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表題作蛍火

宮地洸一,40歳,地方出身の私立大学文学部教授
塚原千里,40歳,直木賞候補にもなった中堅小説家

その他の収録作品

  • 蛍火 SIDE:洸一
  • 蛍火 SIDE:千里
  • 未来航路

あらすじ

大学教授の宮地洸一と小説家の塚原千里は、学生時代から連れ添って二十年の「恋人」。しかし、ここ数年は一緒に暮らしながらもセックスどころかまともな会話もない日々。ある日、些細な諍いから洸一は煙草と財布だけを手に家を飛び出し北へ…。一方、千里は独り残された部屋で互いを想い合っていた頃を思い出す。かつてはあんなに愛しく想い、添いとげようと決めた相手だったのに…。二十年の歳月を経て、凍りかけた想いに再び火が灯る――。不器用な男たちのラブ・クロニクル。

作品情報

作品名
蛍火
著者
栗城偲 
イラスト
麻生ミツ晃 
媒体
小説
出版社
海王社
レーベル
ガッシュ文庫
発売日
ISBN
9784796400299
3.3

(38)

(10)

萌々

(6)

(14)

中立

(4)

趣味じゃない

(4)

レビュー数
16
得点
120
評価数
38
平均
3.3 / 5
神率
26.3%

レビュー投稿数16

愛は育むもの。

恋人同士になっても、ハッピーエンドではないんだよな。
人生は続くんだし。

受様は、中堅小説家の千里。
攻様は大学教授の洸一。
大学時代に知り合って友人となり、恋人となって早20年程か経とうとしている現在。
すれ違いの生活を送って倦怠期の2人。

些細なことで嫌気がさし、家を出ていった洸一は、足を向けた2丁目で、出会って恋に落ちた頃の千里によく似た健太と出会う。

浮気目的で2丁目へ行ったり、健太とホテルで最後までじゃないにしても、それらしい行為をしたり。
正直、洸一の行動は攻様としてはムカつくのですけどね。
健太と旅行中、なにかにつけ千里を思い出して、千里への好きを再認識していたので許すけど。

前半は洸一視点で、後半に千里視点。
洸一を待つ間、出会って恋人になるまでを思い出して、こちらも洸一への気持ちを再確認して、自分の事を反省してて。
愛は育てていかなければ、という言葉にぐっときちゃいました。

でもやっぱり千里心配してるし不安になってるじゃないの(#゚Д゚)
受様の幸せ至上主義の私としては、(;-ω-)ウーンなのでした。

1

微かに瞬く蛍火を大切に

ずっと積んでてなかなか読む勇気が持てなかった作品。
だって読むの怖いじゃん?同居20年目の40才同士、ラブい日々は過ぎ去って今はろくに口も利かず、口を開けば言い合いの2人の話…なんてさ。
そして、これぞ読む人によって受け取り方も変わる作品の筆頭だとも感じる。

2部構成プラス後日談。
まず攻め視点。
今の冷え切った状況と言い合いの末の家出、憂さ晴らしで2丁目に行き声をかけてきた男の子との衝動的な小旅行。
男の子と過ごす時間の中でパートナーへの想いを再認識し…
続いて受け視点。
攻めが出ていってしまった不安な3日間。
出会いの頃を思い出し、自分の至らなさを悔やみ、もう一度話をしたい、と祈るような気持ちで…

現象的には「雨降って…」系の展開。
受けは自分が悪かったから仲が冷え込んで、と思ってるのかな。
攻めは行きずりの若い男と旅行しても最後までしてないから…と思ってるのかな。
最後に配される後日談では2人は修復していて、なんと攻めがその時の男の子を2人の住まいに招くというエピソード。
受けはオトナ。修羅場にはならないけれどさ。

あの3日間があったからやり直せた…それが作者様が2010年に記した結末。
今私が思う事は、これ「今」でリメイク版が読みたい!
40才〜45才同士、同居/結婚してン十年、今不仲。
っていう設定があって、さて2024年ならこんな2人にどんな転機がある?どんな解決がある?どんな愛の形がある?

1

こんな作品に出会うとは

BL、、、としてのカテゴリでこのような作品に出会うとは思ってませんでした。でも、あってもいいかなって思いました。だって、世の中の恋愛小説と同じくらいの広さを持てるBLの世界で、こんなおじさんたちのドラマがあっても良いと思うんですよね。
いわゆるオヤジもの、ってのとは全く違う切り口。

すごく、ありふれた(世の中のCPがみんなラブラブで過ごしてるわけないよね)日常の積み重ねの中で、今回の二人のようにすれ違って何のために居るのか?って思っている人も多いかも。
男女なら籍が入ってるし、とか、子供がいるし、とかの重石があるんだろうけど、同性同士だとそういうのも無かったりして。子供がいない夫婦も同じようなことを思い悩んだりするのかも知れませんね。

なんだかBL作品の海の中で、吐出した作品なのかなって思いました。

4

見えなくとも光っている

電子書籍で読了。挿絵あり。あとがきなし。

出版が2010年なんですね。今から8年も前に、倦怠期の二人が主人公を張るこの様な作品が出版されて、その後(2016年)電子化もされているとは。栗城さんが人気作家であることを差し引いても、BLというジャンルは成熟しているんだなぁ、と感じました。

40歳同士、付き合って20年。大学教授と小説家。それぞれの仕事が忙しく、すれ違いを続けるうちに互いを想う気持ちがどんどんすり減っていって、口をきけば相手を傷つける様な言葉しか吐けない。「俺はお前のなんなんだろうな」という問いに「くだらない」と応えられた宮地は、関係の不毛を感じて家を出て行くのですが、鬱憤晴らしに行った新宿二丁目でパートナーである千里の若い頃にそっくりな青年と出会い誘われる、という風にお話は始まります。

宮地には子どもの頃に「俺はお前の~」と全く同じ科白を言って母が家を出て行き、数日後に戻って来たという記憶があります。
そのシーンで『子は鎹』という言葉が出て来ます。
この言葉は同じ様に千里視点でのお話にも出てきます。
で、私は考え込んでしまったのです。子は鎹なんだろうか?って。

若い頃に一心に相手を想った記憶を呼び覚ますことは不可能なことではありません。特に、何かのきっかけで思い出すことはあるでしょう。
だからと言って相手を想う気持ちが今、盛り上がる訳ではないですよね。
昔を思い出すことによって再び想いの火が灯るなら、それはそもそも『いまだ相手を想っている』と言うことに他ならないのではないかと思うのです。
人生は恋愛だけじゃありません。他にも大切なことや夢中になるものがあります。
だからその『想いの火』は蛍が発する光の様に、強く輝く時もあれば、見えない位弱い光になる時もある。
でも、光るんです。
私は、このこと自体が『鎹』なんじゃないのかなぁ、と思いました。
大人の姐さん、読むとジンと来ますよ。

5

言葉にすることの大切さ

大学時代に出会い、付き合って同居して二十年。
挨拶を交わすことも会話もほとんどない状態になり、お互いに浮気をしあってレス生活五年の二人。
悲しいことに、お互いに自分は今も相手のことを愛しているのに、相手はもう自分のことなんて何とも思っていないだろうとカン違いしている。

「愛してる」「好きだよ」と自分の思いを伝える言葉、「ごめん」「ありがとう」の言葉と相手を思い遣る気持ち。
年を重ねるほどに気恥ずかしくなり、つい軽視してしまいがちになってしまうけれど、同じ相手と生涯添い遂げるためにはやっぱり大切なことなんですよね。
大事なことを改めて気付かせてくれた作品でした。

5

この作品が収納されている本棚

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