小さな頃から変わらない…お前が側にいるだけで、俺の獣が目を覚ます!!

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表題作ヴィーナスに接吻

トマの腕を落とした , 樹,金持ちのパトロン
トマ
落とし前に両腕を落とされた

その他の収録作品

  • 指先に接吻
  • あとがき

あらすじ

同じ孤児院で育った都とトマ。
出会った瞬間から都は、美しい手を持つトマを壊す衝動を抑えきれない。
サディスティックにトマを抱くのは、深く甘美な愛の証。
傷つけ合い、傷を舐めあう2人を待つものは!?
狂気と純愛のハードエロス!
禁断SM最前線!!
(出版社より)

作品情報

作品名
ヴィーナスに接吻
著者
定広美香 
作画
定広美香 
媒体
漫画(コミック)
出版社
マガジン・マガジン
レーベル
ジュネットコミックス ピアスシリーズ
シリーズ
ヴィーナスに接吻
発売日
ISBN
9784904468418
3.9

(48)

(23)

萌々

(8)

(12)

中立

(3)

趣味じゃない

(2)

レビュー数
11
得点
186
評価数
48
平均
3.9 / 5
神率
47.9%

レビュー投稿数11

究極のSMと介護愛なのか?

またまたとんでもない作品が登場しました!
ちょっと短編が続いた定広作品でしたが、久々にガツン!とやられました。
これは絶対必見です!!!
いつも割とリバが当たり前に登場して、お互いが対等である姿が強調されるのですが、今回はリバは登場しません。
なぜなら、一方は両腕がないからです。
それだけでも充分に衝撃的であるのに、そこに腕を切り落とした者が、切り落とされた者の世話をしながらの、SとMの世界が介在するからです。

Sの気持ちを持つ都は、破壊的な欲望を持ちます。
トマは幼いころから都のそのSの餌食になりながらも、決して逃げることをせず、それを受け入れていますが、それは悲惨とか、かわいそうとか、決してそんな同情の余地はないのです。
あくまでも、都と対等の立場であり、腕がなくても、面倒は見られていても、確実にイニシチアティブを取っているのです。
この二人に、一見倒錯的とも、この二人をこじらせるような曲者として、樹なる金持ちの男が登場し、この都とトマを飼うことになるのです。
彼はSとMの両方を持ち合わせたタイプの人間だと思います。
都を挑発し、トマを飼いならし、その存在は不気味です。

あとがきにて、作者のこの作品に関する解説が実に明確・明瞭に書かれていますので、それを読むとますます納得し、この世界に惹かれます。
まだこの話は続きます。
エロスは満載なのに、全くエロくない!
そんな男臭い、シリアス・ハードな定広ワールドに目が離せません!!

13

リビドーを抉る容赦ないエロス

◆あらすじ◆

同じ孤児院に育った都(みやこ)とトマ。
親を知らない都は、育ちが良く美しいトマに強い憧れを抱き、彼を穢したい衝動から、ひたすらトマをイジメます。が、どんな酷い目に遭ってもトマは都の側を離れようとせず…
やがて成長した二人は暴力団に入りますが、トマがボスの愛犬を殺して逃走した落とし前に、都はトマの両腕を差し出すようにと言い渡され、自らトマの腕を切ります。
そして組の幹部という地位を捨て、クラブで黒服をしながらトマの世話をする都。
しかし、腕のないトマは以前にまして神々しいほどエロティックで、都のトマをめちゃくちゃに壊したいという衝動は募るばかり。
一方トマは、都の女性関係に嫉妬心を煽られ、苦しみます。
そんな二人の前に現れる、酔狂な金満家の樹(いつき)。
都とトマの、SとMの壮絶な駆け引きと、樹を加えた三人の奇妙な三角関係を描いたSMハードエロス作品です。

