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『ポーの一族』は、後世の作家さんたちにめちゃくちゃ影響を与えてると思う。漫画、小説、映画、舞台、あらゆるジャンルにおいて。
吸血鬼ネタがBLに多いのも、この作品があったからこそという気がします。
宮部みゆきさんも書いてましたが、『インタビュー・ウィズ・バンパイア』の作者は、間違いなくこの作品を読んでると思うw
時系列順に並んでないし、登場人物の関係が複雑なので(年取ってたり、誰かの子孫だったり)、再読するたびに新しい発見をする漫画でもあります。
てゆか一読しただけでは全貌は見えないと思う。
エドガーがカッコイイです。ほんとはじいさんを越えたじいさんなのに、14歳のまんま。
彼らと一緒に時を越えて旅したいと思ったのは、私だけではあるまい。
掴み所のないエドガーがそもそもバンパネラになったきっかけの物語が冒頭に収録されており、現在の彼に辿り着くまでの道筋がようやく少しずつ見えてきました。やはり、吸血鬼ものの醍醐味はここからでしょう。人間が吸血鬼にならざるを得なかった理由。その葛藤、苦しみ、諦め。この幼さで妹・メリーベルのためにここまで覚悟ができたエドガーには驚くしかありません。そりゃあ少年の見た目に反して酸いも甘いも噛み分けた男のような顔つきになるわけですね。腐女子の私は1巻では彼とアランの関係性の掘り下げを期待していましたが、この作品ではメリーベルとの絆がまずすべての基盤になっているんですね。兄妹愛も好物なので、少し楽しみ方が変わってきました。
小学館文庫版「ポーの一族」第2巻。
この巻には4編の中編が収録されています。「メリーベルと銀のばら」及び「エヴァンズの遺書」はメリーベルが存命だった頃のお話、「ピカデリー7時」と「ホームズの帽子」はメリーベルの死後エドガーがアランと旅をしている頃のお話です。
「メリーベルと銀のばら」はエドガーとメリーベルの兄妹がパンパネラ(吸血鬼)になるまでを描いています。森に捨てられた幼い兄妹はお屋敷に住む老ハンナに引き取られて育ちますが、ある日エドガーは老ハンナとその一族の秘密を知ってしまいます。
「エヴァンズの遺書」はパンパネラに翻弄される貴族のお話。エヴァンズ伯爵が雪の日に助けた美少年は記憶を失っていました。伯爵は彼を気に入って世話をしますが…。
「ピカデリー7時」の舞台はイギリス。少女リリアの暮らすアパートでチンピラが殺されて、リリアの育て親は失踪します。皆目行方がつかめないリリアと警察の前に、リリアの育て親ポリスター卿の知人であると名乗るエドガーとアランが現れて…。彼らは事件と関わりがあるのでしょうか。
「ホームズの帽子」も「ピカデリー7時」と同じくイギリスを舞台にしています。魔法や不思議なことが好きなロービンの前に妖しい美少年エドガーが現れます。ロービンとエドガーは貴族のお屋敷で開かれた降霊会に参加しますが…。
時系列も舞台となる場所もバラバラですが、設定は複雑ではないので読むのに頭を悩ますことはないです。だから難しくはありません。物語に関しても一見難解そうに見えてプロットは単純。男と女の恋愛が絡むお話が多いです。みんな恋愛脳なのかなと呆れるくらい登場人物は恋をして、ある人は幸せに、ある人は不幸になります。恋愛が人生の幸福のすべてなんでしょうか。それからメリーベルがモテモテすぎて若干イラッとしました。
まあ物語は文学性もありますし、昨今の恋愛ベタベタ・低能の少女漫画より遥によいです。
しかし宮部みゆきによる解説エッセイが気に食わなかったです。某ヴァンパイア映画の監督はこの漫画を読んだのではと勝手に推測し、「ポーの一族」は欧米作品より遥に高みに到達しているとのこと。本当にそうでしょうか。もっと素晴らしいヴァンパイア物はたくさんあると思います。勿論感想は人それぞれですし、心の中で思っているだけなら構わないのですが、作品解説のページで根拠なく絶賛するのはどうかと思いました。
まあ、ここまでむかつくのは名作と言われるとひねくれてしまう自分の性格も影響しているんでしょうが…。評価は〈中立〉です。