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没落侯爵・音彦と箱入り御曹司・湊(みなと)の恋も収録。
「カルピスって、本当に初恋の味なんですか?」
こういう、小林典雅先生のご本でしか出会えない台詞が好き…!
この作品もとても面白かったです!
前編は、鬼執事・竹之内と、彼の教育のもと令嬢のふりをすることになった画学生、来智のお話。
後編は、画学生への恋に敗れた夏見侯爵と、箱入り御曹司 湊のお話です。
どちらも大正時代を舞台とした短編ですが、登場人物が魅力的で、ストーリーもしっかりしていて、何とも幸せな読後感…(^^)!
おまけの短編に至るまで、典雅先生のサービス精神が満ち満ちていて、「ええもん見た、ありがたや…!」と手を合わせたくなります(笑)!
前編のレビューを書かれている方が多いので、後編の『侯爵と御曹司、ときどきモダンガール』の感想を書かせて頂きます。
以下、長文となり、すみません(>_<)
退屈しのぎから、箱入り御曹司・湊の絵のモデルになった侯爵、音彦さん。
世間知らずな湊が放つ、ズレた発言(本人は至って真剣)や、素直な表情に、呆れつつも次第に興味をひかれ…
湊が、父の過保護さから籠の鳥となっていると知るや、彼に変装をさせ、二人はお忍びで街へ!
帰宅後、この時の大正浪漫デートを、興奮して語りまくる湊は、本当に幸せそうで可愛いです。
典雅先生の作品は、語り口が面白かったり、ツッコミが冴え渡っていたり、私もそういうところが大好きなのですが、その根底には、子どものように純粋な感情が描かれているとも思います。
それは、「嬉しい!」という喜びや、「相手を喜ばせたい」という想いです。
『侯爵と御曹司、ときどきモダンガール』では、まさにその想いが燦然と輝いています。
湊を喜ばせたいという音彦さんの想いと、それにまっすぐに呼応し、嬉しそうに笑う湊。
二人が惹かれ合っていく過程には、何度読んでも新鮮な喜びがあります。
始めは、音彦さんの方が湊へ献身的に歩み寄っているように見えます。
けれどそれが破綻してしまった時、車椅子生活で、外へ出ることもままならなかった湊が「自分だって侯爵さまを喜ばせたい、気持ちを伝えたい」と、行動を起こして…!
このラストが本当に良くて、
恋ってこういうことですか!と目頭が熱くなります。
なお、こちらの作品では、恋に落ちる瞬間以上に、湊が「恋を自覚する」瞬間も素晴らしいので、その点も是非ともご一読を…!
登場人物の喜びが、こんなにまっすぐ伝わってくる小説に会えて良かった…。
二人のその後を想像する楽しさを、存分に味合わせてくれる作品です。
シリアスなお話や、泣けるお話より、今日は、優しく楽しい、幸せなお話が読みたいな、と思われる方には、とてもおすすめの一冊です!
私はこれ好きです。
確かに、もともとの小林さんの持ち味とも言える、いわゆる『典雅節』を期待したらちょっと物足りないかもしれませんね。
でも、会話(や心の声)が特に『イヤ、やっぱり小林さん』だな~という感じでした。
ただ私は、申し訳ないですが『典雅節』全開にされると、ちょっと濃すぎて鼻につくこともあるので、これくらいの方が楽しめました。正直なところ、花丸文庫の小林さんの作品で、ストレートに『好き!』と言えるのは『嘘と誤解は恋のせい』くらいのものです。
表題作は、もともとは雑誌掲載作(シャレード)ということですので、花丸の前になるんですよね。
小林さん、『実はヘンタイ』を書かせたらホンット上手いな~と思います。あれ!?褒め言葉になってますよね?
表題作も、執事・竹之内(攻)のキャラクターのヘンタイ具合がなんとも好みでした。執事攻も敬語(丁寧語)攻もあんまり興味ないんですが、コイツの前ではもうそういうのどうでもよくなりました。
来智(受)も結構好きですね。健気というよりはやんちゃで、(当時のことはわかりませんが、たぶん)ごく普通の男の子だと思うんです。それがわけがわからないままに巻き込まれて、『令嬢』としての特訓を受けるんですが、鬼執事に文句タラタラだったのが次第に惹かれて行く、その過程の気持ちの動きが自然でした。
うん、本当に気持ちがいいくらいのハッピーエンドでしたね。面白かったです。
私はそれよりも、書き下ろしの別CPもそれはそれでよかったんですが、表題作CPを丸ごと1冊分書いて欲しかったと思いました。まあSSはありましたが。
でも、トータルではよかったです。好きですね。
時は大正、所は帝都……
とくれば、読まずにはいられまいという、好物の設定だけれど
正確な時代考証やら大正ロマン歴史物語を期待し過ぎずに、
レトロな雰囲気のラブコメくらいに思って読むのがよろしい。
爆笑する程弾けてはいないけれど、軽くて読み易く
気持ちよく笑いながら楽しんで読める一冊でした。
お話は2つ+SS。
1つ目は、失踪した華族のお嬢様の身代わりで
お見合いをさせられる画学生と執事のお話。
2つ目は、そのお見合い相手のイケメン侯爵さまと病弱な深窓のお坊ちゃまのお話。
最後のSSは、画学生と執事のその後。
表題作の見所は、鬼執事への文句を防音室で一人で喚いているところ。
その前の落書きシーンもいいんですけれどね。
個人的には、2話目の方が好み。
侯爵さま、いいなぁ!
