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透明な水に触れているような心地よい空気感のなかにコミカルなところがあったり、キャラクターの強い思いが印象的に描かれていたり、ページをめくるごとにストーリーの楽しさに惹きこまれ好きになっていく作品でした。
表題作の「水の春」で描かれる、澄と吉野はお互いに守る側の人なんだなぁと思いました。澄は大切な家族を、吉野は澄が守りたいものを守る子でした。
吉野が澄に向ける思いは、澄を形作るものすべてを愛おしく思う愛し方で優しい真綿に包まれるような心地よさでした。初めて話かける時にも、澄が隠してきた性格を刺激するように、自分を印象付けるように近寄りながらも、その場で自分の気持ちを押しつけるようなことはしないところがより愛情深さを感じさせていました。
澄も、これまで自分が守りたいものを大切にするために隠してきた部分を初めて見破られて、自分のありのままを受け入れられて気持ちが吉野に傾いていく過程がとても自然でした。押し流されて好きになったんじゃなく、自分が吉野を大切に思っていくなかで好きになったことに自分の意思をしっかり自覚しているところが男前でした。
吉野はどこか落ち着いていて、大人な雰囲気を持っているのに澄と向き合うときのひたむきさや緊張感が溢れる汗や冷えた手などから伝わってきて可愛かったです。そういった演出やちょっとした会話のやりとり、空気感からお互いへの愛おしい思いが伝わってくるところが他にはない自然さになっていたと思います。
澄の両親の話「花の雨」「凌霄花」では澄のお父さん泉先生のキャラクターが私の予想を裏切ってくれていたところが面白かったです。見た目の雰囲気からはとても落ち着いていて大人で、気持ちが大きく揺さぶられるようなことはないのかなと感じさせるのに基を初めてみた時の感動や、自分がうたたねをしている間に基が外出してしまった時の焦っているところなどから、基が本当に大好きなんだ、この人は強い思いを基に向けて大切にしているんだと感じさせてくれました。
基は自分に自信が持てなかったりする人ですが、そんな弱さを感じたときほど泉先生が自分のせいでしょうか?と自分のせいだと思っていたりしてそこにえぇ!?と基がびっくりするパターンが面白かったです。基が悩むことは同じように泉先生も悩む部分で、そんなところもお互いが大事だからなんだねと思わせてくれて微笑ましくなりました。
泉先生の、自分が子供を産めないことを謝るやり取りはそのテンポや真面目さが最高に面白くて吹きだしてしまいました。先生、最高です。
キャラクター1人1人が相手を大切に思う気持ちが優しく丁寧に描かれているので読んでいて心が透明に澄んでいくような物語でした。
次回作など他にもいろんな作品を読んでみたい作家さんです。
読み直してレビューを確認したら、評価だけが「神」で確定されてました。
初読のとき、おそらくわたしは感動を文字にすることができなかったようです。
ただ残念なことに感動は水物で、一度感じたものをもう一度感じるのって困難。
読み返したら「萌2」なんだなあ…。
初読で何を感じたんだ、わたし!!
1冊まるまる1つの家族の話です。
【水の春】(3話)
高校生の春原とクラスメイトでホモと噂される四ノ宮。
2人が関わりを持つようになって、だんだんと距離が近くなっていって…という話。
学校では話さない2人が信号のところで待ち合わせして話すようになるのですが、この行動が瑞々しくて、照れ臭くて、ああ、若いなあって思えます。
四ノ宮の殺し文句がすごいです。
これはぜひ読んでください。読んで感じないともったいない。
「緊張して冷たい手」は他の作家さんの作品でも使われますが、この作品の使い方は秀逸じゃないかなと思いました。
【花の雨】
前話でちょっと出てきた春原の母・基と父の馴れ初め。
色素の薄い髪や目、女顔。
担当する小説家を好きになって、その先生の亡き妻と自分が重なる要素に心を痛める編集者の基。
懐いてくれる先生の子供(澄)の母を想う気持ちや、先生が自分の目や行動を妻と重ねる言葉に傷付きながらも…というすごく切ない話です。
こちら、何だかすごくいいんだよなあ。
先生が書く作品の結末を使ったお互いの駆け引きと真意が交差する辺りも、すごく切ないのに優しくて和みます。
先生が基に言う言葉が、前話の四ノ宮と被ってるのは狙い?
