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新米麻薬取締官・薫と大曽根のラブトリップ!
無垢で無知だった大学1年の頃、来栖薫は成績はいいのに派手に遊ぶ井原哲史に目をつけられ、言葉巧みに井原が作るクスリの実験台にされてしまう。そのクスリというのはタバコだったり、塗布薬だったり、錠剤だったりする常習性の高い強壮剤で、栗栖の体を使って成分量を調整していた。
井原が大学で脱法ドラッグを製造、無許可で販売していたことが公になり、井原が退学処分となったことで栗栖と井原は一度切れた。
栗栖は強い意志で自分自身を鍛え直し、生まれ変わったかのように残りの大学生活を乗り切り、就職活動をする時にまるでヒーローのような存在に出会う。それはマトリの大曽根だった。大曽根に惹かれる気持ちを隠し、仕事に打ち込む栗栖の元を訪れたのは非情にも井原で…。
ここまでが大体全体の最初の部分で、ここから井原は何の為に栗栖の元にやってきたのか、栗栖は井原との関係を経つことが出来るのか…が段々明かされていきます。
終盤まで全然救いがないし、栗栖もそこで大曽根に甘えちゃいなよ~!と思うシーンが何度もありましたが、栗栖はとんでもない強靭なメンタルの持ち主で、大曽根に頼らず自分で井原をどうにかしようとするんです。栗栖がもうほんとに健気で努力家。大学時代に井原に弄ばれた過去を無くすために少林寺に通ったり笑顔の研究をしたり…まさに別人に自分の力で生まれ変わったのです。なかなかできる事じゃないと思うんです。
綺月先生のお話は読む人によっては地雷原なんでしょうけど、ストーリーがしっかりしているので比較的読みやすいかな、と思いました(あくまでも個人の感想です!)。そしてこれは小説ならではの演出というか進め方で、徐々に引き込まれてしまい、気付けば一気に読んでしまっていました。なかば栗栖の幸せを見届けるまでは読むのをやめないぞ!と意地になってた部分もあるかもしれませんが。
それに、挿絵がとても素晴らしかったです!梨とりこ先生、私は初めてでしたがとても可愛らしい栗栖とかっこいい大曽根さんが拝めて幸せでした。
Kindle Unlimitedにあったので軽い気持ちで読んだらとんでもなかった。もちろんいい意味です。こういう作品があるからBL小説はやめられないなー、としみじみ。
冒頭からかなりハードな描写です。それが誰のことでどうしてそうなったかをしると読むのを止めるなんて選択はなかったです。(勉強ばかりしている自己評価の低い人が突然怪しい宗教にハマってしまう理由が少しわかった気がして切なくなりました)
詳しいあらすじやネタバレは他の方が書かれたものが素敵なので割愛しますが、伊原という人物が主人公(受)を翻弄するのですが、その伊原が最後の最後で受けを守ろうとする姿が描かれていて悪人になりきれない人を描くのが上手い作家さんだと感じました。
信じていた恋人に騙されて薬物中毒にされた主人公が、中毒から抜けて新しい生活を得るまでの物語。
来栖=クルス=祈りの十字架を掛けた名前のようです。
黒目勝ちの瞳で可愛らしい来栖君に目を付けた同期の井原と交友したことから、人生を踏み外していく来栖君、本当に気の毒でした。
事件が解決した後、上司の大曾根が法の裁きを受ける決意をした来栖へ向けた言葉に感動しました。・・・作者は、性善説を信じたい人らしいです。
大曾根には、薬物中毒になって目の前で自死した恋人が居ました。その恋人が飛び降りる前に見せた淋しい笑顔と同じ笑顔を、来栖が見せたことで、来栖の覚悟に気づいて大曾根が語る言葉です。
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法は、なんのためにある?