やんごとなきご身分ながら、案外苦労人、現実的でバランス感覚に優れた侯爵様と
世間知らずここに極まれりの純粋培養くんの、なんともズレた組み合わせが楽しい。
笑いながら、キュンキュンしました。
どちらもエロはそれなりに充実(笑)
そして、なんと言ってもオオトリは最後のSS!
酔った画学生の痴態がなんとも可笑し可愛い!
チン拓ですよ?チン拓!!
最後で大爆笑してしまったのでした。
今から90年前くらいのお話でしょうか。タイトルから、こりゃまたトンデモなお話なのかと期待ワクワクで読んだのですが、コミカル要素があまり感じられず、典雅節も薄い…。
でもやはり面白いんだよ典雅さんですもの。つる~~~っと読めちゃいました。
表題作は、平民画学生の池端来智(いけはたらいち)が、行方不明になっている男爵令嬢の身代わりをすることになるお話。
失踪した令嬢に偶然瓜二つなため、ちょっと粗忽者だけど純真で天真爛漫な男の子が、男爵家の鬼軍曹ならぬ鬼執事にしごかれながら、しっとりしとかやなお嬢様に変身させられるのです。たった一週間で。
感情を顕にしない機械のような執事の竹ノ内が、ときどき見せる優しさが気になって、だんだんと…という楽しい展開です。
わかっちゃいるけど、こういうのってやっぱ面白い。だってマイフェアレディだものこれもまた。
しかしもっと面白かったのは、同時収録作のスピンオフのほうでした。
表題作で、来智演じる野百合子様の見合い相手として登場した夏見音彦侯爵の救済措置が嬉しかったです。
とても良い味を出して、竹ノ内執事を食う勢いの存在感を見せていた侯爵様だっただけに、一冊の中にスピンオフがあるだなんて、なんというお得感!
一粒で二度美味しいを子供時代に刷り込まれてる世代としては、こういうのほんと嬉しい限りです。
その侯爵様、没落しかけの上級華族である自分の立場を認め、妙に達観したようなところがあるくせに、心の奥底には熱いものを隠し持っている感じがします。
飄々として日和見なことを言いながらも、現状がなにもわかっていないお姫様育ちの母親のために、資金繰りを考え行動したりと、実はできる男なのです。
そんな公爵様の心を掴んだのが、平民ではあるけども大金持ちの箱入り息子の財部湊(たからべみなと)。
溺愛しすぎの親に、今だったら間違いなく虐待と言われそうな育て方をされている湊は、生まれた時からお屋敷から外に出たこともなく、大好きな冒険もの小説でしか外界を想像することもできないために、ときどきおかしな言動が飛び出します。
「僕、人間の友達は来智くんしかいなくて…あ、『人間の友達は』って言うと、もしかしてほかに『河童の友達』ならいるのかと疑われたら困るんですけど」には吹き出してしまいました。
これですよ!典雅節。こういうのがもっとたくさん読みたかったけど、今回はあまりなかったんですよねえ。
出版社にもよるのかな。ディアプラス…ページ数が少ないですもんね。仕方ないか。
それでも短いなりに良い塩梅にまとまっているし、とにかくキャラが生きている。
この人達はもうとっくに亡くなってるんだよな~なんて思ってしまうほど。最初から実在してないってことはわかっているのに。
いやなこともスカッと忘れさせてくれる効果があり、今回も元気いっぱいいただきました。
ときどき開催「金ひかる祭り」
何故かツボにヒットする確率の非常に高い、金ひかるさんが挿絵の本。
今回は小林典雅作品。
後書きで作者様もおっしゃっているとおり、それ程「はっちゃけたお話」ではありませんが、「号泣ネタ皆無のストレスフリー」な「和みと癒しの読書タイム」。
登場するキャラ達や設定は、ちょっと浮世離れしているけど、時代の設定が絶妙で、こんな時代なら、それもアリかもとすんなり受け入れられるし、結末もそれぞれみんな幸せそう。
寝る前に、お風呂の中でサクッと読んで、気持ちよくおやすみなさいってできるお話。
そして、このお話の画学生・来智。
もう最初からこのキャラは下野紘さんの声で脳内再生!
箱入り御曹司は阿部敦さんかな。