BLコミック&BL小説、業界最大級の品揃え!
大正浪漫のなかで繰り広げられる、愛憎劇スタート!
鳩かなこさん初読み。
耽美で端正な文章がとても素敵で、
江戸情緒を残す大正時代の東京が眼前に浮かぶようです。
BLというより、
同性愛要素のある時代小説を読んでいるような感覚でした。
絡み描写は匂い立つような色気がありますが、
メイン二人の恋愛に偏ることなく、
人情や親子の絆といった、幅広い人間関係が描かれます。
大正時代の東京。
両親の死後、継母により蔵に幽閉されていた与一郎は
掏摸(スリ)を束ねる親分の手下・藤吉に助けられ
大親分の屋敷に匿われる。
やがて19歳になった与一郎と藤吉は、掏摸組織の存続の困難に直面し…。
与一郎(受)がとても魅力的な主人公です。
か弱い少年から、酸いも甘いも噛み分けた大人の男へと成長を遂げる。
義理堅く男前なのに、
ときおり死を渇望していた少年時代を思い出したり、
自分の世話をする藤吉(与一郎は足が不自由なのです)を意識したり、
場面によって儚げに見えたり、色っぽく見えたりするギャップが素晴らしいです。
着物を着替えさせるシーンや、湯あみのシーンも良いけど
とりわけ晩酌のシーンにドキドキしました。
雫が腕をつたい滴り落ちると同時に、
二人の想いも堰を切ったように溢れ、
うっとりするほど濃密な濡れ場へと突入するのです。
タイトルに「白波」(盗人)とあるように、与一郎も藤吉も、犯罪集団(スリ)の一員。
今までは警察や弁護士とも協力して組織を続けてきたが、
時代の波により、また吉田という警察の企みにより
組織の存続は危うくなっていく。
そして、与一郎のため藤吉のとった「ある行動」に
与一郎は傷つき、藤吉のもとを去る。
このときの与一郎の啖呵がとても格好良いのだけど、
色んな想いを呑み込んで藤吉に背を向けた胸中を思うと
とても切ない結末。
守るべき組織や人、自己犠牲と紙一重の愛―
様々なしがらみがあり、想い合うが故すれ違う二人だけど
なんとか幸せになってほしい。
そう願いつつ続編に手を伸ばします。
時代設定、文章が大正浪漫風。軽ーいノリが苦手な方にははまるかと思われます。
こういう趣のものはBLでは初めて読んだので、雰囲気が気に入って感心しました。
狐面がシンボルとして登場。元の顔も吊り目で、感情を表さず、しかし一途な攻め様、藤吉。このキャラは”帝都”シリーズから健在。一方、受けは美人で切れものながら男オトコしいのがよいです。この受けの与一は幽閉されていたところを攻めに助けられ、身の回りの世話を焼かれ、ただ一途に守られています。
しかし世情と親子の情が絡んで2人の行く末は。。
続編があるとはいうものの、単行本としてのまとまりま今ひとつ。読後は、これで終わり?となってしまいます。
エロは少ないですが官能的で、やはり浪漫風なBLであると思います。
『帝都万華鏡』シリーズで注目を集めた鳩かなこさんの新作。
今回の舞台もお得意な大正浪漫で、シリーズ化も決定しているとのこと。
タイトルに「白波」が入っているように、主人公達は盗人です。
物語はある事情で、長い間幽閉されて育った与一郎が、
狐面をした男に助け出されるところから始まります。
暗闇の中、ただひたすら「死」を願う与一郎を、
生の世界へ引き戻した狐面の男・藤吉。
強く惹かれ合う二人。
与一郎の世話を甲斐甲斐しく焼く藤吉。
そんな藤吉に安心しきって身を任せる与一郎。
藤吉が与一郎の日常的な生活の面倒を見る場面の方が、
濡れ場そのものよりも色っぽくて。ドキドキしました。
特に着物を着せるところが最高です。
与一郎の親代わりとなった熊次は、講談にもなった掏摸の大親分。
彼はなにやら昔、与一郎の亡くなった両親と係わりがあった様子。
与一郎の両親の話も、今後は出てくるのではないかと思われます。
作者は歌舞伎がお好きで、この作品は白波ものの歌舞伎を意識されているとの事。
そういう歌舞伎では、登場人物達の宿業や、どろどろとした因縁話がお約束。
なのでこのシリーズも、どろどろした方向へ進みそうで期待しています。
この時代設定は嫌いではありませんが、キャラ達の境遇のせいか大正というよりはまだ江戸?って雰囲気が……
そして伏線張りまくりなので作者さんも後書きで言っているようにシリーズ化、今後に続く……なのでしょうが。
なにしろカップルもそれなりの出会いで雰囲気はあったものの、一回だけですもの。
しかもラストで決別してるし……
まぁきっとこの先も……とは思える展開ではありましたが。
他のシリーズの書評など読んでいてもこの作者さんはこういうパターンが多いみたいですね。
私は他シリーズはまだ未読なんですが、でもこのお話の方が好みに合っていそうなのでこのシリーズだけ追いかけたいと思っています。
とりあえず次回は買います(笑)
幽閉され死に際で狐の面に助けられた与一郎は、助けられた先の掏摸(スリ)を商いにしている一族に身を寄せることになった。そこでの生活は真っ暗闇の蔵とは違いぬくもりがあり、かいがいしく世話をされたこともあり、与一郎の心はいつしか「死」を望まなくなるが…
ノンストップで読了しました。
それだけ引き込まれましたが、痛みや悲しみの割合が増えるに連れ相乗するはずの狂気や執着加減が同じ比重で感じられませんでした。ここが少々不完全燃焼気味で残念です(読解不足なだけかもしれませんが…)。なんだかんだ書いていますが、今時点で続刊が出ているので読もうと思います。