アタラシイ、男ガ欲シイ。

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表題作妖しの剣

尾本宗司/音羽玄奘
刀匠の弟子/大領主
八薙紅丸
小領主の次男

あらすじ

「この子は、魔に魅入られる」あまりの美しさゆえに、刀鍛冶・泰山のもとに預けられた紅丸。ある日、彼は名工である師が、死者の血を使って刀を打っているのを見てしまう! 成長し、領主・玄奘の小姓となった紅丸に、幼馴染の宗司が届けた師の遺作こそが、その妖刀だった!! 誰をも虜にする身体で、妖艶に男たちを魅了し、植えたように地を求める紅丸を妖刀から救おうと、宗司は戦場へと向かうが……!
(出版社より)

作品情報

作品名
妖しの剣
著者
剛しいら 
イラスト
槇えびし 
媒体
小説
出版社
学習研究社
レーベル
もえぎ文庫ピュアリー
シリーズ
妖しの剣
発売日
ISBN
9784059041115
3.9

(12)

(4)

萌々

(4)

(3)

中立

(1)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
5
得点
46
評価数
12
平均
3.9 / 5
神率
33.3%

レビュー投稿数5

妖刀のその後を知りたくなります

表紙デザインに惹かれ、何気なく電子書籍版で読みました。…するとこれ、思いがけない当たり! とても面白かったです。

ざっと粗筋を読んだ限りでは、「妖刀」だの「呪い」だのをエッセンスにしつつのエロ重視ファンタジーなのかと軽く思ったのですが、いやいやなかなかの読み応え。意外にディティールは細かいし、挿絵がなくとも荒っぽくも耽美な世界が十分にイメージできたし。※とは言え、表紙絵がとても素敵だったので、中のイラストも見てみたかったなぁ(電子書籍版では収録なしでした)。

全体的な雰囲気をざっくりと例えて言うならば、「夢の碑シリーズ/木原敏江さん」+「指輪物語」!? (←なんのこっちゃという感じですね。)
エロ重視BLをお求めの方には物足りないかもしれませんが、妖しい雰囲気の怪異譚がお好きな方には楽しめる一冊だと思います。

ところで、このお話、別のお話のスピンオフ的な前日譚なんですね。この「妖しの剣」で描かれた妖刀の運命が気になるので是非そちらも読みたいのですが、絶版状態のようで……。版元も今は既に無い所のようなので難しいかもしれませんが、なんとかそちらも電子書籍化してほしいなぁと思いました。

2

「紅」誕生譚

「古都の紅」の、血を好む妖刀「紅(くれない)」の誕生の物語。
あの呪われた刀がどうやって創り出されたのか、大変美しく凄惨な表紙に惹かれます。
ですが、内容は想像以上に硬質で、エロでもグロでもなく、数奇な運命を持って生まれた一人の美少年の一生の話となっています。
時は戦国時代の始まりの頃。
領主八薙(はちなぎ)に次男が誕生したが、名付けに呼ばれた陰陽博士に『色難と殺の気…魔に魅入られる』、親元ではなく清涼な地で育てよ、と言われてしまう。
その子・紅丸はその命に従い、安曇野の山中の鍛冶場に預けられる。
物語は、その紅丸が運命に抗えず結局大領主・音羽玄奘の小姓となって、刀工・泰山が魂を鬼に明け渡して怨みを込めて打った刀「紅」で戦の場で斬って斬って斬りまくる、という展開になっていきます。
斬った後はどうしようもなく体が疼き、という設定もありますが、紅丸本人の淫乱性というのはあまり感じられません。
最終的に、敵であり泰山の怨みの相手、佐山勝利の首を取る戦が始まります。
紅丸は「紅」の力によって自分は全く傷つかず、全ての相手を斬るのですが、決して人格は乗っ取られず非常に冷静で、佐山の首を取ったら音羽とも別れ、元の鍛冶場、幼馴染の宗司のいる場所に戻ろうと考えている。
主人公はあくまで人間・紅丸で、その紅丸は決して「紅」に操られてはいないのです。
ラスト、佐山の首の血を吸って目的を果たしたはずの「紅」が、新しい血を求め始める兆しを見せます。その時紅丸と宗司はその妖力を断ち切って刀を炎の中に落とし、土に埋めますが……
紅丸と宗司は「紅」から逃れますが、その後「紅」がどうなったのかは描かれません。
「古都の紅」で登場するまでの500年余、「紅」がどうやって遣い手を呼び寄せ血を吸ってきたのか、「紅」が「紅」になってゆく本当に恐ろしい物語を読んでみたくなります。

0

耽美な時代ものは夢がある

生まれながらに数奇な運命を辿ると予言された男・紅丸と、呪われた妖刀・紅のお話。

舞台は戦国時代、難を回避させるために親元から離し刀鍛治・泰山の元に預けられた紅丸は、一緒に育った宗司とともに平穏な日々を送っていたのですが、ある日彼の美貌と剣の腕が領主・玄奘の目に留まり、小姓へと召し上げられてしまいます。
間もなく泰山が死に、遺作の妖刀・紅を贈られると、予言どおりの日々が始まるのです。

運命のせいか、美貌のせいか、はたまた呪われた刀のせいか、玄奘の下、戦いにはことごとく勝利し怪我すらしない紅丸は、反面、玄奘に抱かれずにはいられません。あたかも精を吸い取るかのごとく・・・
宗司はその紅丸を、妖刀の呪いから救おうと、最後の戦いに参戦します。

