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すべてが澱んだ景色の中、アンタだけがクリアだった
彼は優しくも残酷な形で人生の楽しさを教えてくれた。
大学卒業後、やりたいことも特にない平凡なヒロセがバイト先の居酒屋のトイレで出逢ったギタリストのカナさんは「人生は永遠じゃないんだぜ」と楽しそうに生きていた。
その眩しさに惹かれるヒロセの想いに引きずられるように私も目が離せなくなりました。
語り手であるヒロセはカナさんと共有した短い時間とその後、カナさんのバンドでギターを弾くようになってからの暮らしを詩でも読むかのように淡々と語ります。
さりげなく交わされる仲間同士の会話から零れるカナさんの記憶。
ヒロセもカナさんの表情や言葉を味わい尽くすように反芻します。
残された彼らが新しいバンドを楽しみ日々を過ごす、それだけの話がとても愛しく思える。
時間には限りがあること、人どんな状況でも楽しむことができるということを彼らに教えてくれたのはカナさん。
カナさんへの愛しさの名残の積み重ねで綴られる日々が静かに描かれています。
死ネタにつきものの激情や涙とは無縁に話は進みますが、それ故に切なさと優しさが力強く響くのです。
サポートメンバーのキヨの存在がとても良いスパイス。
ベースのゆーしのことが大好きな彼だけは他の3人とベクトルが違うので考えがニュートラル。
絶対的な存在であるカナさんに対する少々の抵抗が可愛い。
騒々しさも「生」を意識させます。
楽しさを見つけたヒロセに逢いにきたカナさん。
ヒロセといる時の彼は少し儚げで、それでいて楽しさへ導く姿に涙が出ました。
同時収録のレスラーと料理人の話、彫り師×アパレル青年イチャラブを描いた2編はコメディタッチ。
ガチムチのしっとり柔らかい体の線に昔の藤原カムイの絵柄を思い出しました。
もう一作【月翳】は体が弱く徴兵を逃れた高槻とその友人:内藤の始まりそうで始まらなかった話。
高槻は昔、2人で遊んだ海の近くに出征できなかった自責の念と共にずっと息をひそめて生きていた。
内藤を想い内藤と眺めた月、海、夜光虫の光をその瞳に留める為にとった彼の行動。
高槻は光を失ったのではなく失わないように瞼に閉じ込めた…内藤への想いと一緒に。
結局、どうにもならなかったこの話、月が照らす冷えた余韻が染みます。
表紙のカナさんと視線がぶつかって即決で手に取った一冊。
方向性は違うのに一冊まるっと独特な世界観で面白かったです。
絵柄を含め好き嫌いは分かれそうですが私にはドストライク!
非常に狭き門を潜り抜けて、やっとの思いで辿り着いた境地、という感覚で読みました。
四つの物語が描かれている一冊で。
それぞれに、非常に個人的な萌えポイントを刺激するお話です。
この本一部がものすごく好きか、丸々ダメかが普通な感覚、という気もします。
「カナさん」
私は昔からバンドマンが大好きで。
そういう意味でも、お話の内容的にも、本当に私のドツボねたでした!
好きな事に命を捧げて生きているカナさんと、生きる目的を見つけられない流されヒロセくん。
いつもの呑み屋のトイレへ行く度にバッタリ出くわす二人。
カナさんは客で、ヒロセくんはトイレ掃除をしにきた店員で。
カナさんの体調が少しづつ悪くなるのを、一人目撃してしまうヒロセくん。
秘密の共有から急接近していきます。
ヒロセくんちには黒猫がいて、カナさんはその猫に行動が似ていて可愛い。
しかもカッコ良くて、羨ましくて、嫉妬してしまう部分もあって。
大好きで憧れのカナさん。
そんなカナさんと出会って近づいて。
ある日、ふっ…と、消えてしまった。
カナさんの置き土産(ギター)がきっかけで、ヒロセくんはバンドに仲間入りします。
パンクやるには、超地味でマイペースすぎるキャラですが(笑)
カナさんは一話目しかいないのに、その存在感は四話までずっと続きます。
正直、ヒロセくんはこれからどうなっていくのか、心配ではありますが。
ラストの空気から、非常に低体温な感じでマイペースに生き抜いてくれる気がします。
しかし、バンドメンバーだけあって、個性豊かな面々。
全員が素敵なキャラすぎて、ギュッと抱きしめていたいお話でした。
「たべものではありません」
タイトルの真意は、読み進めてはじめてわかる『食』にまつわるお話。
デスマッチレスラーの雫と、カフェ経営者の二三四。
二人は大学からの親友。
いつも雫の食生活の心配ばかりする二三四は、まるでもうすぐ食べる家畜のように雫との会話をしだす。
普段過激なステージに立つわりに、二三四の食肉ジョークにドン引きする。
しまいには、レスラーは精神的なゲイとまで言われ…。
なんだか、意識しはじめてしまう?
BL漫画の新境地?
どちらかといえば、ゲイ向け漫画。
でもH無し、みたいな感じです。
いやあ、面白い!
