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嗚咽してしまいました。
美しくて、同時に痛い物語でした。
成功した金持ちの音楽家と、食べるものにも事欠く貧乏な画家。
でも音楽家はスランプに陥り他人を信用できず、幸せではない。画家のほうはそれとは対照的に、売れない絵を描きつつも幸福に生きている。
そんな二人が出会い、互いに影響されていきます。音楽家は画家に惚れ、画家のほうも音楽家を憎からず思うようになる。
シンプルな展開が待ち受けてるような気がしました。BLのセオリーに添うなら、音楽家は画家の生活の面倒を見るようになるんだろうなと。
でも何故かそうはならない。それはもう、セオリーを知るこちらが焦れるほどに。
何故だろう…?
考えるのはそこですよね。
音楽家は画家を幸福だと思ってるんですよ。自分なんかより優れた、価値のある存在で、自分よりも幸せな人間だと。
でも、音楽家と出会ってからも、画家の生活はどんどん悪化していきます。アルコールに頼る生活のせいで体を壊して仕事にも行けず、絵の具すら買えず。
ここでふと、食べるものにも困る貧乏人の幸せを本当に幸せと言い切っていいものか?という疑問がわきました。よく言うよね。幸せなんて心の持ち方次第だって。それを食べ物に困らない生活ができる人間が言うのは傲慢ではないだろうか。
また音楽家は、「真の貧乏」を知らないから、彼の置かれた切実な状態を気づかなかったのかもしれない。
「どの女も高いものばかりほしがって」と過去の女をけなし、画家の清貧を賞賛する音楽家は、純粋にそう思ってるからこそ、残酷だと思いました。
でも画家のほうは穏やかな笑顔のままです。音楽家の純粋な優しさは彼に伝わっていて、惹かれていく。
意地悪な深読みをすれば、音楽家は「貧しい画家」にこそ惚れたのかもしれないです。もちろん本人はなにも気づいていないけど。
ARUKUさんは一段高いところから、この物語を作っている。突き放しつつも優しい視線でもって、彼らを描いている。そう感じました。天才。
ラストは希望に満ちてるように感じました。一筋だけ光を見せて、その先は見せてないけど。心憎い。本当に泣けました。
『何処無市ラブストーリー』
ユラギの最後の言葉が切なくて重い。
主人公がその言葉の意味を解すのはもう少し先。
『ここは、愛の惑星』
残酷な現実?
私は日本人に生まれたことを優越感に思うようにしてるよ。BLの国に生まれたという優越!w
あー文字数足りません。
先月出た作品は、少し軽めの短編集でしたが、今回のは「猿喰山疑獄事件」「極東追憶博物館」「ビタースイート」とかあの少しでも涙を流した作品の流れのモノで構成されていました。
登場人物に何かしら障害を持たせている。
それはずるいよ!って思うんですが、まるでアンデルセン童話ようなストーリー展開が無垢な心を表現する手腕にすぐれていると思います。
地位と名声に群がる人々の世界に嫌気がさし、スランプに陥った音楽家と、売れない為に昼はペンキ屋の生活をしている貧しい画家の出会い。
日々食べるものさえままならないのに、汚してしまった音楽家の上着を弁償する為に律儀に分割返済する画家。
今日も絵が売れなかったと落胆して帰る帰り途、窓から漏れ聞こえる安らぎを与えてくれるピアノのメロディを奏でるその人が、その音楽家とは画家は最後まで知ることがなかったのです。
貧しいから、暖房がない部屋で暖まる為にパンよりウォッカを優先してしまう画家なのに、音楽家はどうして何もしてやらないんだろう!
苦しかった。
画家の清らかさに安らぎを、彼を好きになった時、音楽への情熱をもう一度取り戻せたのに、どうして抱きしめることだけだったんだろう?
血を吐くまで、絵具がなくて血で絵を描こうとした画家の想いが切なくて、切なくて、、、
二人が出会って恋をしたことで、でも確実に何かが変わったのです!
一体このエンドはハッピーなのか?
