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一昔前を彷彿させるNYのスラム街が舞台。
さえない探偵クラークと美貌の助手アンソニーが事件を解決していく本格派の推理モノです。
「AS TIME GOES BY」「WILL YOU LOVE ME TOMORROW」の2作品入っていますが、もともとはハードカバーで刊行されたものだそう。93年刊だそうなのでけっこう昔ですね…。現在未収録作品含む何作かが新装版で出てるみたいですが、もともとこのシリーズの最初の話は未発売だそうなので、この本に入っている2作はデビュー作でもシリーズ作としては4話5話にあたるらしいです。ややこしい…。だた、馴れ初めやこれまでのあらすじを丁寧に書いてくれてるのでこれから読んでも問題ないと思います。
ゲイカップルで同棲中のクラークとアンソニーが事件に巻き込まれる探偵家業の日常(?)が描かれていますが、一般推理小説としても高く評価できそうなくらい良くできたお話です。BLが主体というより男の恋人がいる探偵が主人公の「推理小説」という感じ。文学書を読んだ気分になるのでそういうのが好きな方にはオススメです。
だだ起こる事件は生易しいものでなく、痛々しい殺人事件だったりします。それも本格派なので、事件が解決しても若干殺人事件につき物の後味の悪さが残ります。さえない探偵がラストに事件の関係者を集めて推理を語る、お決まりのシーンが大好きなのでとても楽しめました。
主人公2人が住む街は治安の悪いNYのスラム街。女性や子供も必死に働いて生きています。その雰囲気と探偵と事件という組み合わせと味付けがとても絶妙でした。この街にこの2人にこの仲間だから成り立つんだなぁという感じ。
最初アンソニーは助手と言っても事件にあまりくっついてこないし、たまたま「男」で「恋人」な役割を持たされた世話人みたいな印象しか持ちませんでした。
ただ、読んでいるうちにじわじわくるというか、愛だ恋だと前面に押し出す作風でないのですが、さりげない動作で「毎日傍にいる人」という空気のような愛情が伝わってきて、最後のほうにはもう陽だまりみたいな雰囲気の2人に完全にはまっていました。
今でも死に分かれた妻を忘れていないクラークと、もしクラークが再婚するなら出て行くつもりでいるアンソニー。悲しい過去を土台に出合った2人の足元は危うい感じで、でもとても誠実です。
「WILL YOU LOVE ME TOMORROW」で本棚を買ってくれたクラークに対してアンソニーが泣きそうになりながら、「本棚があると本が増えて出て行きにくくなる」という台詞にとてもきゅんとなりました。
「明日も愛してくれますか」というタイトルが読み終わったあとにじんわり響く感じです。
アメリカの東海岸のどこかにある「出口のない街」と
言われるスラム街が舞台。
そこに起こる些細ないざこざも深刻な事件も、
大多数の人間と単調な日々の波に埋もれてしまう移ろい。
幸か不幸かそんな事件にかち遭ってしまう、
ぐーたら探偵のクラークと美貌の青年アンソニー、
そして、彼らに関わる様々な人間達のドラマが織り成す物語です。
本書に収録されている2編では、どちらも殺人事件が
起こり、クラークは既知の人物達からの依頼に
不承不承といった形で調査を始めます。
始まりはほんのちょっとした行き違いだったのが、
いつの間にか止めようもなく加速し、ついに起こる悲劇には、
人間の愛情や哀しみが深く関わっています。
誰が責められるべきでもない真相に辿りつく度、
クラークや事件に関わった者達は
やるせなさを感じ苦い思いを味わう事になります。
さて、本シリーズの主人公である元刑事のクラークは、
痩せぎすで一匹狼的、家事能力ゼロのがさつな男。
恋人のクラークにベタ惚れで、物騒な街と
自身の因果な稼業から、出来るなら恋人を
部屋に閉じ込めておきたいという溺愛ぶりです。
その年下の恋人アンソニーは、眉目秀麗、家事が得意な
法学部の大学生。
不健全なクラークの健康管理から、探偵助手もこなし、
健気で時に勇敢な面をみせてくれます。
この2人にもそれぞれ過去の深い傷があり、
それが折に触れては彼らの心を苛ませています。
お互いに抱えている寂しさを知っていても、
彼らは寄りかかるのではなく、寄り添い並ぶようにして
渇いた街で生きています。
重苦しい事件もありますが、2人が互いに注ぎ合う愛情や
友人たちとの包容力とユーモア混じりの関係で
ほっと一息つける場面も充分あり、読後は心温まります。
かつて「JUNE」という雑誌があり、
その読者投稿がデビューのきっかけとなった作家さんです。
少し昔や現代のアメリカを舞台に、その街に生きる
人達の生き様をミステリやハードボイルドな内容と
絡めて描いた作品が多くあり、そんな中でも男たちの愛が
光る「DESPERADOシリーズ」の第1作目でした。
ココナッツ
こにしそるさま、初めましてこんにちは。
こちらのレビューが上がっていて驚いてしまい、コメントさせて頂きました。
わたしは柏枝さんの別シリーズ『厄介な連中』を好んで読んでいるのですが、こちらのシリーズも気になっておりました。
『厄介〜』の方も直接描写でなく仄めかされる萌なのですが、こちらもそのようですね(^^;;
その辺りだけはちょっと残念です。現代のBLにすっかり慣らされてしまったようでして。
柏枝さんの作品は読む順番がわかりにくいんですよね(^^;;
しかしここで救世主!新装版が出ているとの情報ありがとうございます。
探して読んでみたいです。