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表題作聖夜 榎田尤利作品集

縞岡
17歳→27歳→37歳
雨宮那智(のちに森下那智)
17歳→27歳→37歳

同時収録作品名前のない色

藤野渉
25歳、出版社編集
水窪あきら
29歳、画家

その他の収録作品

  • GRAY

あらすじ

設計事務所で働く縞岡は、
婚約者と訪ねたマンションの内覧会で、
十年ぶりに雨宮那智、アマチと再会した。
十六から十七にかけてのふたりの時間は、
北の地の短い夏のような輝きがあった。
長い空白の時間を越えて、再会したときから、
縞岡はアマチに触れたくてたまらなくなった。
那智はシマが恋しくてたまらなくなった。
会わないほうがいい。でも、会いたい。
会いたくて、たまらない──
傷つけながら、傷つきながら、恋は深まり……
『聖夜』『名前のない色』に書き下ろし『GRAY』を同時収録。

(出版社より)

作品情報

作品名
聖夜 榎田尤利作品集
著者
榎田尤利 
イラスト
ヨネダコウ 
媒体
小説
出版社
大洋図書
レーベル
SHYノベルス
発売日
ISBN
9784813012634
4.2

(58)

(34)

萌々

(14)

(5)

中立

(1)

趣味じゃない

(4)

レビュー数
9
得点
242
評価数
58
平均
4.2 / 5
神率
58.6%

レビュー投稿数9

キャッチーではないけれど。

先生の作品集をぽちぽちと味わっておりまして。

二つのストーリーが収録されています。「名前のない色」は、ダメダメなイラストレーターと彼を担当する編集者の組み合わせ。ノンケ攻め×ゲイ受けです。たまたま読んでいた漫画家シリーズ、ルコちゃんと東海林を彷彿とさせました。

自分の好きな人に忘れられない人がいて、もしその人の名前が自分のものと同じだったら…。初めて恋に「落ちて」しまった藤野の、嫉妬混じりの片思いにきゅーん。恋っていつからが始まりでいつ終わるものなのだろう?自然消滅を待たず、自ら決別する水窪に男気を感じました。先生に限らず、小説家や漫画家さんが描く出版業界のお話はリアリティがあって興味深い。特に編集者さんのご苦労が…。それぞれの抱えた苦悩が切ないけれど、読んでいて心地良かったです。終盤、水窪が砂浜で海のスケッチをするシーンが印象的でした。

もう一つ、表題作がこれまたある意味壮大な物語で、最後に収録されている「GRAY」まで合わせると計三十年の時を経た初恋ものです。冒頭は冬の北海道が舞台。出身地なので方言が気になりましたが、特徴を捉えていて雰囲気出てるなーと。しかし、長いけれど全然読んでいて苦にならない、どんどん引き込まれていく物語でした。コレですよ、先生の手腕は。シリアスなシーンも重すぎず、でもちゃんとインパクトを残してくれて、続きが気になって読み始めたら止まりません。

なんていうか…先生には、ご自分が創られるキャラクターが代弁する、人間性への絶対的な信頼があるような気がするんですよね。シリアスでもどっかしら明るさを湛えているというか、微かな希望とパワーを感じるんですよ、先生の作品には。登場する女性キャラも嫌味がなくて、大概惚れちゃうし…。そんなこんなで毎度のことながら最後まで一気に引っ張ってくれて、とても読み応えがありました。

北は北海道から南は沖縄まで、旅した気分になれる物語。もちろん、濃くはないけどBLとしても満足させてくれると思います。榎田先生の作品を読んだことがなくて、でも先生らしい作品をガッツリ読んでみたいと思ったなら、こういった作品集から手を着けるのも悪くはないかもしれません。いかんせん多産な作家さまですから(汗)。

10

4度泣く30年愛

あれ?
この本、なんで未評価・初レビュー?

旧版「聖夜」に初期作品「名前のない色」と、「聖夜」の後日譚の書き下ろし「GRAY」を加えて、2段組380ページに及ぶ読みでのある一冊。

「名前のない色」
絵描きと編集者のすれ違い愛。
こちらのすれ違いは、夏から秋へ。
一夏の激情。
本の約半分はこのお話で、これはこれでよかった。

そして表題作「聖夜」。
17歳、27歳、37歳の別れに再会。
それぞれに泣かされて。
書き下ろしの「GRAY」。
ようやく一緒にいられるようになっての47歳。
こういう長い愛の物語に、最後に書き加えるべきお話はこうでなくっちゃと、とどめに泣かされる。
だれもに、幸せなクリスマスプレゼントが届きますように。

7

お願いだから是非読んでみて!!