格闘技興味ない私でも読める。
流血なのに楽しそう!
食べる、の二三四の発言は、昔観た怖い韓国映画(301 302←という1995年の映画)を思い出して、背中がヒヤリとしました。
実はカフェレストラン経営の二三四は、非常にサディスティックな人のようです。
あ~、面白いかった。
他に、
「月翳」
戦中戦後を生きた二人の男のそれぞれの生と性。
あの夏の想い出を閉じ込めたものは…。
「外道」
アパレル関係なのに、タトゥーを彫られる美しい肌の、一見任侠風な男と。
タトゥー萌から彫り師になった男のベッド上のお話。
ラブとエロと萌えの調和がとれたお話を欲する、ありのままの自分と。
こういう個性とか深みとか濃厚な感覚を欲する、もう一人の自分がいる。
それぞれは、両極端であり、どちらも私自身で。
とにかく好きです、この本。
上手く伝えられない自分の言葉の未熟さが悔しいな。
絵はリアル男子な感じで、美形男子の世界からは程遠い。
だから、苦手な人も多いかも?
私も、これをすんなり読めた事に、自分でも驚いたくらいです。
あっでも確か、トジツキ先生の本は他にも読んだ気が?
とにかく、大好きな、個性的なお話達でした。
多分この一冊は、Love抜きのボーイズラブと言う奴です。
愛を綴る前に何かに首根っこをつかまれて押し倒される、
そう言うBoysLiveの中にある数コマの描写集です。
性を描いたシーンからLoveが伝わらず、それ以外の些細な
コマの切れ端からあざとい欲の薫りが伝わるのはこれいかに。
視点を変えればこの一冊、作者さんから読者に対する
言葉攻めのオンパレードでございますよ。
そこを乗り越えれば極楽浄土が待っていると言う保証は
出来かねますが、天国への階段の入り口は見えるやも
知れません。
わたし、トジツキさんの作品を読むのは初めてだったのですが、読み終えての感想は「素敵だ…」の一言に尽きます。
今までトジツキさんの作品を読んでなかったというのも、大した理由はなかったので、どうして今まで読まなかったんだろう!!となんとなく悔しいという気持ちでいます。
アマチュアバンドメンバーを中心とした一連のお話………他の方もおっしゃっていましたが、表題とされている「カナさん」は特別に派手なことをしているわけではないけれど、やりたいことを思いっきりやって、すごく自由で、駆け抜けるように生きてて、「永遠じゃない人生」を謳歌しているのでした。キラキラしてました。巻頭作で亡くなってしまったのですが、存在感はずっと残りました。読み終わっても、です。
正直もっとカナさんがどんな人なのか知りたかった。だけどカナさんの周りにいた人達にとってカナさんはどのような存在だったのか、これは掴むことができるので、これはこれで深みがあるのかな、と…。カナさんという人間がどんなものだったのかということを想像することにおいての、深み…
キヨくんと、ゆーしくん、結局どうなったのかなあ??あのふたりはみててほっこりしました。
レスラー君のはなし………正直初見で「ビジュアル……」と思ったんですけど、読んでいくうちにぜんぜんアリになりました。
デスマッチプロレス?の世界は詳しくわからないですけど、ストーリーを読む上では特に嫌悪感はなかったです。主人公レスラー君はなんだか血生臭ーい世界に住んでるようでしたが、「胃袋掴まれてるから離れられない」だなんて感情に素直でかわいらしいなあと思いました。(笑)餌付けしてるカフェのオーナー君はさらりと、グロテスクな発言を飛び交わせていました。自分の作った食べ物が、他人の血となり肉となることに興奮する…なんだかわからなくもないです。(あれ、変態…?w)自分の仕業で人の体を作りかえているって考えると感覚的には確かに快感なのかも…(笑)
大戦直後を舞台としたお話………これ、わたし好きなタイプのお話ですね……。ふたりの間で恋愛がはじまっていたのかどうかもわからないといったストーリーです。でも、美しかった。若いふたりの間には他者には理解できないような世界があったのだと思います。
主人公が冒頭で「恋心に似た錯覚」と言ったそれは、若さ故の、大人になってからは持ち得ない、なにか特別な感情だったのではないかと思います。主人公はふたりでみた景色の記憶や、自分の中でキラキラとした高槻との「思い出」というものに、大人になってからも恋焦がれていたのではないかと、わたしはそう解釈しました。だから、大人になって訪れた思い出の場所は少し違って見えた……大人になってからも高槻に対しては特別な感情を抱いているのは間違いないと思います、けれど、主人公はきっと終盤に海辺を歩いたとき、高槻自身というより自分は今まで「思い出」に「恋」をしていたのだということを自覚したのではないでしょうか…。わたしの解釈です。人に依ると思います。
そんな、青年たちの間に秘められた、言葉にすることはなかったきらきらしていた感情を、うつくしいと思いました。
刺青のお話………これは、キャラクターに萌えさせていただきました…トジツキさんは、萌えるか萌えないかの絶妙なラインにあるフェティシズム(私調べ)を描くのが得意でいらっしゃるんですね(笑)でも、やっぱり嫌悪感はないのです。設定はずいぶんアブノーマルなはずなのに……ね(笑)。それから、画面がキレイです。わたしが細かい書き込みのある絵柄がすきなのもあるのですが、刺青がテーマであるこの作品ではトジツキさんの絵柄のパワーが最大限に発揮できていると思います。
とりあえず、一読してみて、すっかりトジツキさんの魅力にはまってしまったみたいです。絵柄も好きだし、言葉の選択もわたしにはまっているので、これから既刊のものをどんどん読んでいきたいと思いました(^ω^)
トジツキ作品、今回もよかったー!!
