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『左近の桜』シリーズ最新刊『その花の名を知らず』発売を機に、おさらいをしようと思って再読しました。
ぼんやり何も考えずに読み流しても、耽美な世界観に酔いしれて楽しいですが、ちょっと気になる単語の意味を調べてみると、もっと楽しい小説です。だいたい、一般的な意味の他、へぇーって感心してしまう意味があり、時には少々お下品な意味もありますw
全体的に、今回は毛皮の話をしているようです。読み進めていくと、「また毛(皮)の話してる(´・ω・`)」という思いが濃ゆくなります。
前作『左近の桜』では嫌々化生にお付き合いしていた桜蔵くんですが、いまや自ら進んで化生を拾いに行っています。しかも、前作では化生達にはうっすら共通性があったのに、今作の化生たちは何が悲しくてそんなことしているのか解り難く、しかも凶悪度が徐々にアップしているような?
時々挟まれる幼少期の桜蔵くんと柾のエピソードに萌えます。桜蔵くんにとっては柾はあくまでも父親のようですが、でも実質柾×桜蔵くんのような気がするんですよね。
ラストはかなり思わせぶり。桜蔵くんと柾の距離は近付いたようですが、柾には老いの影がひたひたと迫ってる感があるのが、気になるところです。
角川文庫版を読了、シリーズ二作目。心の準備をする間もなく最初から飛ばしていて、誤ってこちらを先に読むと戸惑いそうな始まり。すでにソレが当たり前になっている世界が描かれるので、一作目を読み終えた直後の心構えで臨んだ方が良さそう。
よくぞここまで!と感心するほど、たくさんの得体の知れない男に目を付けられる桜蔵。一作目から引き続き、桜蔵の身体で未練や欲を満たして消えていく何者かが描かれる。
中には特定の一人の身代わりに使われるような話もあり、そこは少々モヤモヤした。
???となったのは第7章。人でない何かが正体を現すおどろおどろしい場面で「髪のあるヤツが気にいらない」は笑うしかない。言いがかりにもほどがある。
さらには「髪乞い」とか「髪と毛を区別しない」とか、大真面目に何を言っているのか。最後のオチまで愉快な内容だった。
桜蔵がこんな目に遭う理由について、一作目では意味ありげな柾のセリフが書かれているくらいだった気がするが、今作では桜蔵も少しずつ考えるようになっている。自分のことなのにドライな語り口なのが好き。
なぜ桜蔵なのか、なぜある時から頻繁に起こるようになったのか、明確に設定されているなら今後が楽しみ。
それにしても毎回記憶を失くす桜蔵は大丈夫なのかな。ツッコミは野暮だけど、倒れまくってるとやっぱり心配になる。
あと不思議なのは千菊があまりにゆで玉子のことしか考えていないかのように描かれる点。ここは一作目から一貫していて、何かの伏線か?と勘ぐってしまった。でなければ、ゆで玉子ばかり食べ過ぎでは……。
重い内容からコミカルだったりシュールだったりグロかったりと、いろんなテイストを楽しめる短編集。独特の情緒ある世界観に浸れる文章も良かった。
本作は桜蔵の環境が大きく変わる直前で終わる。柾の過去に関する匂わせや、最後の提案(命令)をした柾の意図など、興味を惹かれる謎が残されている。
羽ノ浦も浜尾もすっかり出番が無くなっていたのは残念だったが、次作も楽しみ。