【春日和】
描き下ろし的小話。
基との初対面の印象を語る先生のノロケ。
先生が真顔で繰り出す爆弾の威力たるや…。
【六月来る】
描き下ろし的小話。
大学生になってルームシェアしつつ、同じ大学に通う澄と吉野。
相変わらず意地っ張りな澄に、ついつい意地悪をしてしまう吉野。
軽口を叩き合える関係っていいですよね。
【凌宵花】
描き下ろし的小話。
澄が出て行って2人きりになったことで「子供」を持つことが頭を過る基。
「子供、欲しいですか?」という基の質問に対する先生の返しがいい。
この2人の会話って本当に和みます。
「神」と感じたときにレビューを何としてでも絞り出すべきでした。
「神」と「萌2」ではテンションが違いすぎる…。
おそらく澄と吉野と女子の辺り、細かく分析しながらものすごーーーーく長く語るつもりだった気がします。
読み返した「萌2」のわたしは、先生×基の方に惹かれました。
テンションは下がりましたが、読み返してもほんわかした気持ちになれる1冊です。
何度読んでも良いものはいい!
大好きな作品です。
ふわっとしているようでしっかりしている2組のカップル。
高校生の四宮と澄、そして澄の父とパートナーの基。
とくに大人カップルのエピソードは切なくて美しくて泣けます。
シンプルに、素敵なカップルで素敵な家族だと思える。
高校生カップルは、初々しいですね。
言葉使いとか行動が男らしいのは澄だけど、内面の男らしさは四宮にこそ感じました。
澄を好きな気持ちがどストレートに伝わってくる!
線の細い絵も作風に合っていて好きです。
何度でも読み返したくなる作品です。
泣きました
タイトルにしたこのフレーズに。
四ノ宮が春原にピアノを聴きたいと言われ、それを叶えた後の台詞です
春原に自分の想いは伝えたが、答えを望む訳でも無く
ただ、春原を想い彼の望みを叶えようとする四ノ宮の
押し付けない溢れる情熱が琴線に触れました
性急に進むのでは無く、互いを想い合い育む愛の描写が沁みました
春原の父(作家)も四ノ宮と同じセリフを元担当編者で亡くなった妻の面影を持つ基に想いを伝える時に使いました
妻の面影では無く君を愛したと伝えるシーンに涙腺がらまた緩みました
程なく暮らし始め澄が出て行った後に基が先生に子供欲しいですか?と聞いた時先生が僕が産めなくてすみませんと告げた時本当の愛を見た気がしました
すごく深い内容で純度の高い愛でした
大好きな作品です
珍しい視点で展開する物語。
父と父の恋人=後妻(♂)の穏やかな生活を守りたい為の秘密保持を願う、息子視点で描いた話。
表紙絵を見て、小学生か中学生が主人公かと勘違いしてしまった。高校生でした。
春原の家庭は、父親と二人の父子家族、母は小五で病死。作家の父が選んだ後妻は元担当編集者、母の面影を持つ優しい男性。春原君は、父と父の恋人を守るために、ひたすら秘密を隠している。
同級生の四宮は、オープンゲイ。春原に片思いをしていた。(※「ホモ」は今は差別用語に類しています)
両親と妹と四人家族、母はピアノ教室を運営している。
四ノ宮君が春原君に気持ちを伝えた時、春原は、父の恋人が男性であること隠したいこと、守りたいことを初めて四ノ宮に告げる。
春原君が大学に進学して、別居を始めて家の中が静かになった、子供が居ない=産めないことを実感する春原君の父と恋人。
優しい思いやりを相互に交わしあう理想の良い家庭です。
抒情的な風景、家屋、綺麗な描写の美しい作品でした。
神
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▶季語をtitleに選ぶ著者は、知識豊かな風流人ですね。
★タイトルの「水の春」は、万葉集にもある季語。
春の、水量の多くなった川や湖沼の水。 春の季語。
★「花の雨」晩春の季語。
晩春花時の雨. 桜の咲く頃に降る雨、あるいは咲き満ちる桜の花に降る雨。