ボタンを押すと即立ち読みできます!
攻・東原然 イラストレーター
受・品川千樫 アートデレクター
幼い頃に別々の親戚に引き取られ、ほとんど会うこともなかった双子の弟が交通事故で亡くなります。
知らせを受けて駆けつけた千樫は、弟・蛍の同僚らに間違われます。
双子が別れて暮らすには事情がありましたが、それでも何も知らないまま弟を亡くしてしまった事を悔いている千樫に、弟の同僚の山口から、蛍が東原と恋人同士で同棲していたと知らされます。
そして弟の身代わりとして東原と暮らして欲しい、と。
東原は妻子を亡くしており、その時の酷い状態に戻ってしまうことを恐れての無理難題でした。
しかし千樫は自分の知らない弟を知りたいと、山口に協力して「記憶喪失」という事にして東原と同居することになります。
生前の弟の気配を感じ、幸せだったに違いない写真を見て蛍のことを知ります。
同時に東原の変化も知ることになり、弟の身代わりとして存在していることに後ろめたさを感じるように。
もう居ない弟に申し訳ないと感じるのは、生きている自分が東原を好きになっているから。
本当だったら蛍が東原とこうしているはずなのに…。
小さな日常の出来事と、弟が抱え込んでいた幼い頃のトラウマを東原が知っていたことから、自分の側に今居るのは蛍ではないと東原は気づいていました。
彼がスランプに陥ったのは、千樫が恋人の蛍ではないと知ったからではなくて、蛍ではなく千樫を好きになっていたからなんでしょうね。
気づいているけど気づかないふりを続ける東原。
気づかれていないと信じ、身代わりでもいいからと抱かれる千樫。
けれど自分から望んだこととはいえ、東原の心が自分に無いままの行為は辛すぎました。
ひっそりと逃げ出し「千樫」に戻り、もとの生活を続ける。
千樫が山口に頼まれていた「仕事が終わるまで」の「仕事」を終えた東原が訪ねてきてハッピーエンド。
書き下ろしの「ひらいた扉」では、恋人同士になっても弟の影に遠慮している千樫のグルグルと、無理矢理抱いたという負い目のある東原の遠慮が同時進行で、ジリジリの展開です。
感情の変化が丁寧に追われてて、最後にしっかりと本当の恋人同士になった…と感じました。
好きになった人が弟の恋人だった。
しかもライバルは鬼籍で、姿形はほとんど同じ。
それでも自分を選んでもらう、好きになってもらう恋。
ジレジレでキュンキュンな展開で楽しかったです。
中編2本立てですが、続編の方がちょっと長いです。
千樫目線で話は進みます。
「うたかたの恋」
品川千樫は、事故死した双子の弟の身代わりを頼まれる。弟の恋人・東原はイラストレーター。今の仕事が終わるまでだったはずが、東原に惹かれるうちに仕事が終わらなければいい、絵を描かなくても良いと思い始め…という話です。東原が強引に抱いたときは、既に千樫の正体に気がついていて、姿を消した千樫を追いかけて恋人同士になります。額キスが萌えツボでした。
「ひらいた扉」
恋人同士となった東原と千樫。弟への嫉妬や居場所を奪ってしまったという罪悪感が捨てられず、東原から同居を求められても、うなずけません。東原の部下・山口から、東原の秘書として引き抜きを打診されるも断ります。そんなある日、千樫が熱を出して…という話です。
とにかく千樫が真面目で悩みます「ひらいた扉」は特にそれが顕著で、周囲が構わないと言っているのに、どうしても自分が許せずぐるぐる考え込むので、千樫に共感できるかがポイントになります。東原が、蛍とは違う千樫が好きだというのを行で拾えれば、千樫のそんな部分にも好感が持てると思います。
両親の死が、双子を引き離し、互いに連絡を絶つ理由になり、東原が千樫の正体を怪しむきっかけになる、というのが、いくつも理由があるより嘘くさくないし分かりやすくて良かったです。
双子の弟・二見蛍が死んでから物語が始まるので、蛍は登場しません。千樫にとっては、子供のままの素直な存在。東原や東原の部下・山口は、「もっとギラギラした」「千樫とは似ていない」「東原の絵のために身体を提供していても驚かない」という印象。でも、蛍が実際何を考えていたのかは分からず、その辺りがSSでちょこっとでも読みたくなりました。
イラストは素敵ですが、表紙と裏表紙の二人が違いすぎるのが、気になりました。どちらも綺麗ですが、私は木蓮の花と表情が印象的な表紙の二人の方が好きです。
今回はイラストレーター兼デザイン事務所所長と
急逝した双子の弟の身代りを引受けるディレクターの話です。
身代わりから自分自身として受入れられるまでと
まとまってから同居するまでの後日談を収録。
受様はデザイン事務所で
クライアントの受注から商品製作までを編集をする
ディレクターをしています。
受様は双子の弟がいますが、
両親の事故死で親戚に別々に引取られた為、
中学の時の両親の七回忌以来、
近況報告する位の付き合いしかしていません。
そんな二人が再び顔を合わせたのは病院の一室。
事故の知らせで駆け付けた時には既に遅く…。
離れていた間、どんな日々を過ごしていたのだろう。
幸せだったのだろうか?
