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リクローとヤス、ふたりの一筋縄ではいかない最終章、文句なしの神評価です。
とにかくネームの勝利だと思います。木下センセーさすがです。
リクロー目線で終わった二章ラスト、リクローとヤスの関係はリクローの願い通りになり、このままうまくいくんじゃないかと思わせておいて、そうは問屋が卸さない。
初っ端、ヤス目線で話が進んでいくのが大きな鍵となってます。
ヤスのやらかしっぷりがよくわかる最終章最初のモノローグ。
結婚まで考えてた相手を怒らせて別れてもその理由がわからず、果ては「恋愛運がないらしい」。
後輩・加藤の泣き脅しに同情して「1回だけだ」と身体を許して、「正直、流された。まあやってみたら案外気持ちもよかった」。
リクローに対しても、友だち同士から恋人同士になった途端、いろんなことが「めんどくせーな!!」。
まさに『THE オトコノコ』ですよね。すっごくリアル。
逆にリクローは、ヤスを大事にしたくて堪らない感じです。優しくしたいし気持ちよくしてあげたい。
その純粋な恋する気持ちとは相反する形で存在する男のプライド「ヤスの初めての男よりもイイって思って欲しい」これが曲者。
なんせ、加藤と致した時のヤスの感想が「気持ちよかった」ですから、リクローが「負けてられない」と思うのも致し方ない。
ちぐはぐなふたつの思いを抱えながらも、なんとかヤスに自分を恋愛対象として見て欲しいとがんばるリクロー。
そんなリクローの切羽詰った想いに対して、ヤスのモノローグが
「俺、殺されんじゃねーかな」
「なにクセエことしてんだバカ」
「どんだけ恥ずかしい奴だよおまえ!!」
てな感じで、微妙に伝わってない。
『THE オトコノコ』なヤスは、恋する男(リクロー)の一生懸命を容赦なくぶち壊してくれてます。
まあ、10年間友だちやってたら、急に甘くされたり大切に扱われたりされると「キモっ」と思ってしまうのもわかる気がします。
それでもやっぱり、ヤスにはリクローから注がれる溢れんばかりの想いは十二分に伝わっていて、ヤスもまたその想いを受け止めたいって思ってる。
ヤスがリクローを好きだから、単純に大好きだから応えてあげたいっていうのは読んでてすっごく伝わってきます。
でも、リクローにしてみれば、とにかくヤスには自分に恋して欲しい、恋愛の対象として好きになって欲しい、その想いが強いんです。
なんといっても10年分ですから。
この【好き】の捉え方の違いが生み出す様々な問題こそが、友だちでもあり恋人でもあるふたりをラブラブモードにはしてくれない。
好きだって言ってんのに、何で信じられないかなあ、とか。
どうしてこの場面で地雷踏むようなセリフ言っちゃうかなあ、とか。
めんどくさがらずにもうちょっとちゃんと向き合えばいいのに、とか。
地団駄を踏みたくなるようなこのもどかしさ。
友だちだから「好き」という言葉を手放しで信じることが難しいし、酷いことも平気で言っちゃうし、面倒臭いからまあいいかと思ってしまう。
そういうところがすごく上手く描かれてて、長年の友だち同士から恋人同士になるのって、実はすごく厄介なのかもと思わせる説得力。
だからこそ、この強靭な「友だち」の壁を乗り越えることができたふたりは、普通の恋人同士以上の素敵な関係が築けるんじゃないかと思います。
そしてゆくゆくはヤスにも、リクローが味わったような「嫉妬や独占欲でぐるぐる悩む」を経験して欲しいです。
(その片鱗らしきものは少々描かれてましたが、リクローのぐるぐるに比べたら生温いですよね)
いや、実に人間臭くて愛おしいふたりでした。
もうー、ふたりまとめてぎゅっとしたいくらい愛おしい。
あと、どうか加藤くんを救済してあげて欲しいです!あいつすげえいいヤツだから!