どうしよう。。。この作品が良すぎて、その後買いだめしてある小説を何冊か読み始めたものの気が乗らない。。。

一冊に丸々二作品込められています。地に足のついた人物設定で、余計に感情移入したのか、聖夜は特にグッと来ました。

女を愛する男と、男を愛する女だけを正とする社会が世界が、変わっていきますように。できれば今すぐにでも。そして、誰もが自分に正直な恋をしていけますように。

7

表題作も同時収録作品も、どちらも素晴らしいです!

レヴューを書くために再読したのですが、この一冊は本当にすごいです。
2作品収録されていれば、どちらか一方は好きだけどもう一方はそれほど好みじゃない、とかありませんか?
この2作品は、どちらも素晴らしいです。優劣付けられません。
どちらも心に残って、しばらく現実に戻れませんでした。
初めて読んだ時よりも、今改めて読み返して、さらにぐっと心に響いた気がします。

夏場は仕事が手につかなくなる画家・水窪ミサと、入社三年目の編集者・藤野渉の『名前のない色』
高校の時に親の離婚で引っ越して行ったアマチと、10年ぶりに偶然再会したシマの『聖夜』
『聖夜』はさらに『聖夜』『青い鳥』『楽園』『GRAY』と繋がっていきます。

どちらも、不倫や浮気が絡んでくるので、苦手な方もいると思います。
私も苦手な方なのですが、この2作品はそれほど嫌悪感が湧きませんでした。
女性の登場人物はBLという作品上、影が薄かったり、邪魔ものだったり、主人公たちの幸せの障害だったりします。
ですが今作では、その女性が強いし、逞しいんです。彼女たちの人物像に厚みがあって、魅力的だと感じました。
むしろ、奥さんがいるのに浮気に走る男どもが薄っぺらい。司馬も内藤も、私は魅力を感じなかったけれど・・・けど、少なくとも付き合っていた頃、水窪やアマチは彼らに惹かれるものがあったのだと思います。
好きになるのに明確な理由なんてないし、長く付き合ったら情も湧くし、別れても忘れることが難しい、という彼らの姿にとても共感しました。

何が正解かなんて多分一生分からない。傷つけて、傷ついて、それでも生きていかなきゃいけないなら、自分は誰の隣にいたいのか、誰と一緒に生きていきたいのか・・・どちらの作品も、登場人物たちが悩んで答えを出すまでが丁寧に書かれています。
大きな事件は起こりません。登場人物の人生の岐路に居合わせる、そんな作品です。
派手さはありません。でも美しく、なのに現実的な物語です。
心に響く作品を求めている方に、是非読んでいただきたいです。

5

古さを感じさせない

作品自体は古いし、出てくるアイテムや事象も時代を感じます。
携帯が無いから公衆電話がよく出てきたり、就職難だったり、阪神淡路大震災だったり。

でもそれが気にならない作りになっていてさすが榎田さんだなと。
個人的には名前のない色が良かったかな。赤が認識しにくいという事象は想像すらできなくて、気にしないようにしていた、押さえ込んでいたものが水窪の才能の復活によって暴かれてしまったことが辛かった。
ただ、それが故に二人の関係が進んで行ったとも考えられるので、これからの二人が幸せになれると良いな、、、、

聖夜の方は、二人とも思いが強い。あれだけの時間(20年?)も寄り道しながらも忘れきれない強い思いって、自分には想像できないし、体験もして無いから本当に凄いなと思う。最後は、シマの娘や義理の父とも親戚付き合い?以上に関係を良好に築けていて、、、、
籍を入れることのメリットというか、入れないことのデメリットを語る場面が印象的でした。ICUに入れない、というところは、那智にも大きくインパクトがあったのだと思います。愛する人の側にいることが認められない身分…だから最後の納得に至ったのかなと思う。

今の時代であれば、病院によっては、パートナとして認められるところもあるだろうし、同意書も認めてくれるところも出てきてるんだろうけど。
それでも、普通の夫婦(そこに愛情が無くて破綻してても)よりも病院との関係や沢山の努力がないと難しいんだろうな。

良い作品でした。

1

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