◆レビュー◆

個人的には、作者の代表作「アンダーグラウンドホテル」(UGH)よりも好き。
両腕切断ということで猟奇的な内容を想像しがちですが、猟奇性は全くありません。
腕の切断は緊縛の具象化だと思ったほうが、この作品に入りやすいと思います。
都は逃げるチャンスを与えたにもかかわらず、自ら腕を差し出したトマにとって、腕切断は「都に束縛されること」であり、同時に「都を束縛すること」。
都にとっては、美しいトマの全てを自分のものにすること。
これは、二人が選んだ愛の形なのです。(都はそれを愛とは自覚していませんが)

この作品では、Sである都よりも、Mであるトマの心理がとても鮮やかに描写されています。
行為のイニシアティブは常に都の側にありますが、トマは決して受け身じゃないんです。S性のある都を捨て身で煽ることによって彼を狂わせていくのが、トマのやり方。
過去のトラウマに裏打ちされた狂気の愛で、都をがんじがらめにしていく一方、金のために樹に一夜を売ろうとしたりと、したたかな一面も見せます。
目尻のホクロや、トレンチコートに白シャツという一張羅スタイルもセクシーで艶っぽい。
とにかく美しくて奔放でしたたかで、そのクセ心に深い闇を抱え、都なしには生きられないトマというキャラは、非常に魅力的です。
都は少しかすんでるかな。その分、何を考えてるのか分からない樹がいい味出してます。

ただ、この作品の最大の魅力は、倒錯的エロスの容赦ない描写。
個人的に一番衝撃的だったのは、トマが都に腕の切断面に触れられることで性的な興奮を感じるシーン。
都も同様に、その場所に強く執着しています。
腕を切られた者と切った者という、この二人だけが持つ絆…それこそが二人のエクスタシーであるというSとMの心の闇の深さに、リビドーの底を掻き回されるようなきわどいエロスを感じます。
自分の中の変態性を突きつけられるような…この感じ、きっと読んでみれば分かります(笑)

コマの流れに不自然さを感じる箇所があったりと、完成度の高さではUGHには及びませんが、これはこのテーマを描いたこと自体に価値がある作品だと思います。
何よりも、デビュー当時からこの作者が描いてきた萌えの集大成と言えるほど、定広作品のエッセンスが詰まってる!
なるほどSMとは、SとMとの真剣勝負の駆け引きなんだなということを認識させてくれる貴重な作品です。
最後に私が好きなトマのセリフを…

「義手なんかいらねぇよ 一生お前にケツ拭かせてやる」



後編「深海のヴィーナス」では、二人に近付いてきた樹の目的が明らかに。
都とトマの危うい関係にも変化が見えてきます。

9

むぼち

トマの手になって、食べさせたりおしっこさせたりする都の幸せそうなこと。
yoshiakiさんお気に入りのセリフ、相手にオシリ拭かせてやると喜んでいるトマもトマなら都も都。

男同士の壁に悩む恋愛とは別次元の、濃すぎる二人の関係に、ふだん希薄な人間関係のなかで生きてる私は酸欠になりそうで、「苦行」と表現したのですが、シリアスそうに見えるこの二人も、ある意味ラブラブの「バカップル」なのでしょうね。

究極の愛

すごいものを読んでしまった。これが究極の愛の形か。
肉体的に痛い漫画は苦手だと思っていたのだが、意外にもあっさり読めました。四肢欠損モノなのでかなりアブノーマルな雰囲気なのですが、作者の絵が美しく、グロさを感じさせない、いっそ綺麗に見える。
SMも、プレイとしてのソフトな物は割と好んでいたのだが、「傷つけたいS」と「傷つけられたいM」の感覚がなんとなくわかった気がする。トマの美しい指を愛でつつもそれを切断することに何よりも性的興奮を覚える都、傷つけられることを愛と感じるトマ。幼少期はいじめの加害者であり被害者だった。こういうの胸糞悪いなーとは思うのだがそれが愛の形と言われると…そういう考え方もあるのだなあと。
SMって結局同意の上でないと成立しないのだなあとわかってしまった。ドS、鬼畜、とかはよく聞きますが、受け入れられないとそれは愛じゃないものなあ、と改めて思いました。

