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表題作鈍色の空、ひかりさす青

那智正吾
38歳,弁護士
深津基
17歳,工業高校二年生

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

学校でも家でも暴行を受ける基がすがりついたのは、弁護士・那智。次第に那智に惹かれていく基にさらなる不幸が襲いかかり!?
(出版社より)

作品情報

作品名
鈍色の空、ひかりさす青
著者
崎谷はるひ 
イラスト
冬乃郁也 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
幻冬舎ルチル文庫
シリーズ
鈍色の空、ひかりさす青
発売日
ISBN
9784344819450
3.5

(68)

(19)

萌々

(19)

(16)

中立

(10)

趣味じゃない

(4)

レビュー数
19
得点
229
評価数
68
平均
3.5 / 5
神率
27.9%

レビュー投稿数19

BL越え

この本を購入したのは作者買いです。崎谷さん、大好きなので。


BLやライトノベルでなく、
純文学の中に、主人公と彼に心をかける男との、友情や保護欲が書かれているものがあります。

H描写もないのに、BL以上にエロさを感じたり、心情が胸に染みたりします。


逆にBLやラノベでも、マスメディアで話題にのぼる芥川賞などの、芸術とよばれる作品より、余程素晴らしい作品もあります。

BLは、流行っても異端のジャンルであると思いますが、そのせいか作り手、読み手の距離が近く感じます。

なので、BLの中の珠玉の名作に出会ったときの嬉しさは、本好きさんにはたまらず、ハマルと抜けられません。


この作品は、同人誌に発表されたものの改稿とのこと。
本筋は商業としての縛りがなく、自由に書かれていらっしゃるのでしょう。


暴力描写や近親相姦もあるため、人を選ぶ作品だとは思います。

でも、それを越えお勧めしたい作品でもあります。



作品の主人公は痛いです。入院するほどの怪我をしているのに、それ以上に心が痛いです。

傷ついた動物が警戒心を抱くように。

彼は人を信じることができません。一人で自分の武器を作り、それを信じることしかできないのです。

彼に関わる弁護士も心に傷を持っています。

2に共通するオディプスコンプレックスに近い感情は、怒りをぶつけるべき対象が片や壊れ、片や既に死んでいます。

既に立ち直った弁護士は、傷をおった少年に代償行為のように手を差しのばします。

主人公が自分が壊れそうになりながらも強く、弁護士は自分の気持ちに混乱しながらも、それを上回る強さで彼を包みます。

脇のマサルが本当にいい奴で、可愛い彼女作って明るい家庭を持ってもらいたいなぁー。

主軸の3人が、それぞろのやり方で傷を持ちながらも心が強く、腐ってないのも良かったです。



日常から、かけ離れた話しなのに、自分が持つ、どうにもできない傷や、寄り掛かることができる人がいる幸せに共感できました。

もし今がどん底でも、いつか差し延べてくれる手が見つかるか、乗り越える強さを持てる気がします。

私の読後感は、とてもよかったです。

誰もBLにそんなこと望んでいないと思いますが、個人的に、H無しでも(本音は有りで)もっと深く掘り下げられた作品として、読みたくなってしまいました。

10

基のキャライメージは故・夏目雅子さんだそうです

(※同人誌の方にまで触れて、二人の後日談とか、かな~りネタバレしてますんでご注意を)


同人誌の時と比べたら、かなり主人公二人の性格が変化してます。私はこっちの方が好みです。話の内容も崎谷先生があとがきで述べているように、よりハードになってました。痛いというより苦い作品だなぁと。

具体的にどう違うかと言うと、那智の性格はもっとクールでストイックだったんですが、なんだか情熱的というか熱い男になってました。基はもっと儚げでひ弱な美少年って感じだったはずが、文庫では痛みに強いクールな男の子に。年齢差も前は13歳差くらいだったのに今回は21歳差に。

年齢差を広げたということは…崎谷先生、本気で「未亡人・基」を書くつもりじゃないよね…?
いや…え~と。この「鈍色の空、ひかりさす青」はすでに同人誌の方で二人の2年後くらいの話があるわけでして…その同人誌のあとがきには、ぶっちゃけ那智は長生きしないだろうという崎谷先生のお言葉が…。
そして崎谷先生はどうやら基が一人になった後の話を書くつもりがあったようで…。やめてー!それだけはやめてー!泣いちゃうから!(>д<)那智は刺青のせいで皮膚呼吸が上手く出来ないとか、心肺機能に問題があるとか全部その布石なの!?いやーー!(TДT)


今回の文庫の内容はラブもエロスも少なめでしたが、来年出る(?)予定の番外編はおそらく同人誌作品が収録されたものでしょうから、まぁいつものごとくエロスは濃厚です。基はニンフォマニアの気質を持ってますから(笑)。すごいことになってるはず。楽しみ~☆那智のプロポーズ編は必ず入れると崎谷先生もおっしゃっていたので一安心。

今回はすごく薄幸な感じの基でしたが、番外編ではとても穏やかで幸せそうですのでご安心を。那智の幼な妻としての地位を確立しております(笑)。せっかくなら「那智基」になった基の話も読みたいな~。

本作品の同人誌としては『You are so beautiful』『茜差す 帰路照らされど』『Winter Fall』『Summer Nude』『みずから我が涙をぬぐいたまう日』があります。ほとんどシリアスで、ラブ&エロスも盛り込んであります…が!