知る術すらなく悲しむ受様に
弟の同僚は信じられない頼み事をします。
しばらくの間、
弟のフリをして事務所の社長と暮らして欲しい。
件の社長は弟の恋人だったというのです。
彼が今回の攻様になります♪
攻様は奥様と子供を事故で亡くした折、
廃人同然になっていた事が有り、
受様の弟が献身的に世話をして
やっと社会復帰させた所なので
彼の死を知ればまた同じ轍を踏むのではと
その同僚は危惧している様なのです。
いくら似ていても離れて暮らしていた自分が
弟になりきるなんて無理があるという受様に
同僚は必死な様子で頼み込みます。
離れていた兄弟が
どういう生活をしていたか知りたいでしょう?
彼にとっては何気ない、
しかし受様にとっては今一番の望み。
結果的に受様は
弟のふりをして攻様との暮しを引受けるのですが…
もう一人の自分ともいえる弟の人生を垣間見る事で
自分に足りなかったモノを自覚させられ、
それを与えてくれる攻様に惹かれていく受様。
弟だからこそ向けられるモノだと判っていながら
攻様に惹かれていく受様の切ない思いと
受様の知らない弟の思いを知っていた攻様が
受様対して抱いていた思い。
お互いが知らないフリをしているが故に
それぞれが誤解し、
なかなか二人の思いは交わりません。
なかなか解けない誤解がいつ解けるのか、
いつ受様が弟じゃないとばれるのか、
そしていつ攻様は受様が別人だと判るのかと
ハラハラし通しでした♪
表題作は雑誌掲載作なのですが
書下ろしの続編では受様の葛藤が更に増していて
結構グルグルでしたが
攻様は受様が思っているより本能な人でしたので
今後はわりとベタベタなカプになりそうですよ。
今回はほぼ正反対な設定で一作、
恋人にそっくりな他人に翻弄される受様の話、
火崎勇さんの『ペーパームーン』をご紹介します。
両親の死(自殺)により離れて育つことになった双子の千樫(ちかし)と蛍(けい)。
大人になるにつれて連絡もしなくなり、生き別れ状態に。
そんな時、蛍が事故に遭った、と連絡が。
そのまま蛍は亡くなり、蛍の勤めていたデザイン事務所の同僚から「少しの間だけ社長の前では蛍のフリをして欲しい」と頼まれる千樫。
なぜなら。
社長の東原は蛍の恋人だったから。
蛍が亡くなったと知ったら東原は壊れてしまうから。
東原が壊れたら会社が立ち行かない!今抱えている大きな案件が形になるまで、記憶喪失になったテイで蛍のフリを…!
こんな事頼んでくるなんてどうかしてる、と千樫も私も思ったよ…
でも千樫は応じるんです。
そして案の定、東原を好きになってしまう。
蛍の身代わりはイヤだという気持ちと、弟の恋人を奪ってしまうという気持ちに引き裂かれ…
…でウジウジ〜が続きます。
「ひらいた扉」
東原と恋人になってからの千樫のストーリー。
表題作同様、蛍の身代わりと弟の恋人問題はずっと横たわっているわけですが、こちらではウジウジというよりももっと強固な意志を持って行動しているので千樫を見直す感じ。
東原視点で言えば、蛍の身代わりとは思った事もないし、蛍とは甘い恋人関係というわけでは無かった。お前だけだ…
…はいいけど、当初は蛍の使ってた部屋があるから泊まれる、とか結構デリカシー無くて、かと思うとラストは蛍の私物をサッと実家に送り返して部屋は改装したりして。やっぱり今いちデリカシー無い。
そもそも最初に話を持ちかけてきた山口がトンデモな奴だと思う。
もういない双子の弟を挟んでの三角関係、不在こそが大きな存在感を持って迫ってくる…という設定は非常に良いのですが…総合「萌」で。
死んだ弟の身代わりで一緒に暮らしているうちに心が引かれ・・・という設定。
切なそうだし、身代わりって言葉だけで萌えだと思うのですが、読んでいくうちになえました。
ます、千樫(受)の性格が読んでいるうちにウジウジとしてしまったのがダメでした。
弟が亡くなったと知らせを受けたときは堂々とした感じがしたし、小さい頃のイメージでも弟を守る兄さんという感じだったのに、いつのまにか心が後悔でいっぱいで恋愛中心の男になっていたのが残念。
そして、東原(攻)と一緒に住んでいた弟(蛍)の設定がとにかくかわいそうだった・・
心に闇を抱えていてお互いを慰めあっただけとはいえ、体の関係もあったし、それなのに千樫が引っ越してくるとなると、今まで使っていた部屋や物は片付けられ・・(小さい部屋に納められたというのもなんだか寂しい表現)
どうも感情移入できませんでした。
唯一気になるのが、かなり自分勝手な山口。
山口よりもっと奔放なコイビトに振り回されてオタオタしてるのをみてみたいなーと思いました。
そしてどうも今回は、文体が私には合いませんでした。読んでるうちにプチプチと尻切れトンボのように止まってしまい・・・それもあってあまり今作は趣味じゃないかな。