼嗣は人間らしくて好きでした。
涼嗣が最終的に下した決断は、初めからそれしかないだろうというものでした。婚約者と別れ、秋祐のもとへ向かう涼嗣。
秋祐は自分のことが好きだったとは言っていたが、果たして今もそうなのだろうかとグルグル考え込む様子は読んでいてスカッとしました(笑)
今まで秋祐を切なくさせてきた分、もっと悩んで焦るがいい。
そしてようやく一緒になった二人。ここまで来て涼嗣が秋祐を逃すはずもなく、愛情の裏に見え隠れするほの暗い執着と共に、二人は「共生」していくのだろうなと感じました。
エロスは他の崎谷作品と比べると少ないです。ただしそれはページ数が少ないからそう感じるのであり、密度は高いと思います。
まるで官能小説を読んでいるようで、美しい描写でした。
崎谷氏もあとがきで述べていましたが、これが著者の原点なのだなと感じました。
淡い恋心と薄暗い執着心を見事に織り交ぜた「神」作品でした。
皆様の評価は高くありませんが、地味話好きの私は高評価です。
数ある崎谷作品の中でもベスト3に入ります。
決して涙脆くはない私がホロリとさせられました!!
読んでいてBLだという事を忘れてしまう位、淡々とした普通の話でした。ですが、何でだろ?妙に心に響くセリフがあるせいか、切なくなるんです。
同い歳の従兄弟・涼嗣(攻ノンケ)に長年片想いをしている秋祐(受ゲイ)。
作中に出てくる蛍の儚さが、秋祐と重なります。涼嗣から見た秋祐は、弱くて庇護すべきモノ、まさに蛍のような存在なのでしょうね。実際はセフレもいる、自立した男なんですが…。
―ひどく細やかに気遣うくせに、秋祐の顔色を読むのには長けているくせに、本当の望みにだけは全く気づいてくれない男―
ホントこんな最悪鈍感野郎な攻め様です。
涼嗣の結婚話によって、長い片想いをやっと葬る事が出来る、彼女程の素晴らしい女性なら、諦められる。
そう思えたのに…
―条件が合ったから結婚を決めた―
何だソレ?
秋祐の行き場のない想い。
そしてとうとう全てをブチまけてしまう。
「条件が合うなら俺でも良いんじゃない?」
「おまえ男だろ、仮定条件がそもそもおかしい。」
―ぱりんと何かが壊れた音がした―
(えぇ、私の心も壊れました。ついでに涙腺も…)
ヘテロセクシャルから無意識に見せつけられる絶望、涼嗣の恋の対象には男の自分は 絶対になれない。
もうね、これでもか!という位、心に響くセリフが多いんです。アンダーライン引いて、崎谷名言集作りたくなりました。
イラストは今市子先生。これがまたストーリーと凄く合っています。崎谷先生の方から挿絵をお願いしたそうで…納得です、今先生の優しくて儚げな絵柄が お話のイメージそのもの。
地味な話好きな方、是非読んでみて下さい。ちょっぴりホロリとしますよ~(多分)
今市子さんの表紙に惹かれて買いました。綺麗!
作品は耽美風。BL要素少な目です。
秋佑がゲイであるからBLなのか?BLでなくてもよいかもしれない作品でした。
久しぶりに小説らしい小説を読んだ気がします。
焦れるほど丁寧な心情描写で、秋佑目線と涼嗣目線が交互するように展開していくのですが、秋佑の気持ちに涼嗣が従う事が多い進捗です。
色々な女性が登場するけれど、結局秋佑を選ぶ涼嗣。
面白かった。特に秋佑が、自分の恋愛対象が同性であることへの悩みと解釈を「昆虫の生態」に擬えている場面が興味深かったです。・・私は、人の性別は二種類に区切れないと思っているので、共感を覚えました。
進捗がやや牛歩なので、じっくり読む人向けです。イケイケではないので、結論を早く読みたい人は途中で積読になるかも。
著者の他の作品のレビューをざっと目を通すと、BLの範疇を超えたものが一貫してテーマに流れているようです。【精神的な「歪み」と「依存」】について。確かにこの作品にもソレが若干秋佑に見当たる。
興味深いので、主に絶版本から読んでみる事にします。
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静岡県? 本家分家の従兄弟同士
蓮実秋祐 主人公 分家長男 大学院生
蓮実夏葉 5才上の姉・・涼嗣の初恋の人
茶どころの大地主の本家次男
袴田涼嗣 従弟 証券会社ディーラー
涼嗣の恋人だった理奈は、涼嗣の友人佐伯とこの後交際。(同人誌)
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従兄弟同士は鴨の味:
いとこどうしが夫婦になったときの情愛の深さは、鴨の肉の味のようによいものである。(暗に近親婚を推奨しているような格言)
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淡い色彩の今市子先生の絵が、静謐なお話の雰囲気にぴったりでした。
涼嗣の壊れっぷりが、いいですね。
一見完璧な男なのに、人としての大切な部分が欠けているんですよ。
それを、秋祐視点で読者は知るんですね。
好きな相手というフィルターを通しているからこその、掴めなさ、もどかしさがこんなにもじわじわと実感できるなんて…。
秋祐は、甘やかされている割には強かで、ちゃんと「自分」を持っているイメージ。
甘えもワガママもカワイイ〜。
ずっとずっと片想いで、気持ちに蓋をしていて…なんてケナゲなの。いいコ。
この攻め受けバランスが良いおかげで、涼嗣のことを嫌なヤツとは思わずに読み進めたような気がします。
蛍の舞う沢。葉擦れの音。川面の反射や虫の声。
原風景が、ここにあります。
静かに流れる時の中での上質なお話だったと思います。
だいぶ前に読んだ時には崎谷作品として過大な期待をもって読んだものの、主人公の受け様のネガティブな性格も合いまってあまり好評化を抱きませんでした。
私は年に1度、読み返さないだろうと思われる数百冊の本を一気に処分するのですが…読み返すわけでもないのに毎年何故か捨てられない1冊でした。
そんなこんなで数年ぶりに読んだのですがこのしんみり感はいいですね。
なぜ素直に面白かったと思えないのに未練がましく気になってたのか謎でしたが、セリフが一つ一つ胸にくるのです。
ファンタジーとは言い切れない切なさを感じ印象に残るものがあるのです。
そして不思議ちゃんと言われる受け様より、攻め様の天然さに萌えを感じます。
攻め様の彼女の立場視点からすると同情すら湧きますが、攻め様の隠れ天然な思考をまえにすると責められない気もしてきます。
紙一重で地味な話ではありますが、たまに読み返したくなる一冊だと今なら素直に思えます。