時々無性に読みたくなってしまう大好きな作品です。
全体的に甘さ控えめな2人の会話に、 ”いかにも男同士の友情の延長線上の恋愛” な感じがめちゃめちゃ見て取れてむずむず萌えます。いざ恋愛対象となったときのぎこちない言動や、さ~ヤるか!っていうムードのないところや、ヤッっちゃった後の照れくさい雰囲気や、どっちがどっち(攻受)問題とか!!全部大好物です。
冒頭、ヤスが今までの自分の恋愛遍歴を顧みて、、最初のセッススは正直”疲れた”(←オイ!)、その後の彼女たちとのことも、どうして始まってどうして終わったのかあんまり覚えてない、揚げ句に”自分は恋愛運がない”と結論付けるところが、もう、ダメじゃん!って感じでした。正直、この人、リクローが10年を捧げる価値はない人なんですけど、、でも10年捧げたからこそ、このダメな人がやっと、いかに自分が今までの人生で”調子こいてたか”って気づくんですよね。正直、リクローの執着愛が、ヤスを更生させたと言っても過言じゃないような気がしました。本当におめでとう!
ダメダメなヤスが、10年来の親友の本心を初めて知り、改めて自分の過去を振り返りながら、男が男を恋する気持ちは覚悟が違うと悩む場面が印象的でした。あと、リクローの上司・片瀬さんの大恋愛の教訓、押してダメなら引くは嘘!引いたら駄目、とか、リアルに心に響く名言が随所にちりばめられてるのに、肩の力を抜いて楽しめる、圧が少なくて読みやすい、名作だと思います。
もうもう!!何度読み返したことか!
リクローの切なさが…ああああぁぁ泣ける~!
後輩当て馬くんはめんどくっさい奴なんです。
でも彼がいなきゃリクローは踏み出せなかったかもしれなくて。
だからうざ!ってなるんだけどそれなりに愛しく思ってますw
元は期待を持たせたヤスタカのせいでもあるしね。
はっきり言って最初っから最後まで地味です。
ただのリーマンで、モテモテとかキラキラとかありませんし。
でもそこがたまんないの!
木下けい子先生の作り上げた雰囲気が素晴らしい~。
彼らはそろそろ老眼鏡の相談とか始めるのかしら~なんてたまに思っちゃいますね。
木下けい子先生の作品の中でも、トップ3に入るぐらい大好きな作品です。
全三作の最終章であるこちら。本当に文句なくの神評価。
最初に読んだ時は、攻めの陸郎目線で保孝の無神経さにイラッとしたり陸郎を応援する気持ちが強かったのですが。
久々に読み返してみて、いやこれ、同性で、長年親友だと思っていた相手に突然好きだと言われた方もめちゃめちゃ混乱するし大変だよな!?と。
想いをぶつけられた方の戸惑い、怒り、なんで「友達」じゃだめなんだ??という疑問や願い、そんな保孝の心の動きがリアルに丁寧に描かれています。
陸郎と保孝、どちらの気持ちにも理解できる部分と、自分勝手だな〜と憤りを感じる部分があって。
作中の保孝の「男同士の恋愛は異性との恋愛とは違って、覚悟が必要だ。」という独白が、全てを語っている気がします。
今まで読んだ木下先生の作品の中で一番好きかも。本当に安直なシーンがまったくなくて、ノンケで親友だった同性に一方が告白した後、2人の関係性がどんな風に変化していくか、3巻に亘って丁寧に描き出されていました。どちらかがより悪く見える描き方でもなく、どちらの心情にも共感できるようになっていて、質の良いBLを読んだなぁと非常に満足です。
保孝の隙を突いて積極的に攻めることを決めた陸郎。でも、保孝を悩ませたいわけじゃなくて。負の感情を昂らせる彼の姿を見て迷いが生じ、やはり自分は恋人にはなれないと身を引こうとする。一方で保孝は、関係が進むにつれて自分の鈍い所がより相手を傷付けていることに気付く。鈍いのは性質だから悪いことじゃないけれど、気付いた時は弁解したり、相手をフォローしたりすることも必要かもしれませんね。それはそれ、だけど、保孝が自分の好意をまったく信じないところも問題。最後は保孝の方から動き、10年分の片想いとの垣根を超える。彼の台詞が真っ直ぐで、とても印象的なシーンでした。一番の親友でありながら恋人。2人なら上手くやっていけると思います。