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表題作は書き下ろしで、あとの二編は連作というか、スピンオフといっていいのかな?二組のカップルを描いたもので、久々に読み終えてしまうのが惜しく感じたお話でした。
「裸足の夏」は昭和初期の日本が舞台。主人公は酒蔵を所有する名家の瓜生游一(りゅういち)。腹違いの弟の浩太、杜氏で幼馴染みの篤、游一を書生にしたいという商人の甲斐、そして游一の実父の浩一郎。游一の存在が周囲の男達を惑わしていく。彼には唯一心に思う人がいるのだけれど、背負った宿命とでもいうのか、瓜生家のために二人は引き裂かれてしまう。時代物ゆえの悲しい結末ですが、短編としては印象が強く残るお話です。
「手紙」 高文と燿(よう)は大学の同期。燿はいつしか高文と二人でいることを避けるようになり、燿の姉・弓枝を高文に紹介して三人で過ごすようになる。大学卒業目前に、高文は弓枝にプロポーズをして…。燿の本当の気持ちは?弓枝の真意は?密かに大好物な男二人と女一人の三角関係がモチーフになっていて、ゾクゾクしながら読み進めました。
「サイレント・デイズ」 「手紙」で燿が働いている喫茶店のマスター・樋口と、その義理の弟・崇の物語。愛することと、憐れむことは似て非なるもの。愛し方を知らない義理の兄に惹かれてしまった義弟。切ないよぉ〜。こういうのが読みたかったんだよなぁ。初出が94年なので古い作品なのに、男同士の恋愛に違和感なく作品に引き込まれてしまう。やっぱりツボが古いんですかねー。ええ。よくわかりましたとも。
今市子さんが挿絵を担当されている古い作品には個人的にハズレがないですね。しばらくは古い作品を漁って、失われたウン十年を取り戻したいと思っています。。