ここに込められたものはその解りやすいいわゆるダイレクトな「恋愛」ではないのかもしれないが、
幾分June的なものを現代的に表現したような…印象も受け
なおかつ、文学的な秀逸な短編小説や短編映画を見せられているような、
自分の中に様々な感情を呼び起こし、彼等が自分の中で息づいているようなそんな感覚さえ呼び起こす。
まさに自分にとっての「神」作品
やりたいこともなくただ生活している居酒屋従業員の廣瀬が、そこの常連でバンドメンバーのカナさんとトイレで頻繁にあうことから彼が気になりだしていく始まり。
皆には隠すようにトイレでは吐いているらしいカナさんの姿に彼をもっと知りたいと思う。
血を吐いているのを見ても引かなくて、仕掛けられたキスも拒否しなかった彼に誘いをかけるカナさん。
カナさんが遺したモノを廣瀬は引き継いで、彼は目標を見つける。
カナさんが逝っても廣瀬も皆も決してセンチメンタルに浸ったりしない。
でも、きっと見えないところで涙をいっぱい流したのかもしれない。
廣瀬は最初の登場の頃、目が死んだ魚のように生気がなかったのだが、ギターをやり始めて相変わらずぼんやりした雰囲気はまとっているものの、目が優しくなり生きてきているように見えた。
【ワイヤー】に於いて、助っ人のキヨが参加するのだが、メンバーのユーシがちょくちょく彼をカナさんと間違える。
そこに見える密かな廣瀬の複雑な想い。キヨに向かって「似てないと思う」と言うあたり、彼なりの精一杯の主張のようにも見え、ここで廣瀬の本気が見てとれた。
【ワンマンストーリー】これはユーシを大好きな猪突猛進で一途なワンコになるキヨの姿が愛らしいのです。ちょっとリラックスタイムというところでしょうか?(鼻水たらしてるキヨがかわいいよ♪)
【嘉那さん】これはひょっとして廣瀬が本物のメンバーになる話だろうか。
テレキャスの弦がよく切れるようになり、夢でカナさんがテレキャスを返せと言ってきたという話。
ラスト、ライブハウスの壁のサインに自分の名前を書き足す。
廣瀬が、そしてキヨが・・・この一連のシーンに胸が熱くなった。
何がどうすごいのか、上手く伝えられない。
ただ、一人の男が遺したモノを通して、なおかつ男の存在はなくならない。
それがやけに格好イイのだ。
テレキャスからカナさんの音楽と音とひととなりが想像できる。
また廣瀬が選んだデュッセンバーグも堅実な彼の人柄があらわれているようだ。
彼等がどんな音楽を奏でるのか、聞いてみたい気がする。
【たべものではありません】
デスマッチをするレスラーと彼の給食係(?)の話。
まるで、レスラーを食べる為に彼の体を自分のつくる食べ物で自分の好みに変えているという、実にディープで奥深い偏執的愛情がゾクっとさせる。
まるでタコ坊主のような(爆)坊主頭マッチョというのが、日頃B系男子で登場する男子の延長線上のようで、違和感がないのですw
【月翳】
これは11年に出た「蝶尾」のようなJune的世界観のある作品ではと思われる。
体が弱く兵隊に行けなかった男と、生きて帰ってきた事が恥ずかしく彼に再会するのをためらっていた男の物語。
時の流れと時代が違えてしまった二人の接点は、青春のあの海辺の1ページで終わってしまったというのだろうか。
やりきれなさと後悔が残る思いが実に切ない。
【外道】
ドジツキさんの描く男の肉感的裸体が惜しげもなく前面に出た作品。
まるでゲイビを見ているようです♪
刺青が好きで本当は自分に彫りたかったのに出来なかったために彫り師になった男の執着する相手。
坊主頭に龍の刺青しかもツンデレでカタギ・・・トキメク!!萌える!!
これがまた色気がムンムン(違う意味で)
表題で人の死を介した話しであるにも関わらず、決して重苦しくはない。
しかし同時掲載がとてもユニークでバラエティに富んだラインナップ構成になっていることで、この本の魅力が倍増しするのです。
以前も「物語は死で終わらない」という話がありましたが、この作者さんの描く死はとてもポジティブなものがあってよいのです。