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ビーボーイからは2冊目の単行本。
この表題作、PINK GOLD 掲載の単発からアンソロでのテーマに沿ったお題で展開していくシリーズ短編。
登場人物に詳しい設定やら、恋愛の気持ちの変遷やらストーリー重視展開するものではなくて、あくまでも「ご主人様と犬」というシチュエーションを徹底的に貫いている潔さが、かえって読みやすさとシチュを楽しむという特化を見せています。
また同時掲載の作品もうまくまとまっていて、前作単行本よりいい感じの仕上がりになっているのではないでしょうか?
身体と情報を売っている男の元へ半年に一度やってくる男。
彼の情報を引き出そうと失敗して、飼い犬にされる情報屋、といった関係。
この”ご主人様”となった人物は何をやっているのかは全く不明ですが薬品や医事関係の仕事?と思われます。
彼等に関してわかっている身の上はこれだけで名前もありません。
こういうのって、かえって見せたいものが明確ではっきりしていて非常にわかりやすいです。
なんで犬にしたいと思ったかとか、そこに愛があるのかとか、恋愛はどうなんだ、とか全て取っ払ってますから。
ご主人様になった男は、飼い主に噛みつく犬を調教するのが楽しく、執着しているし、
犬となった男は、この男に反発しながらもいいなりにならざるを得ないのを不本意と言いながら、結構楽しんでいるようにも見え。
受けるお仕置きの快感に流されながらも、一筋縄に従順になりきらない部分が魅力と思われます。
PINK GOLD の時はさほど印象に残らなかった作品でしたが、今これを単発でみると、局部プルンとか(w)付きあげられてる時に揺れてるんだという表現があったのか、と思わずニヤリとするコマがあるのに気がつきました♪
【プライベート~】や【one year after~】では飼い主が犬で遊んでるのを面白がってる様子が、何故か楽しいです。
絵の画風がシリアスなので、一見すごくエロそうに見えるんですけど、実際のところそんなにエロい感じはしないので雰囲気でそういう風に見える、エロ系には向いてる作家さんなのかもしれないですね。
【混沌は矢の先に】大学の後輩と先輩の再会モノ
後輩が好きで卒業式の後、後輩を襲ってヤリ逃げ(というかセクハラ?)してそのままだった先輩ですが、この後輩が同じ会社に入ってきてつきまとってくる。
ひょっとして恨みに思っていて復讐されるのではとビクビクしていたのですが、まるでなかったことのように接してくるので安心していた矢先・・・
一見、シリアスな復讐劇を予感させながら、実は後輩はヤンデレに育ってしまったという、事後相思相愛、先輩にしたら片思い脱却?なお話。
最初を間違えちゃったんだよね、という、よくある展開ですが、
この作家さんのシリアス調の絵柄からハッピーエンドに持って行くと、すごく意外感を感じてこのギャップがいいのかもしれないです。
【がむしゃらロンリー】猫かぶりが本性を表わす話
カマトトぶりっこで男を手玉にとってきた主人公・瞬の現在の最大の危機はアパートを追い出されて宿がないこと。
ナンパも失敗していよいよ困った時、馴染みのバーのマスターが紹介してくれたのはバーテン城崎の部屋。
一宿一飯の恩義を色仕掛けするも、範疇外と一刀両断。
城崎にだけ見せた本音の顔が気に入られ、そこに居候するうちに城崎のことばかり考えるようになり・・・
かなりコメディです。
だけど絵柄がシリアスなので、軽い感じがしません。
きっとすごく面白い話だと思います。(実際面白い)
この作品もギャップが楽しいのです。
これこそホンマもんのSかと思えるような謎にみちた攻め様が登場してます。
どうやら医療関係者みたいだけれど、正体は最後まで解らなかったけど、
情報を売って生きてきた受け様が、ターゲットにした攻め様に返り討ちにあって
攻め様専用の犬にされちゃうストーリーです。
ダークなんだからエロ重視なんだか、かなりコアな印象の作品。
だからと言って痛すぎて~~なんて雰囲気でもないから不思議ではあるのですが、
見えそうで見えない気持ちが悩ましくもあり、主と犬の関係ではあるけど、
このワンコさんは、野良が長いのでしつけは一生モノと見た(笑)
それ以外にも高校時代の先輩後輩の再会ものがあるのですが、互いに執着しながらも
ボタンの掛け違いのように普通の恋愛からはかけ離れているようなカプもの。
切なさと相手への焦がれる思いが苦しい感じで描かれている気がします。
ゲイバーのバーテンとお店のお客でいつもガチで猫かぶりを標準装備している受け様との
駆け引きめいたストーリーはコミカルで面白かったです。
表題作含め3つの話が収録されています。
「ドッグショーシリーズ」
こちらはわりと上級者向けかと。
Sな飼い主と、口答えはしても勝てない犬(情報屋)の話です。
Sサイドの行為に愛を感じないと読むのがつらいでございます。
いろいろ弄ばれて絆される関係に理解がないわたしには難解でした。
「混沌は矢の先に」
こちらは怖かったです。
会社で再会した大学時代の先輩後輩。
後輩に想いを寄せていたものの、素直になれずひどい仕打ちをしたまま逃げた先輩のもとに後輩が新入社員としてやって来るのですが、中盤で先輩が後輩の態度を都合良く解釈してひとり、吹っ切れたー!ワーイ!みたいになっているのが滑稽でした。
執着も行き過ぎると恐怖でしかなかったです。最後のほのぼのムードを楽しめない程度には不快に怖かったです。
「がむしゃらロンリー」
唯一ふつうに読めた作品。
浮気が原因でフラれた外面大魔神と、行きつけのゲイバーの店員。
ある事情から居候になり、いろいろあってくっつきます。
全体的に美しい顔の時とそうじゃないときが半々で、決めゴマでそうじゃないときが結構あったので残念でした。
その後の美麗な画力は、まさに鍛錬の賜物ですね。
表題作がSMってことで、絵も綺麗だしPINK GOLDに載った作品だし好きな感じのものが読めるかな?と思って買いましたが、表題作は残念ながら期待ハズレ。
これってSMなんだろうか?単なる一方的な凌辱ではないのかな?
自覚済みのMをとことん満足させるか、自覚のないMからMっ気を引き出してこそSMモノを読む醍醐味だと思うので、ただナイフで斬りつけられてる、人前で無理やり漏らさせられてる姿だけを見ても萌えないです。
どっちかというとこういうのはリョナかなと思いました。
…という理由で表題作はあんまりだったんですが、同時収録作の「がむしゃらロンリー」がいい感じのドタバタコメディで面白かったです。
ネコ被ってゲイバーで人気者の受けが、店のスタッフの攻め(ゲイ)には全く通用しなくて、ネコがどんどん剥がれてっちゃうお話。
綺麗な絵柄で描かれるコメディって、それだけでシュールさが何割か増すと思うw