ハッピーエンドであってほしい、でないと救われないよ。。
胸が苦しかった。
『地上で最も美しい生き物』『何処無市ラブストーリー』は2本共、片方に障害がある設定と、身分差があります。
障害がある為に、さげすまれ、差別され。
でも彼等は自分というものをわきまえて悲観していない。
純粋にまっすぐ、辛い現実を受け止めている。
それを”健気”という二文字で片づけてしまうには、単純すぎて
その奥にある無償の愛の存在を、素直に受け入れて静かに涙がこぼれてくるのです。
超短編『ここは、愛の惑星』は不細工特集にも掲載されていたメタボ眼鏡の葉加瀬さん♪
『家に帰るまでが遠足』はリーマンの恋の始まりの予感?
な、ちょっと箸休め的なライトでほっとするお話です。
やっぱりいいなー。
純粋さを教えてくれる作家さんですよね。
この方は、如何してこんなに残酷なんだろう。
それがどうしてこんなに染みるんだろう。
表題作、何故だかあの後に画家が幸せになれた気がしないのです。音楽家も、如何してあれだけで手放してしまったのか。そこらが分かり辛いので、更にもやもやします。
ARUKUさんの受って如何して孤立無援なんだろう。貧乏よりもそこがつらいです。
誰にも気付かれず、ひっそり消えてしまうイメージ。
この不安感も染みるんですが、もう少し幸せでもいいかも。
この中では、名もなき人の話と遠足が好きかなあ。
最後の馬の話は、この子は耳が聞こえないんですよね。
その割に話が通じているのは、唇を読んでるって事でしょうか。
受くんよりも、みどりさんの方が何かごつくて強そうでした(笑)
名もなき人の青い電車と線路を歩くシチュエーションって、もしかしてチェブラーシカでしょうか?
だとしたら、とても明るい結末かも。
この作家さんはいつもどこか昔のお伽噺のような、ちょっと不幸な主人公とか、小さな子供のような純粋な心を持った登場人物がお話に登場するのですが、その語り方がとても秀逸で胸に響きます。
今回もそんな短編ばかりでした。
子供向けの童話でも時に人間のとても醜いところや、理不尽な仕打ちが描かれているものがありますが、そんな描写を読むと心がとても痛くなります。
この作品集もそんな作品が多くて、逆境の中でも頑張っている主人公を見るとほんとに愛しくなる。
そして彼らの幸せを強く願ってしまうのです。
収録作品中、一番好きだったのは『何処無市ラブストーリー』。
もう受け様が一生懸命頑張っている様子が愛しくて愛しくて仕方ありませんでした。
『地上で最も美しい生き物』も健気で純粋な受け様が愛おしい。
攻め様は恋愛に関しては鈍感で無頓着な所がありそうですが、是非菰田の想いに気づいてほしいな~。
表題作もとても切ないお話です。
2人がいる世界が違い過ぎて、攻め様は受け様の状況には本当の意味で気づいていないような気がする。
実際なら攻め様が救済できる立場にいると思うのですが、そう簡単に物語を終わらせないところがこの作家さんの魅力でもあるかなと思います。
帯『「俺に教えてくれないか。世間のことを」「あなた、本当は王子様だろ』
アルクさん改名ARUKUさんの短編集。
独自の世界観の上に愛おしい人々を描いて行く様がほろりほろりと読み手の心に落ちてくる、そして時折心臓がぎゅっと掴まれそうになるそんな一冊。
ARUKUさんは凄くハマるかハマらないかの好みがぱっきり別れる作家さんなので是非一度読んで欲しいと思う作家さんの一人です。
絵に独特の癖がありますがこの癖もARUKUワールドの魅力の一つ。
表題作は貧乏で食い扶持にもことかく画家のゾゾと有名な音楽家だけれど創作に行き詰まっているギランの2人が少しずつテンポの違う音符が上手く合わさってメロディを奏でる様で、痛さも切なさもあるのに凄く優しい。
その他の話も紡ぐ糸は細く繊細で、画面構成と言葉選びはどこかしら自分の大好きで愛して止まない児童文学の「ものがたり」を思わせる余韻を含んでいる気がします。
機会があったら是非一度手にとってみて下さい。
そこに「ものがたり」があります。