おまえといると、なんか、安心するんだ、俺……

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表題作雨は悄然と降っている

守屋要
28歳、人見知りで無口で不愛想な小説家
三島雄一朗
28歳、同棲していた彼女に追い出された

その他の収録作品

  • 晴れ間の名前
  • あとがき

あらすじ

家を追い出され、途方に暮れていた雄一朗は偶然、同級生で小説家となった守屋要と再会した。夕方に降る霧雨のように静かで暗い空気を纏うその男は、高校生活最後の一年間を誰よりも近く、親密な時間を過ごした相手だった。渡りに船、とばかりに守屋の家に転がり込み、そのまま居候生活を始めた雄一朗だが、何事にも無関心に生きている守屋を知り、いつしか昔のように彼から必要とされたいと思うようになって…。心に沁み渡る純恋、オール書き下ろし。

(出版社より)

著者:さとむら緑

作品情報

作品名
雨は悄然と降っている
著者
さとむら緑 
イラスト
カズアキ 
媒体
小説
出版社
ブライト出版
レーベル
ローズキー文庫
発売日
ISBN
9784861232572
2.9

(19)

(3)

萌々

(6)

(1)

中立

(5)

趣味じゃない

(4)

レビュー数
5
得点
47
評価数
19
平均
2.9 / 5
神率
15.8%

レビュー投稿数5

共依存の二人

辛口レビューが多いですが私は好きな作品でした。
明るくて社交的だけど寂しがり屋の受けと、一人きりで生きられる攻め。

お互いに会わなければ全く違う人生を歩んでいたんだろうなあ、というカップリングと
「共依存」の関係のカップリングが好きとしては二つ合わさったこの作品はすごくツボでした。

文章も読みやすく物語に入っていきやすかったです。

2

雨男といえばコレ

ローズキー文庫の版権をショコラ文庫が買い取り、電子再配信可能となった作者デビュー作(あとがきより)。ショコラ文庫さん、ありがとうございます。カズアキ先生のイラストはありません。

展開がジリジリすぎて、ほんとにクライマックスくるんだろうか?と不安になるくらい、メインの二人がすごーく狭い範囲をぐるぐるする、(ページ数の割に)実は短い期間を描いた再会ものです。

好悪が分かれるお話だろうなァ…。守屋のキャラにハマれるかどうかが決め手かもしれません。ムッツリが過ぎて得体が知れない不気味さと紙一重なんですよね…。ヴィジュアルの描写が好みだったのもあって、個人的にはツボでした。

三島も複雑なキャラで、彼の生い立ちからくる二面性をうまく擦り合わせられれば、守屋と惹かれ合う理由がもっと伝わってきたような気がするのですが…。

にしても、守屋と再会して直後の三島は軽薄で愚かすぎて、あまり好印象は持てません。高校時代を少しずつ思い出しながら自分を見つめ直していく三島が、子供の頃から現在まで求め続けていたものは一体何だったのか…。守屋と偶然再会するまで、ブランクが10年。三島の方はたやすく高校時代の感覚に戻れたけれど、守屋は違いました。明らかな拒絶はせずとも、言葉少なに三島を突き放そうとするのです。

特に再会後の二人の曖昧な関係性は、あえてわかりにくく内実をぼかして描かれています。そこで、雨の出番なんです。雨の降るタイミングがものすごく効果的で、守屋の本心を読み解いていくカギにもなっているところにシビレました…。これほどまでに人物の心情を違和感なく表現している雨の使い方は希少かも、と。

最後のエロは守屋がずっと抑えていた分、欲望が爆発しちゃう豹変ぶりが見もの。静かな激しさが逆にいやらしいです笑

読後感は萌でしたが、雨の描写が印象的でしたので、萌え×2にさせていただきました。

0

需要と供給の関係かもしれないね

高校時代の最後の年に友人として常に一緒にいた二人、卒業後も連絡をと言ったのに
守屋からは何の連絡もなく、自分からしてもいつもいなくて・・・そしていつしか
付き合いが無くなった二人は、三島が婚約者からマンションを追い出された事から
偶然の再会をし、半分強引に頼み込み作家をしてる守屋の所へ押しかけ居候する三島。

とにかく、守屋が分かりにくいのです。雨男みたいで、いつも彼がいると雨で
そして無口で三島に対する感情がなかなか見えてこない。
三島は、学生時代に仲良しだった為にかなり無茶な感じで居候するんですが
守屋は結局は三島に負けてしまう。
この辺で学生時代の付き合いが何気に想像できるような気がします。

前半では三島の誰かから頼ってもらいたいって言う病的なまでの依存コンプレックスが
話の中心になります。
身体の弱かった妹の面倒を見続けて、妹が生きがいになってしまった三島。
その妹が亡くなってからは、常に誰かに頼られるようにと明るく振る舞って生きてきた。

