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帯『「信じて」って君は言ってくれたけど、多分、僕はその言葉のすべてを真に受けることができない-。』
表題作連作と、同級生同士恋人の再会モノの2作品収録。
最初に評価の内訳を書いておくと、表題作連作が萌2+「夏ノ小路坂上ガル十年目」が神=神評価
梅松さんの初コミックス。
絵は全体的に太めの線で描かれた温かい感じの絵柄。
表題作は生徒×教師。
男と一緒にラブホから出て来た所を目撃され、更にその生徒斉藤[攻]に告白された教師青木[受]
その告白を青木は断わるのですが、斉藤は実にポジティブで素直な性格でワンコの如くにつきまとって諦めません。
作中で斉藤を、かつての飼い犬との連想を絡める手法は犬の可愛さも相まって上手いなあと思っちゃいました。
雑種犬に弱い自分としてはここでやられたーって気分になりましたですよ。
「夏ノ小路坂上ガル十年目」は何といっても坂という舞台を用意した時点で設定勝ち!って感じがします。
かつて学生時代に一度失敗した坂を、大人になって再会した彼等が今度は全速力で駆け上がる。
この走るってとこも上手い。
おそらくこの話はコンテの段階でもう自分的には、わーーやられたって思う話です。
大仰な坂じゃなくて、普通に住宅街にありそうな坂な所が良いのだなあ。
他にもちょっとした台詞がほのぼのしててそこもいい感じに萌えツボに当たりました。
表題作は、年上受好きで生徒×先生好きには王道でよかったかと。
自分が短歌が趣味なので、先生の俳句趣味が気になったのですが、あまり関係なかったですね。
脇役のオネエさんがいい味出してました。
二つ目の「夏ノ小路上ガル十年目」
タイトルセンスと青い感じがたまらなかったです。
こちらの方が好み。
十年前に失ったと思っていた関係が十年後に成就するのですが、それまでの両片思いが切なくてたまらないです。
どちらも程よくエロもあって、読みやすいコミックスでした。
食べ物BLを探し求めていたときに「ショクドー・ディナーショー」を購入して好きになった梅松町江さん。
書棚整理ついでに、読み直しレビューを残しておこうと思います。
こちらの作品もタイトルから「鶏肉の話!!」と勘違いして興奮していました。
たしかに出てきます、購買のチキンカツサンド。
でもそっちのチキンじゃなくて、臆病者の方のチキンでした。
【イヌとチキン/さよならチキン/番外編2つ】
大きなわんこ風高校生・斉藤と現国教師・青木の話です。
男とホテルから出てきてキスをしているところを生徒に見られてしまうという始まりです。
過去に付き合った男によるトラウマのせいで人と深く関わらなくなっていた青木に、斉藤は遠慮なくぐいぐい距離を詰めてきます。その姿が実家で飼っていたわんこに重なって、青木も無碍にできないくて…という感じなのですが、何はさておきしょんぼりしたペス(犬)がかわいすぎます。
自分の言葉で気持ちを自覚したり、深夜に書いたせいでオートでラブレターになってしまったお断りの手紙の辺りはきゅんきゅんして、付き合った後の斉藤の表情で切なさを味わえますが、「すごくおすすめ!」というポイントは…どこだろう。やっぱりペスでしょうか。
【夏ノ小路坂上ガル十年目/夏ノ小路春待ツ十一年目】
10年前、大学進学を機に別れた恋人との再会。
この作品は読んでほしい。これぞ梅松さん!という感じの心理描写と叙情的な雰囲気がたまりません。
遠距離に耐えきれず、運命にも見放された気持ちで離れた恋人同士が再会して、別々に過ごした時間にも2人ともがずっと心の中にお互いを抱き続けていたという切なさと希望が感じられる作品です。
二つのお話が収録されています。
一作目は年下ワンコ攻め×臆病受け、二作目は同級生の再会ものというどちらも馴染み深い設定だけど、気の利いたアイテムやエピソードを絡めることによって、ただのワンコ物語や再会ものではなく個性が感じられるところが好きです。
【さよならチキン】
年下ワンコ(生徒)×恋に臆病な先生。
