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編集者とイラストレーターの辛い恋の物語。
攻が受のことを放っておけなくなるのは榎田さんのいつもの黄金パターンですが、今回はなんとも痛々しいです。
昔の男が忘れられず、破滅思考の水窪と、彼に惚れてしまったせいで追い込まれていくまだ年若い編集者の藤野。
恋に墜落していく……っていう感覚がいまいちつかみきれなかったけれど、自分の気持ちを自覚した後の藤野の葛藤がさすがだなあ、と。
タイトルの意味と、後半急速に重たくなっていく物語も切なくて良かったです。
この展開で逃げ出すのが受ではなくて、攻っていうのがちょっとめずらしいかも、なんて思ったり。
そういえば榎田さんの作品って攻め視点結構多い気がしますね。
単なる躰の関係から始まったふたり。
水窪には忘れられない人がいるのを知りながらも、彼に溺れていく藤野。
水窪の恋人との過去に目がいくが、実はもうひとつの秘密を隠すためか。
巧妙に張られた伏線に気付いた時、「やられた」と納得。
4つも年上ながら生活能力の低い水窪をかいがいしく世話する藤野に、ルコちゃんと東海林を思い出す。もっとも、こちらはきわめて静かなトーンの作品。交互に視点を変えて描かれるので、受けと攻、互いの心情が手に取るようにわかる。
「恋愛に、意味なんか求めない」と言い放つ稲美のことばの持つ重さが胸に沁みる。
榎田さんの作品のなかではかなり地味な方だけれど、読み終えたあと心に残る秀作。
暗くて地味めなお話でした。どんどん重たくなってくる。
作品のカラーとしては同作家さんの魚住くんシリーズに似てるかなと思いました。でも、何かが違う。
けして暗くて地味で重い話がキライなわけじゃなく、むしろ大好物なんですが、琴線には触れなかったです。
攻めの〇〇ネタはちょっとあからさますぎる気が。伏線は散りばめてあるんですが、いちばん最初ので気づいちゃったもんで、多すぎる伏線が蛇足に感じました。
なにより、書きたいシリアス主張をすべて書ききってしまうという榎田尤利さんの文章のクセが気になりました。やたら詩的で酔いを感じてしまったんですが、どうにも私これが苦手で。これを書く一歩手前で文章を止めてくれたら余韻があったのにな~という箇所がちらほらありました。ただこの点は完全に好き嫌いの問題だから、そこが好きっていう方もいるだろうと思います。
あと受けの元カレはもうちょい魅力的に描いて欲しかったです。いっそ登場させないほうが良かったかも。邂逅の場面で一気に萎えました。
全体的な話の輪郭は大好きなんですけどねー。
それだけに残念でした。