逆に守屋は家庭環境から一か所に留まる事が無かった事から人見知りも激しく
誰かとお互いに分かり合えるような付き合いは意識的に避けてきたような人で
唯一三島は互いに分かり合える存在だったように思います。
こちらは誰かに気持ちが向かってしまったら束縛も激しくなりそうな雰囲気で
構いたい人と構われたい人って感じが二人の関係には当てはまる気がします。

ただストーリーとしてはいったん離れてしまった友人が再会し、ぎこちないながらも
次第に昔と同じように、大人になってそれ以上の関係になり互いが必要な存在だと
確信するまでの過程を淡々と描いているようなお話でした。
あまりに盛り上がりに欠けるので、途中で飽きてしまった(笑)
内容的には好みの問題だと思うのですが、最後までハマる事が出来なかったです。

5

ちぐはぐ感がぬぐえない

作家さんの初単行本です。
親が転勤族で、ひとところに長くいないために人付き合いを諦めて、内向的な男。
父親が失踪、妹は病気でその入院費用を稼ぐために働く母の元、妹を励ますことで、周囲の人に好かれることで、人に必要とされたいと願ってきた男。
こんな二人が高校で出会って友達になって、進路が別れた大学で音信不通になり、偶然の再会を果たし、住むところを追い出された男が小説家として自立している男の部屋へ居候する。
簡単に二人の立場と冒頭のきっかけを書くとこんな感じ。
全部を読み終えて思ったのは、
作者さんが各人に性格づけをしている。
そして大体の流れを作っている。
こんなシチュエーションがあると萌えるというシーンを設定する。
だけど、それを全部つなげてお話にしたときに、微妙に人物とセリフと設定にズレと違和感を感じて、全体としてみたときに、接続部分がとても脆弱になってしまっている部分が見られる。
そこに、説得力の弱さを感じるのです。

三島はとてもよくしゃべる設定ですが、それでも肝心な部分が足りない。
守谷は元々寡黙で、本当は心に思っていることがあるのですが、話さないからそれを読者が推理する。
だけど、それをこうだったんだよ、という正解を全く示してくれなくて、この流れで察してくれという展開なので、物足りなさを感じてしまうのです。
三島の”人に必要とされたい欲求”その根本が愛されたい、母親との確執もあったようですが、そこ根本すら三島の独りよがりなネガティブな自分勝手な思い込みのような気がして彼に共感することができない。
守谷が自分はこういう人間だから体験したことは書けるが人の気持ちとか踏み込んだ部分が書けなくてスランプだという部分についても、そこに三島の察しがよければ汲み取れるものがたくさん込められていたはずなのに、ただの告白で終わっているし、
本音を晒すというシーンにおいてさえ、えっ!?それだけ?みたいな・・・
申し訳ないが、非常に作者さんが自分だけでわかっていて、あまり親切でないのです。

だからなのか、これが恋愛に進む過程について守谷の態度の変化も唐突ならば、三島の変化も唐突で、どうしたらそうなるんだ?と思わずにいられないのです。
あくまでも、二人はくっつくという前提の元で読まなければ、都合のよいところをだけをつなげて読めば、極端に言うと、三島が意識しだした後半からだけ見れば、それなりになってはいるが、前半から中盤がいかんせん・・・

三島が元同級生といるから友人感覚で、高校生気分ぽいのだとは思うが、どうにも社会人感覚が薄い。
また婚約者の存在というのも、必要あるのか?と思う説得力にかけてしまいました。
描きたい世界はわかるのに、どうにもちぐはぐ感が最後までぬぐえないのが残念でした。
辛辣で申し訳ないです!
あとがきで、作者さんが主人公たちの性格をたとえを出して解説していますが、確かにそうかもしれないですが、それがうまく表現できていたかというと・・・
そして、このカプは割れ鍋に綴じ蓋では必ずしもないと思えたということです。

レビュする側はいいたいほうだいで、本当申し訳ないです、
書く人の苦労を思うとこうした辛口は本当申し訳ないと思うのですが、こうした辛口だけでもないと思うので、頑張って欲しいです。


4

文章と自分との相性

タイトルに惹かれて手に取った、初読みの作家さん。

社交的な三浦と寡黙な守屋。
高校の仲の良かった同級生同士の10年目の再会。

最初文章が読みにくくて読みにくくて、
その上三浦の明るいというよりは図々しい性格にイラっとして、
何度か投げ出しそうになった。

読み進めるうちにそのもどかしさは大分軽減、
しかし、気持ち良く感情移入して読めるか?と言われると
残念ながら私にとってはそうじゃなかった。

明るく見えた三浦が抱えている孤独と必死に繕う自信のなさ、
もの言わぬ守屋の強い執着と不器用な想い、
雨をモチーフにした情景、
描きたいものは悪くないと思うのだが、
それが文章としてこちらに響いてこない。
あとがきを読んでも、しっくり作者の意図がこちらに落ちてこない。

文章と私の個人的なディスコミュニケーションということかもしれないが、
残念ながら評価としては中立です。

2

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