個人的に両腕を無くしたトマの美しさをミロのヴィーナスで例えるシーンが好きです。
新しい扉を開いてしまった感じ。やっぱり痛い話は苦手ですが、こういった異常性癖物を見たのは初めてだったので、妙な感動を覚えています。これは2人が選んだ愛の形であって、決して一方的じゃない。究極の愛。究極のBL。だから後味も悪くないのだなあ。ぜひ読んでほしいです。

5

こんなすさまじい愛を描く先生がいらっしゃるとは

「愛ゆえに身を引く」などという言葉が空々しく思えてくるような、強烈な愛に圧倒されました。
両腕を与え、奪うことで、お互いに後戻りできない関係に陥る二人。
求めて、求めて、これ以上ないほど求め合っても、満たされない。
生きている限り一つのものにはなれないのに、それを渇望しているような二人の愛は、私には苦行のように映りました。

「究極の愛」と「SM」を描かれたとのことです。

トマの腕を切りたくなかった都に、腕を切らせ、トマを壊したいという衝動と戦う都を追いかけて、扇情的な姿をさらすトマこそが、サディスティックに都を追い詰める加虐者に
も見えてきます。

どちらがどちらか分からないほど、固く結び合ったこの二人の関係ほど、「恋」という甘い言葉が似合わないものを私は知りません。

ふだんは甘く切ないBLで、心地よい恋愛にうっとりしている私には、とりわけ強烈で新鮮な読書体験でした。

4

yoshiaki

むぼちさま

う~む、たしかにトマは加害者かもしれませんね。
都もトマに捕まらなければ、893として平穏無事(??)に暮らしていたかも。
究極の執着愛、なるほどある意味苦行だワ…( ゚д゚)ハッ!と気づかされました。

異常性愛の極み

これはすごい………!
読む人を確実に選ぶと思いますが、迷わず「神」です。
定広さんがこの作品で描かれたかった究極の愛の形(=SM関係の先にある「介護愛」)、凄まじ過ぎる……

幼い頃から互いの存在を必要としてきた〔都〕と〔トマ〕の常軌を逸した互いへの執着心が、常に生きるか死ぬかのギリギリ感をはらみながら描かれていきます。
都の場合は、トマの美しい手への異常な執着が己でその手を無きものにしたことで欠損嗜好に変化してトマ自身に向かい、究極の快楽はトマを完全に破壊する(殺す)ことで得られると考えている。(都はトマの腕を切断した瞬間、これまでにないエクスタシーを得て射精しています)
一方トマの場合は、一家心中で独り取り残された過去のトラウマから自分を絶対に捨てない存在を得る為に都に腕を切断されることを自らの意思で選択し、愛されることの最終形は愛する人に殺してもらうことだと考えている。
都の直接的な異常さもさることながら、トマが都以上の狂気をはらんでいてゾッとしました。

数あるパラフィリアの中でも四肢欠損は到底理解し難い嗜好ですが、ミロのヴィーナスが引き合いに出されていたおかげでだいぶん受け入れ易かった気がします。
他のレビュアーさんが書かれているように、両腕の切断がプレイとしてではなくヤクザ社会の制裁として描かれていたのも良かったのかもしれません。
あと何よりも、腕をなくした後のトマがタフで魅力的!
これに尽きます。
嫌悪感を抱くより先にトマの強さに惹かれずにはいられませんでした。
作家様の素晴らしい力量の成せる技ですよね。

この巻の最後に二人がキスをするシーンが堪らないです。
トマは涙を流しながら、都は拳銃を自らの胸に当てながら…
トマを殺して得られる快楽よりもトマとキスして得られる快楽を選んだ都の心と、プロローグにあたる「指先に接吻」で、腕を切り落とす前のトマが最後に自分の手に触らせたもの(都の唇)がフラッシュバックして重なって「お前ら死ぬなよ!!」と心の中で思わず叫んでしまった…

ちなみに「指先に接吻」では、都と腕のあるトマとの最初で最後のセックスが描かれているのですが、再度読み返した時に本来あって普通であるはずのトマの腕に妙な興奮を覚えてしまったあたり、この作家様はやっぱりすごいと思います。

お話は『深海のヴィーナス』へと続きます。

2

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