snowblack
「西洋骨董洋菓子店」同人誌その6。
小野は橘が好きだった。
そもそもこの同人誌の最初の一冊は、そこから始まっている。
好きだった、どうしようもなく好きだった。
それは過去のことで、時々その名残がちくりとするけれど、
アンティークでまるで家族のように平和に彼らは過ごしているが……
:
ある日、小野がマンションに帰ると先頃別れたばかりの男が待っている。
もう一度だけ、という懇願にマンションに招き入れるが、その後は刃傷沙汰……
上着だけ羽織って橘のマンションに逃げてくる小野。
今日はエイジは彼女の家だし、千影の家に行くと橘はもっと怒る。
彼には、他にこういうときに頼れる親しい人間はいないのだ。
手当をして、シャワーで髪を洗ってやる橘。
小野は臆病な子どもだ。
傷つくのが怖くて、魔性のゲイとして周囲を振り回しながら自分は本気にならずに
逃げ回って過ごしている。
賢い橘にはそれが痛いほど見えてしまう。
そんな小野に捨て身で迫られて、抵抗できない橘……
「俺とオマエは永久に恋人同士にはならない。だから俺達は永久に別れないんだ。」
この台詞は小野にとってはどうなんだろう?
きつい台詞であると同時に、
恋愛以前に人とのつながりのところが信じ切れない小野にとっては、
福音でもあるのだろうか?
:
私は橘が切ない。
こういう正しくも格好いい台詞を本気で言えちゃう橘の切なさ。
橘の透徹した「諦観」。
決して投げやりな後ろ向きな諦めではなくて、
見えすぎてしまう、できすぎてしまう橘という男が
それでも俺は生きて行く、というけなげな強さに私は思い入れずにいられない。
そんな重く人の本質に迫るようなテーマを、時にコミカルに
余白に余韻を漂わせながら、描いちゃうよしなが作品がたまらなく好きです。
……と、極めて真面目な感想のあとでなんですが……
アナルいじられて感じちゃってる橘くん、もしや素質大ありですか?(笑)
別れた男に待ち伏せされ暴力をふるわれた小野が、橘のマンションまで命からがら逃げてくるところから始まるお話。
文句を言いながらも手当てをしてやり、精液で汚れた頭まで洗ってやる橘が、毎度のことながらお母さん・・・。
しかしそんな橘に急に欲情してしまい襲いかかる小野には、ちょっとビックリだった。
昔の事を持ち出されて逆らえなくなった橘にも、ちょっとビックリだったのだが。
やはりいつまでも拘っているんだなあ。
そして「俺達は永久に別れない」という橘の精一杯の思いやりの言葉は、この先ことあるごとに小野を縛る。
橘っていい男だと思う、本当に。
何でも完璧にできるし、スマートだし、卒がない。
だからこそ私は少し嫌いだったりもする。
「正しいことばっかり」言うから、逃げ場がないようなそんな息苦しさを感じるのだ。
そんな橘も彼なりに懸命で、何事にも一生懸命真面目に取り組んでいる結果であり・・・なかなか人間っていうのは上手くいかないものだ。
正解ばかりを出そうとする橘を見ていると、それだけが良いことではないと、そう思わされてしまう。
何が正しいのだろう。
正しいことなんてあるのだろうか。
そんなことを考えさせられる一冊だった。
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かえっちょ
snowblack様、レビュー楽しく拝見させていただきました。
私はアンティーク本の全ては読んでないのですけど(最後のほうが未読です)
この本がダントツ好きでした。
個人的に好きだった橘と小野という二人が、やはりどうにもならないのがとても寂しかったですし、確かに橘のいうように”始めなければ終わりも無い”という、切ないながらも橘なりの精一杯の愛情表現に涙した記憶があります。
・・・もはや全ての記憶が定かでないのが(汗)
おかげさまで、もう一度アンティークを読み返したい気分になりました。
またのレビューを心待ちにしております。