『みずから我が涙をぬぐいたまう日』は…!これだけは…!だめ!無理!BLじゃないよね?那智が背中の刺青を入れた時の話なんですが…。これが重い!重すぎる!(´Д`)BLじゃなくてこれはもう耽美小説です。こっちの方はまた後日レビューしたいと思います。

あとの同人誌はレビュー済みなんで、二人の幸せなその後が気になる方はそちらを。那智×基が文庫化されたなら、あとはもう片桐×ツネの文庫化を待つのみ!(>_<)あ[iLPj早くギリツネシリーズが読みたい!

8

クオリティ高くてビックリした…

私個人としては本当に面白いBL小説に出会えたなと大満足な1冊でした。ドラマティック、程よい重さ、テンポの良さ、キャラクターの描写、どれもバランスがとれていて「やっぱり崎谷先生って上手なんだなー」と思いました。(私自身崎谷先生の作品はあまり読んだことないのですが評判良いですよね^^) 他のBL作品より恋愛の描写が少なく感じましたが、そこが読みやすくして良い。主人公に感情移入できました。

6

痛みの中の救い

今回は亡父の執着で背に桜の刺青を負う美貌の弁護士と
学校でも家庭でも暴力に曝され心身に傷を負う高校生のお話。

二人の出会いにそれぞれの事情と
違法ドラックに絡んだ暴力団の抗争問題を絡めて
お互いに大切な相手だと自覚するまで。

受様は都下でも不良の巣窟として名高い
工業高校に通う高校生です。

受様の学力なら
本来はもっとレベルの高い高校を狙えたのですが、
父と二人で暮らす受様は授業料と
徒歩圏内という条件でこの高校へと進学します。

それでも受様は職業的な実地授業が多く
就職率も高いという話を信じていたのですが
実態は何もしたくない生徒達が大半で
まともな学習意欲のある生徒はごく少数、

遊ぶ為の金欲しさに暴力と盗みを肯定し、
他人からの搾取が蔓延していて
捕食の標的になった者は
殴る蹴るの日々が待ってる悲惨な学校で

受様も
級友の一人のターゲットとなって以来
暴力にさらされる日々を送っていました。

しかも受様は
家庭でも父親から虐待を受けていたのです!!

受様の父は仕事の失敗で左遷されてから
暴力的な行動を繰り返していましたが、
5年前に母が家を出ていってからは
精神的にも異常をきたしてきている様で

受様が何をしてもしなくても虐待は止まず、
受様は無抵抗でいる事しか出来ません。

そんな受様にとっての気晴らしは
PCで落したハードな音楽を聴く事と
モデルガンを改造して作った改造銃を
本物に近づけていく事でした。

対する攻様は
ヤクザの父に背一面の刺青を追わされながらも
組とは無関係な弁護士となった男です。

二人の出会いは
どこにでもある一瞬の邂逅でしたが、
一瞬こそが二人の始まりだったのです。

そぼ降る雨の日、
受様は級友の暴力でボロボロ状態で
軽く攻様とぶつかっただけでよろけ
攻様は受様の眼鏡を壊してしまいます。

攻様は自分のせいだと謝るのですが
元々級友の暴力で傷ついていた受様は
優しく気遣う攻様にこそ驚いてしまい
逃げ帰ってしまいます。

傷だらけで泥まみれで暗い表情の受様は
攻様には母親を彷彿とさせたのですが
攻様は気になりながらも
彼を呼び止める事は出来ませんでした。

しかし受様の学校は
攻様が関わるある事件に深く関係した為
二人は否応も無く引き寄せられます。

それぞれに重い事情をもつ二人の道が交わる時、
どんな未来が開かれるのか?!

同人誌作品をベースにしていますが
初期設定にかなり手が入っているので
結果的には「新作書き下ろし」らしいです(笑)

現在の社会的な問題を複雑に絡ませた本作は
主役カプが落ち着くだろう事以外は
最後まで先が見えない波乱にとんだ物語でした♪

ヤクザの父を持って生まれた攻様は
様々な葛藤を経て弁護士と言う職に着き、
暴力に曝される人に手を伸べる事を躊躇しません。

もちろん仕事上も私事上も、
彼らに関わることの面倒や
それによって無為に流れる時間が有る事も
理解していても差し出される手に
多くの人が助けられてきたのだと思います。

そして受様も攻様に出会う事で
年相応に大人に頼る事を知り、
彼に惹かれていきます。

しかし父の虐待が性的な含みを持っていた為
受様は攻様に惹かれる事さえも許せず、
更なる深みにはまっていくので、

二人を取り巻く様々な要素の複雑な要素を
全てを解き解して二人の気持ちが繋がるまで
どちらの視点もほど良くミックスして進むので
一緒にワクワク、ドギトキしつつ
一気に読ませられました!!

受様の受けている校内暴力やいじめや家庭内虐待、
改造銃、覚せい剤常習、
攻様の追っている違法麻薬の売買、
暴力団同士の抗争等、
力加減の無い思いテーマで進みますので

痛い展開が苦手な方には注意が必要ですが、
現実には創作以上の痛さも有ると思います。
多くの方に読んで頂きたい一作です♪

今回は複雑な葛藤を経てハッピーエンドとなる
崎谷はるひさんの『ヒマワリのコトバ』を
ご紹介作としたいと思います。

4

シリアスもいい!

痛い話大好きなので楽しめました。
基くんの不幸っぷりも凄まじかったけど、那智さんも、基くんと同じ年齢のころに父親に勝手に刺青入れられちゃったりと、かなり悲惨。
重い話ですが、アシスタントのマサルくんがいいキャラで癒されました。
スピンオフでマサルくんの話も出そうな予感がプンプンしますが・・・
ないっすかね??

2

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