時代ものであり、美貌の剣士であり、呪われた刀であり、耽美の揃い踏みといったところです。

宗司は紅丸を思い、紅丸も宗司を思っているし、玄奘ときた日には紅丸を溺愛しているような状態なのですが、なぜだかこのお話では“熱い思い”を感じずに終わってしまいました。
展開にはそれなりにワクワクドキドキしたし、色っぽいシーンは沢山あったのですが、紅丸の存在がなぜだか非常に冷静で、一種、物悲しさまで感じさせるような哀しい人だったからでしょうか?
じゃ、好きじゃないかといえばそうではなく、結構好きな展開の作品でした。時代ものって夢があっていいですよね。

このお話では最終的に宗司とハッピーエンドになっていますが、あとがきにもあるようにお話は後の世に続くようです。
ちょっと調べてみたら、既刊「古都の紅」と「古都の紫陽花」がそのお話のようですが・・・積読中・・・アイノベルズなので現在絶版らしいので、この文庫で続きとして復刊するのでしょうか?そうしないと、この作品だけの読者はちょっと不満が残るかもしれません。
先が気になるお話の締めくくりだったので。

3

妖刀登場の戦国ものですよ。

舞台は戦国まっただ中、何やら信州らしき国が舞台で、何気にあれかな~?というのを匂わせる登場人物達。
戦いのシーンも斬っては捨て、斬っては捨て、などと時代小説らしく登場いたしますので、かなり楽しめます。
戦国萌えの皆さま、必読ですよ。
槇えびしさんの、キレイな線の白黒美麗イラストが雰囲気にピッタリ合って読み応えも充分です。

生まれた時に陰陽博士により「色難と殺しの気、魔に魅入られる」と占いされた八薙家の次男として生まれた紅丸は、その厄を逃れるため、安曇の刀鍛冶の元へ預けられます。
そこの鍛冶尾本泰山は、戦乱を憎み鬼の力を借りて妖刀を打つのです。
そこで一緒に育ったのが、戦乱で親をなくした宗司。
恋ともよべない幼馴染ですが、さわりっこをして楽しむ仲でした。
成長とともにその美も際立ち、剣の腕も上げた紅丸が自分を意識しないことはなく、たまたま立ち寄った大領主音羽玄奘に見初められて小姓として連れてゆかれます。
泰山が亡くなり、彼が打った妖刀を手にした紅丸は、その時から魔に魅入られた鬼神となるのです。
刀は人を斬るごとに血を吸い、歓喜に奮え、性的興奮を紅丸にもたらすのです。
負けることのない刀を持った軍神に守られた紅丸を立てて、玄奘は宿敵を打つ戦をしかけます。
しかし、紅丸は妖刀に操られながらも、その力から逃れたいと願い、泰山の願いであった宿敵・勝利を倒すことでそこから解き放たれると信じて戦うのですが・・・
紅丸を救ったのは、何よりも恋しい鍛冶の里で一緒に育った宗司でした。

妖刀に操られる麗人ということで、かなりエロ度を考えてしまうのですが、それなりにあることはありますが、戦乱の世が舞台でありますので、シリアスにエロはあくまでも魔のものという設定のもとに進みますので、アクションファンタジーの粋からははみ出ていない作りになっていると思います。
ま、何より武士の世界に衆道は当たり前ですからね。
また作者さんの剛さんが戦国ブーム真っ最中だそうなので、そちらに趣が向いたのが、エロだけにとどまらない作りになった一因だと、そこが高評価できる部分ではないかと思います。

それにしても紅丸という男は、妖刀に魅入られても堕ちることなく、冷静に対処できていたのは、里にいる懐かしい宗司に会いたい、その一筋の気持ちだったという、初恋の一途さのお話でもあったような気がします。

妖刀といえば、紅桜・トッシー・某ライトノベルアニメ化作品など思わる方、いかがでしょうか?

2

読みごたえはあるが、硬派で萌えに乏しい。

時は、戦国。
生まれてきた赤子は
色難と殺の気、魔に魅入られるという陰陽師の見立て。

武神に守られた、夜にも美しい小姓・紅丸が
妖刀に呪われ人を斬り続け、男の精を搾り取る・・・
と、いうエロエロもののようでいて
さほどエロさは感じなかったんですよねぇ。
わりと硬派なお話ですよ。

妖刀が討つ目的の武将・勝利が
そんなに大物には思えなかったなぁ。
戦国時代だから、勝利も玄奘もどっちもどっち。
どちらの武将にも魅力を感じなかった。

妖刀の呪いを解くために現れるのは
幼なじみの刀鍛冶なのですが
この刀鍛冶の宗司にも魅力が乏しい。
宗司との関係をもう少し丁寧に綴ってもらえたらと思う。

読み終えて・・・
宗司がメインの攻めなのかどうか私には微妙だった。
もうほんとにそれに尽きる。
紅丸にふさわしい攻めじゃないんじゃない?

物々しいはじまりと、槇えびしさんの素晴らしいイラストに
気分が盛り上がったものの、蓋を開けたら
真の攻め不在のような物語だった。

あとがきにて、実はこのお話に出てくる妖刀・紅が登場する
お話が他出版から出ているそうです。
そちらのお話が先で
あとから妖刀・紅の誕生物語としてこちらが書かれたそうです。
時代は変わり人は朽ちても刀は残る
妖刀・紅の行く末が気になってます。

1

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