受けが現国教師なので文章で気持ちを伝えるところが、らしくていい。
押しまくるワンコに対して、気持ちには応えられないと諭しているつもりで手紙をしたためたはずなのに、気持ちが自然と漏れて結果的にラブレターみたいになっちゃってるところが好き。
【イヌとチキンと】
表題作の続き。ワンコとチキンの物語です。
お付き合い開始したはずなのにちっとも距離が縮まらないことに不安を感じる攻めが、小テストの解答欄に問い11「付き合ってるってことでいいんですか?」と書き込んでくるのですが、それに対する先生の答えと、攻めが書き込んだ花丸がかわいくてほのぼのします。
【夏ノ小路坂上ガル十年目】
「俺は叫びたくなるような恋をしていた。」「十年経った今も思い出さない日はないくらいに。」
という冒頭のフレーズがなんとも心に切なく響く、かつての恋人同士の再会ストーリー。
お互い熱い恋をしていたのに、大学進学による距離への不安から卒業と同時に消えてしまったかつての恋。
10年経って再会するのですが、何気無い顔をしつつ次々と思い返されるかつての思い出との狭間で苦しむ様子が切なくて、貰い泣きしそうになります。
左右どちらから登っても同じ高台に辿り着くという二股に分かれた坂のたもとで、左右別々に登って同時に高台にゴールできた二人は何があっても一緒にいられるという迷信をかつて二人は試したことがあって、その時は、卒業後の二人の行く末などが見えず重い足取りのまま登ったせいで、同時にゴールができず失敗に終わったという苦い記憶が残っています。
10年過ぎても、相手もまだ自分を思ってくれている事がわかってもなお一歩踏み込めずにぐるぐるしちゃう主人公なのですが、かつての坂のたもとで例の迷信をもう一度試してみようと誘います。
以前は、あれこれ考え過ぎて登った結果、失敗した。
だから、今度は何も考えずに全力疾走で登ろう、
失敗したって、もう一度やればいいんだ!と言われて、無我夢中で坂を目指して登る二人。
ここがいいなぁって思います。
あの頃も、そして別れてからの10年間も考えるだけ考えたけど、何も進まなかった。
それならもう何も考えずに全力で突き進め!というメッセージが伝わってきます。
初コミックスだそうです。
裏表紙のあらすじに「俳句投稿というシブい趣味を持ち・・・」という表現があったので、どんな先生なんだろうと興味がわいて読むことにしました。
んんーーー俳句はあんまり関係なかったかもしれない・・・
最初のカップルのお話は、2話からなっています。
(おまけ漫画が2話ありますが。)
お話としては、教師という立場で生徒から慕われるようになり、自分もまんざらではないもののモラル的に受け入れられず、過去のトラウマにも引きずられて・・・という展開です。
健気に積極的に迫ってくる斉藤くんに“チキン”さをあらわにした態度をとりつつも、どんどん引かれていく青木先生。
俳句はあまりアピールされませんでしたが、手紙であったり、答案用紙であったり、国語の先生らしいアナログなアイテムが、いい感じに登場していたのが良かったです。
もう一カップルは、恋心を引きずったまま離れてしまい、10年後に再開した同級生です。
題名にもなっているとおり、「坂を上がる」ことが大変重要です。
気持ちは揺らいでいないけれど、はっきりと背中を押してくれる何かが必要な恋ってありますよね。
ちなみに、私の初恋(?)は高校受験のとき儚くも消えました。
中学時代片思いをしていたM君に、受験が成功したら告白しようと思っていたわけです。
二人とも絶対合格すると思っていたので、その勢いで告白できると思っていたのですが・・・Mくんのほうが落ちちゃいまして・・・
それを知ったときは「顔から血が引くとはこういうんだ」というのがはっきり分かるくらいおでこに縦線状態でした。
これは神様が告白するなと言ったんだと変に納得してしまい、告白することなく初恋は消えたのでした。
現実はそんなもん・・・
で、現実はそんなもんな展開がカバー裏に・・・でも、実際こうなるよね。