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表題作太陽をなくした街

吾妻光一
ドヤ街で働く元自衛官で射撃の名手
皆川七生
犯罪心理学を学ぶ大学院生,24歳

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

両親の死の真相を知った時から七生の復讐計画は始まった。計画に必要なのは元自衛官で射撃の名手・吾妻。黒幕の射殺を依頼するが…。

作品情報

作品名
太陽をなくした街
著者
水原とほる 
イラスト
奈良千春 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
幻冬舎ルチル文庫
発売日
ISBN
9784344828834
3.5

(17)

(3)

萌々

(6)

(6)

中立

(1)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
3
得点
58
評価数
17
平均
3.5 / 5
神率
17.6%

レビュー投稿数3

闇への扉が救いの道へ繋がる

奈良さんのイラストが作品の味を後押ししているようで、作品に登場するキャラと
ぴったりした雰囲気でとっても素敵です。

内容は復讐ものでシリアスなのですが、ドヤ街での出会いが初対面なので、
関西弁が飛び交う中での流れが妙にシリアスさを緩和してくれる気がします。
それに攻めキャラの吾妻が一見ガサツに見えながらも頼もしさが感じられるし、
受けキャラの七生は復讐を成し遂げる為に必死で完全な闇に捕らわれていないから
まだ生きている輝きみたいなものが感じられるからなのか暗くなり過ぎていない。

内容的には罠に嵌められ居場所を奪われた元自衛官でドヤ街で日雇い生活をしていた
吾妻の射撃の腕を求めて両親の恨みを晴らす為に殺人の依頼を七生がすると言うもの。
吾妻に請け負う代わりに金以外で七生の身体も要求され抱かれることになる。
そんな風に二人の奇妙な関係が始まる。

闇に落とされながらも闇に染まらなかった吾妻、両親の理不尽な死後に闇に憑りつかれ
自らその闇の中に溶け込もうとする七生。
二度と日の昇らない場所へ行こうとする七生を引き留めることになる吾妻。
吾妻とのかかわりで七生の中で何かが確実に変わっていく様子も興味深い。
それに完全にドヤ街で日陰の人間になっていた吾妻もこの出会いで日の当たる場所へ
意図せず戻って来ていた事も必然の出会いのような気がしました。
愛する者が出来たものの強さと優しさを感じさせるような内容で
シリアスだけど暗さの残らない引きずらない希望と愛を感じる作品でした。

6

復讐を諦めさせた人

電子版は挿絵無し。表紙のみ。

太陽をなくした街とは、あいりん地区のこと

冤罪を着せられた狙撃の名選手、吾妻を探す七生
七生は、粛正された父親の復讐を果たしたい。
吾妻は、あいりん地区のまとめ役的な存在になっていた。
日雇いで暮らす人達は、色々な過去と事情を持っている。

計画実行の土壇場で、七生の依頼を反故する吾妻。
吾妻の愛で、心に太陽を取り戻す七生

水原先生の作品は、痛い系じゃなくて、純愛路線 
というよりヒューマンドラマに傾向が変わっている。

0

太陽のあたる場所

水原さんの初ルチル?そして奈良千春さんとのコンビはピアスノベルズの『窓』以来ですよね?
今回また新しい水原作品の顔を見せてもらった様な気がします。
今回は、無実の罪を着せられた父親を亡くし母親を亡くしたその息子が、両親は殺されたのだと言う確証を得、長年に渡りその復讐の相手を探し出し、
目的を遂げるためにオリンピック選手候補になったほどの射撃の腕前を持つ冤罪で自衛官を辞めた男を探し出し、、、という話。
一体この復讐は成し遂げられるのか・・・?
ハラハラしながら進む話に、予備知識一切なしで読み始めた自分は夢中になりました。

主人公の七生が探し出した男、吾妻がまた今までの水原作品に登場する攻めとはちょっと違う雰囲気です。
最初ドヤ街で日雇いする姿で登場するのですが、その外見や雰囲気、話し方はじめ七生からの申し出に「おまえ、ちょっと一発やらせろよ」そして下卑た口調で七生を煽るのです。
最初のエッチは木賃宿の3畳くらいの壁が薄く穴のあいたうなぎの寝床の様な部屋で、隣の部屋の奴らに見せつけるようなエッチでしたし!!
エロおやじな発言ともとれる言葉で思わずこの話は中原作品か!?と思わず表紙を見直しました(笑)
しかもひょうひょうとして、男臭さが匂うような、好みのタイプの攻めだったりするのです♪
七生のキャラクターも決して初心くはありません。
復讐という目的があり、とてもしっかりしていますし、よく話します。
エッチの時も素直になります。
特殊な事情があるだけに、そうなのかもしれないですね。

肝心の事はネタバレなしでいきましょう。

吾妻の語るドヤ街がとても印象的でした。
ドヤには太陽なんかない。太陽が出る前に車に詰め込まれ日が暮れてから戻ってきて、あの街から出ない限り一生太陽を見ないまま死んでいく~ような事を言っていました。
ラストで吾妻が彼の心情を七生に言います。
10年もあの街に潜んでいて、お前が太陽の下に出してくれた。
彼も過去をひきずりながら陽の下に出たいと願っていたのでしょうね。
七生の目的を遂げる為の必死さが吾妻の心を動かし変え、そして七生も生かしたいと思った。
七生も吾妻と一緒にいることで、少なからず心の支えになっていたようですし、覚悟があったことで彼を受け入れていたのだと思います。

とてもポジティブなENDだったと思います。
やりきれなさや心残りはあるけれど、復讐なんてバガらしいというより、それを遂げることによって自分も相手と同じ闇にオトされることはないんだと!
吾妻も格好よかったが、七生もすがすがしい潔い青年でした。
お話は一見ダークな要素を含んでいるのに、何故かさわやかでした。
うん、こういう終わりも悪くないですv

10

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