ボタンを押すと即立ち読みできます!
酒屋が風呂屋に恋をした――。恥ずかしくて愛おしい表題作ほか珠玉の短編集。
短編集。
「近距離恋愛」
タイトルが最高。幼馴染から恋人へ、の距離感ドンピシャ。
ただの習慣で告白し続けた20年、いざ受け入れられてどうしたらいいのかわからない。ならお相手はハシゴを外されたの?それが違うんだな。
2人の大きな約束は、ひとりで行かない、せーので一緒に。
これから20年かけて近距離の恋愛を育てていく2人よ、がんばれ!
「影のわずらい」
これはちょっと難解。
父親のいとこと異常なほど感覚が同調する。
主人公がそれを嬉しい事とは思ってない事が伝わってきて、恋物語というよりも微かなホラー風味すら感じる作品。オチも特に無く、どう取るかはアナタシダイです。
「床屋のカノン」
一転、可愛らしいお話。
高齢者ばかりの土地で床屋を営むイケメン理容師と、わざわざ一山越えて散髪に来る少年との細く長く淡い結びつき。路線バスの廃止と共に来店は途絶え…
周囲は時と共に変化したけれど、2人は再会を果たします。
「発熱地帯」
壁の薄いボロアパートで、隣人の立てる規則正しい生活音を好ましく聞く絵師さん。
ある日壁が壊れて2人の生活が交わり始める…
微々BLのおもむき。隣の芝生は青くて褒めあって。距離近めの友人ってとこかな。
彼らは近距離友人だ。
「近距離恋愛後日談」
ちょっとは進んでる2人。さて、どっちがどっちのBL命題がありまして、ゲームやジェンガで勝負するけどまだ決まってません。
ジリジリ行くよ。
エロは無し。ノスタルジックなニュアンスがいい。キュンときます。
◾️近距離恋愛
とても珍しい始まり方で、終わり方も珍しくて、後日談含めスッキリしなかった。スッキリしない話も好きなんですけど、それにしてもというか。
◾️影のわずらい
全体的に暗いので、終わり方もストレートに読んだら"気持ちを確かめ合う"って流れなんでしょうがどうもホラー。
◾️床屋のカノン
この話が特に好きです。田舎の寂しさがギュッと詰まった最後に希望がある。表題同じくスッキリはしていないけれど、こちらは自分の好きなスッキリしなさでした。
◾️発熱地帯
こちらもスッキリはしない作品。個人的に、あえてこの先のラブは想像したくない。あくまでも人と人の関わりの作品で自分の中では消化したい。
みんながみんな同じことが出来ないから、世の中回ってるのよ。
伊東さんの作品に漂う不思議な雰囲気が好きです。
作画なのか、背景なのか、全体的に暖かいノスタルジックな空気感がありますよね。
【近距離恋愛】(2話+後日談) 萌
幼稚園の頃から風呂屋の河(コウ)にプロポーズしては、断られ続けて来た酒屋の大輔。
そんなやりとりが続いて20年、突然返ってきた「いいよ」という返事に大輔は…。
大輔が考えなし過ぎて…。
考えなしで、思い立ったらすぐ行動!なのに、いざとなると男らしくない大輔にモヤモヤイライラしてしまいます。
踏み出すと決めたときに覚悟も決めている河とは大違いだけど、これまで2人が一緒に過ごした時間の楽しさや、2人にしか分からないことなんかが回想を通じて伝わってくるので、「大輔、早く覚悟を決めろ!」なんてつい叱咤激励してしまいます。
幼馴染らしさが全開の描き下ろしが楽しいです。
【影のわずらい】 萌2
父の年の離れた従兄弟の覚(さとし)と三千彦は、昔から考えることが何でも同じ。
好きな食べ物、本や音楽、転ぶタイミングまでシンクロしている2人だが、三千彦には覚に言えないことがひとつあって…。
15才の年の差、海外を奔放に旅する覚と、就職活動がうまくいかず1年無職の三千彦。
立場や年の違いはあっても、ここまでいろいろなことがシンクロするってどんな感じだろう?
自分の分身がいるみたいでわくわくするんだろうなあと思う反面、ここまでシンクロするからこそ親しみ以上の感情も湧くんだろうなあとも思う。
お互いに言っていないこともきっとシンクロしてるはず、という余韻のあるラストでした。
【床屋のカノン】 萌2
寂れた田舎町の美容室を父から継いだ宗祐の店に、隣町から自転車でやって来た少年・鹿ちゃん。
夏は自転車、冬は電車で鹿ちゃんが来るのを楽しみにしていた宗祐だったが、電車の廃線が決まって、高齢だった常連客も1人、2人と減っていって…。
長髪の鹿ちゃんがイケメンすぎる!
長髪好きにはたまりませんよ。
この先も読みたい!雰囲気が素敵すぎる短編です。
【発熱地帯】 萌2
世界と窓や壁を一枚隔てて、ボロアパートの一室で自分の世界を描き出すイラストレーターのミヤモトは、隣人の峯の生活音と心の中で会話する日々。
押し入れを隔てて向こう側にいる存在だった峯が、ある日押し入れの壁を破って、ミヤモトの世界に入って来て…。
「当たり前」をふつうにできるだけの峯と、「当たり前」が出来ないけれど絵を描けるミヤモトという対極にいる2人が親しくなって、自分にあって相手にないものを認め合いながら、世界がじんわりと広がっていくような作品。
ボロアパートの昭和っぽい雰囲気が良いです。
ちょっと古いような雰囲気が好きな方にはたまらない1冊です。
その空気感のせいで、描かれている以上のことを妄想してしまうくらいの居心地の良さ。
この世界に浸っていたくなります。
◆近距離恋愛(表題作)
この作品のページ数がもっと多かったらなぁと思わずにはいられませんでした。先のことを何も考えずに、ただ河と一生仲良く遊んでいたいという理由だけで、幼い頃から彼に結婚しようと言い続けた大輔ですが、いざ本当に受け入れられたらどうしていいか分からない。でも、河も大輔が考えなしに求婚していたのは分かっている上で、自分はそういう意味で大輔を好きだと伝えるんですね。
その後は少し気持ちがすれ違って寂しいけれど、大輔も河のことは大好きだから、恋人をやってみようと決意する。そんなすぐに2人の日常ががらりと変わるわけではないけれど、今までとは少し違っていて。幼馴染だからこそ距離のとり方が難しいでしょうけれど、互いを知り尽くしている2人なら、なんだかんだ上手くやっていけるだろうなと思います。
◆床屋のカノン
床屋や美容院を舞台にした作品って、素敵なものが多い気がします、個人的に。髪を切るのに失敗して、勇気を出して床屋に来た癖っ毛の少年がとても可愛くて。そんな彼と、大人な美容師が徐々に関係性を築いていく。一度は離れても、少年の方から探してくれて。少し苦味もある作品でしたが、そこもいいなと思いました。
短編がお上手ですね。読後、余韻が残るお話が多くてなかなか良かったです。
小さい時から兄弟のように仲良く育った幼なじみ。青年になって付き合うことになったら、どうやって恋愛していいか分からない、最初はそんな二人のお話でした。
酒屋さんの息子と、お風呂屋さんの息子。下町情緒がいい。
他に、何か不思議な感覚を共有する年の差親戚同士のカップルや、ボロアパートのお隣さん同士のお話がありました。
その中で、かっこいい床屋さんに憧れる天パの少年との交流を描いたお話が印象的でした。
おすすめです。