人を罰するためじゃない。法は、赦すために存在する。
逃げる必要などない。私が君のそばにいる。
安心して自分の罪と向かい合いなさい。
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この大曾根の言葉で救われて、法の裁きを受けて、執行猶予中に大曾根と一緒に住む来栖。来栖が落ちついてきた時、来栖が心の中で紡ぐ言葉がこれです。
↓titleの「祈り」が意味するもの。
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・・・祈り続けてきた「誰にも流されない本物の強さを持った人間」になれますように
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流されたくないの意味は、「薬物へ誘惑する人を断ち切りたい」という事だと思う。望まないのに中毒した来栖は、本当に気の毒。
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★出だしからドロドロとした性描写で始まります。
グロい描写を辛抱して読み進むと、出だしの来栖が見る悪夢は、学生時代に井原から受けた薬物依存と凌辱による、かなり深い洗脳の影響、「フラッシュバック」だと、後半で分かります。
★主人公の来栖は学生時代に、井原に騙されて利用されていた。
井原が調合して販売する違法薬物人体実験の検体に知らずにされていて、井原に実験の様子を録画され、闇ビデオとして売買されていたので、来栖はアングラ界のアイドルになっていた。
★来栖は大学卒業後、マトリ、麻薬取締官に就任、そこで自分の薬物中毒の過去を浄化したかった。
薬物中毒は、脳を破壊するので、一度中毒になったら生涯断ち切ることは難しいと聞いています。薬物中毒の怖さを描いた作品でした。
うん、かなり痛い。読み手を選ぶ作品なのは間違いありません。けれど神評価にせざるを得ないなと唸ってしまう、凄まじいものを読んでしまったな、の一言に尽きます。
とにかく痛いのが苦手な人にはオススメしません。個人的には木原音瀬先生の『FRAGILE』『灰の月』辺りがダメな人は回れ右して下さいといった感じです。
全編通して読んでいてまぁ辛い場面の多いこと。序盤からフルスロットルではないものの、中盤から後半への畳み掛けに容赦がない。
受の薫の描き方がとても好きでした。人間の弱さや業をストレートに落とし込み、彼を通して感情移入してしまう。笑顔の仮面で自分を保とうとする薫と真逆の自分の対比。芯の部分に揺るがないものを持つ薫の、男前な強さが光ると同時に、刹那的なので読むのが辛くなります。
攻である大曽根の存在も薫を突き動かす原動力として申し分ない。紳士的な彼と薫の自動販売機前のやり取りはとても良かった。なのでなおさら後が辛い。贅沢を言うなら、後半もう少し休憩ポイントとして大曽根と薫のやり取りがあると心休まったかなと思いました笑
そして、井原の圧倒的な負のエネルギー。薬物という鎖で繋がれた井原と薫が、セックスによって交じり合い堕ちていく様に脱帽。ここの描き方がとにかくすごい。作者さまの筆力に圧倒されました。薬物に関しての情報も多く、ドラッグセックスによる依存症の苦しみも巧みに表現されています。
後に、これらが愛する人と触れ合いたいという自然な欲求をも恐れとして薫を苛んでしまうわけですが。セックスと性暴力というまるで違う性の在り方に翻弄される薫を通して、幸福な筈の触れ合いの尊さを痛感しました。
物語は終盤これでもかというほど読者に追い打ちをかけてきます。正直辛くてもう許してとギブしそうなほど。けれどとことんまで描くその覚悟に圧倒され、中途半端でない事にこそカタルシスがあるのかもとも感じたり。
欲を言えば、大曽根と薫の甘い日常や、マトリ仲間との再会など、最後まで読んだご褒美かもう少し多ければなお良かったなと感じてしまいます。
あと一つ、大曽根をどこまで事件解決に関わらせるかがとても難しい判断だったのかなと思います。最後の美味しいところだけ持っていって、ほぼ薫が1人で解決したようなものだと思われても仕方ない。BLの攻めキャラとして考えると物足りないのかなー。でも彼のキャラクター上、これが一番自然だと納得もできるので難しい所だなという感想です。
何度も読み返したくなる作品では正直ないのかも。けれど間違いなく面白かった一作でした。
1冊丸ごと表題作です。来栖薫(受け)の目線で進んでいきます。
大曽根×来栖ですが、来栖は元恋人・井原とセックスを何度もします(むしろそちらがメイン)。他の男にも陵辱され、人前プレイもあります。恥ずかしいけど感じちゃう、というSMチックな甘いものでなく、辛く厳しいものなので、苦手な方はご注意ください。
293ページとちょっとした厚さですが、薫の身に降りかかる出来事が悲惨で、ぐいぐいと引き込まれてどんどん読み進めてしまいます。ちょっとした合間ではなく、「今日は読むぞ」と1冊分の読書の時間を確保して読み始めることをお勧めします。
良い作品です。内容もイラストも素晴らしいです。
勧善懲悪でハッピーエンドのラストなのですが、そこに至るまでの過程がハードで、二人の幸せな状態でページが終わっても、作者様のあとがきを読んでも、梨様の素敵なあとがきイラストを見た後でも、心臓の動悸がおさまりませんでした。
幸せほのぼの好きな方には避けた方がよろしいです。
がっつりシリアス、薬物ヤクザ陵辱どんとこい!な方にはお勧めの重厚な作品ですが、それでも読む人は選ぶんじゃないかと思いました。でも可能ならぜひチャレンジして欲しい、そんな作品です。